一日一斎物語 (ストーリーで味わう『言志四録』)

毎日一信 佐藤一斎先生の『言志四録』を一章ずつ取り上げて、一話完結の物語に仕立てています(第1066日目より)。 物語をお読みいただき、少しだけ立ち止まって考える時間をもっていただけたなら、それに勝る喜びはありません。

江戸末期、維新を成し遂げた志士たちの心の支えとなったのが佐藤一斎先生の教えであったことは国史における厳然たる事実です。
なかでも代表作の『言志四録』は、西郷隆盛翁らに多大な影響を与えた箴言集です。

勿論現代の私たちが読んでも全く色褪せることなく、心に響いてきます。

このブログは、『言志四録』こそ日本人必読の書と信じる小生が、素人の手習いとして全1133章を一日一章ずつ拙い所感と共に掲載するというブログです。

現代の若い人たちの中にも立派な人はたくさんいます。
正にこれから日本を背負って立つ若い人たちが、これらの言葉に触れ、高い志を抱いて日々を過ごしていくならば、きっと未来の日本も明るいでしょう。

限られた範囲内でも良い。
そうした若者にこのブログを読んでもらえたら。

そんな思いで日々徒然に書き込んでいきます。

第2056日 「足るを知る」 と 「恥るべきを恥ず」 についての一考察

今日のことば

【原文】
足るを知るを知って之れ足れば常に足る。仁に庶(ちか)し。恥無きを之れ恥ずれば恥無し。義に庶し。〔『言志耋録』第130条〕

【意訳】
『老子』第四十六章には「足るを知るの足るは、常に足る足ることを知って満足するならば、いつも不足や不満を感ずることは無い)」とあるが、これは仁に近いといえる。また『孟子』尽心章句上に「恥づること無きを之れ恥づれば、恥無し自分の恥とすべきことを恥じずにいることを、恥としてにくむのであるならば、恥は無くなる)」とあるが、これは義に近いといえよう。

【一日一斎物語的解釈】
今あるものに満足することは、仁の考え方に近い。また、恥ずべきことを恥ずかしく思うことは、義の考え方に近い。


今日のストーリー

神坂課長がネットニュースを見ているようです。

「おいおい、今度は竹村由子が自殺かよ? どうなっているんだ、芸能界は?」

「芸能界だけじゃないのかも知れませんよ」

「本田君、どういうこと?」

「いわゆるコロナ鬱ってやつは、今、日本中にはびこっているのかも知れません」

「あー、そういうことか。たしかに、そうかもな」

「それにしても、あれだけの美貌があって、人気・実力を兼ね備えた人に、いったいどんな不満や不安があったのかな?」

「トップにいる人には、トップにいる人にしかわからない悩みがあるんでしょうか?」

「そうなんだろうけどね。なんていうのかなぁ。今、手に入れているものを冷静に見つめ直して欲しいな。誰もが憧れるようなものをいくつも手にしているはずなんだよ。足るを知ることが、仁者への近道だと一斎先生も言っているんだ」

「そういうことが冷静に考えられないのが鬱という病気なんですよ」

「まあ、そうだねぇ」

「残された旦那さんやお子さんのことを思うといたたまれないですね」

「そこなんだよな。そういうことも考えられないほど、発作的に行動してしまうんだね。鬱は怖いなぁ」

「最近、立て続けに自殺のニュースが飛び込んでくるので、ちょっと麻痺していますけど、大女優さんですから、やっぱり衝撃は大きいですね」

「一般人が後追いするようなことにならないように、報道する側もしっかり考えて欲しいね」

「まったくです。面白おかしく報道するのは避けて欲しいです。自分の良心に問いかけて、恥ずかしくない報道をお願いしたいです」

「うん、それが義だよ。報道としての正しい道だよね。我々も仕事に自負をもって、正しい道を進まなければいけないね」

「なんか、気持ちが重くなりますね」

「とにかくご冥福をお祈りしよう。そして、俺たちは俺たちなりに、手にしているものに感謝し、満足して、自分の良心に恥じない行動を心がけよう!」

「はい。では、気を取り直して行ってきます!!」


ひとりごと

手にしていないものを欲しがるよりも、今手にしているものに満足する生き方が仁の道に通じるのだ、と一斎先生は言います。

100%満足できる人生なんてありません。

家康公のように、不自由を常と思うか、もしくは足るを知るか、いずれにしても現状を肯定的にとらえて生きて欲しいものです。


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第2055日 「準備」 と 「謙虚」 についての一考察

今日のことば

【原文】
(よ)は是れ終を始に要(もと)め、謙は是れ始を終に全うす。世を渉るの道、謙と豫とに若(し)くは無し。〔『言志耋録』第129条〕

【意訳】
前もって準備するとは、始めの段階で終わりをしっかりと予測することであり、謙虚さを忘れなければ、予測したとおりに有終の美を飾ることができる。世を渡る道とは結局、この謙と予の二つにまさるものはないのだ。

【一日一斎物語的解釈】
準備と謙虚さ、この2つこそが人生を渡る大切な切符となる。

今日のストーリー

今日の神坂課長は、勉強会で知り合った元経営者の松本さんと食事をしているようです。

「フミさんは、リーマンショックを乗り越えて会社を立て直したんですよね?」

「もう、ロング・タイム・アゴーだけどね」

「会社を経営する上で、フミさんが大切にしてきたことって何ですか?」

「僕はそんなことを偉そうに話せるような人間じゃないよ」

「でも実際に会社を立て直して大きくしたんですよね。私は経営者ではないですけど、成功した人の話を聴いて、少しでも参考にできたら嬉しいんですけど」

「成功者だなんて、とんでもない! ただ目の前の事に一所懸命に取り組んできただけだよ」

「フミさんが大切にしてきたことを是非教えてください!」

「参ったなぁ。ゴッドが期待しているようなことは何も話せないよ」

「いえ、フミさんは凄い人です」

「あえて言うならば、準備を怠らないことと謙虚さを忘れないことかなぁ」

「準備と謙虚さですか?」

「うん。何事も準備は必要だよね。特に会社の経営というのは、何が起こるかわからない。今回のコロナのことだって、今年の初めにそれを予想したアナリストなんて一人もいなかったんじゃないかな?」

「それはそうでしょうね」

「だからこそ、準備が必要だと思うんだ。特にワースト・シナリオを準備しておくことはベリー・インポータントだよ」

「最悪の事態を予測しておくんですか?」

「イエス。出来る限りね。そのうえで、その危機をどう切り抜けていくかをある程度想定しておく必要があると思う」

「なるほど。私はベスト・シナリオしか描いていないかも?」

「ゴッドらしいけど、それじゃ最悪の事態になったときに慌ててしまうでしょ?」

「はい。そうですね」

「あとは、すべての関係者に感謝をすることかな。お客様は当然として、パーツ製造の下請けさんや、販売店の営業マン、それに忘れてはいけないのが、自分の会社の社員さんだよね」

「感謝の気持ちがあるから、謙虚になれるのですね?」
「そのとおり!」

「たしかにフミさんは、すごく謙虚ですもんね」

「昔は違ったんだよ。ゴッド以上に部下を怒鳴り散らすようなパワハラ上司だった」

「リーマンショックを機に変わったんですよね?」

「オー・イエス! 今となっては、有難い経験だったと思えるよ

「いろいろな経験をされて、謙虚さが完全に身についたんですね。背中を追いかけます!」

「大丈夫! ゴッドなら、きっと僕をはるか後方に抜き去っていくよ」

「いや、そこは謙虚さと敬老の気持ちをもって、抜かずに少し後ろを追いかけますよ。(笑)」


ひとりごと

準備をして計画どおりに謙虚さをもって実行する。

これが仕事を成功させる秘訣だと、一斎先生は言います。

考え得る限りの展開を想像し、それに対処する方法をあらかじめ決めておけば、最悪の事態は免れるはずです。

そして、仕事が軌道に乗った後も謙虚さを忘れないことです。

調子に乗って傲れば、人の心が離れ、結果も芳しいものにはならないでしょう。

準備と謙虚さを大切に日々を過ごしていきましょう!


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第2054日 「行動の結果」 と 「自然の摂理」 についての一考察

今日のことば

【原文】
「薪を積むこと一の若くなるも、火は則ち其の燥に就く。地を平らかにすること一の若くなるも、水は則ち其の湿に就く」。栄辱の至るは理勢の自然なり。故に君子は其の招く所を慎む。〔『言志耋録』第128条〕

【意訳】
『荀子』勧学篇に「薪を施(し)くこと一の若くなるも、火は燥に就き、地を平らかにすること一の若くなるも、水は湿に就く。(薪を一様に積んで火をつけると、火は乾燥している方に燃え移って行き、地面を平らかに均して水を注ぐと、水は湿った方に流れて行く)」とある。栄誉と恥辱は自らの行ないによって自然に招くものである。だからこそ君子はその行動を慎むのだ

【一日一斎物語的解釈】
自分の行動が招く結果は、すべて自然の摂理に適ったものとなる。だからこそ、自らの行動を慎まねばならないのだ。

今日のストーリー

神坂課長が営業2課の売上進捗会議を開催しているようです。

「残念ながら、上期は売上計画、粗利計画共に未達成の見込みとなってしまった。まだ、一週間あるので、少しでも売り増しをお願いしたいが、必要以上に値引きをするようなことはしないでくれな」

本田「悔しいですね。まだまだ力が足りない証拠です。もっと精進しないといけませんね」

「そうだね。こういう結果が出るということは、我々に何か足りない点があったということだ」

石崎「でも、今年はコロナが出たので、仕方ないんじゃないですか?」

「もちろんCOVID19の影響は大きいよ。それでも、そういう状況下でも売り上げを落としていない企業もある。やはり、矢印は常に自分に向けるべきなんだよ」

「こんな特殊なケースが発生してもですか?」

「そうだ。我々の身の回りで発生する出来事というのは、結果だ。そして、その結果が生じるには、かならず原因がある。正しい行動をすれば、良い結果を得られるのが大自然の摂理なんだよ」

「そういうものなのですかね?」

「実際にはどうだかわからない」

「え?」

「でもな。俺はそう信じて自分の行動を改善する道を選びたい。COVID19のせいにしたところで、何も新しい行動は生まれないからな」

「なるほど」

山田「課長の言うとおりですよ。私たちの行動や考え方にまったく問題がなかったはずはないです。それなら、その問題点を見つけ出して、改善しましょう!」

「人生すべてが思い通りになるはずはない。だからこそ、どんな結果が出ようとも納得がいくように全力を尽くしたいじゃないか!」

「わかりました! 下期で一気に挽回して、年間計画をクリアしましょうよ。ゼンちゃん、梅ちゃん、俺たち若手トリオも、来期はしっかり結果を出そうぜ!」

善久「そうだね、ザキ。会社に貢献できるよう精進します!」

梅田「私も全力を尽くすことだけは忘れないようにします!」

「いいねぇ。来期が楽しみになってきたな。あ、でも、まだ今期も終わってないからね。(笑)」


ひとりごと

自分の行動の結果がいつも期待どおりになるとは限りません。

しかし、正しい考え方に基づいて行動すれば、大きく道を外れることはないでしょう。

結果に対して、常に責任を持つ覚悟で仕事をしましょう!!


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第2053日 「謙譲」 と 「驕争」 についての一考察

今日のことば

【原文】
利を人に譲り、害を己に受くる者は、是れ譲なり。美を人に推し、醜を己に取るは、是れ謙なり。謙の反を驕と為し、譲の反を争と為す。驕・争は是れ身を亡ぼすの始めなり。戒めざる可けんや。〔『言志耋録』第127条〕

【意訳】
利益を他人に譲り、自分は損失を引き受けるというのが「譲」である。良いことはまず他人を推薦し、悪いことは自分が真っ先に対応するというのは「謙」である。「謙」の反対が「驕」であり、「譲」の反対が「争」である。この驕と争は自分の身を亡ぼす始めである。十分に戒めるべきである

【所感】
謙譲は身を保つ最大の術であり、驕争は身を滅ぼす最悪の術である

今日のストーリー

神坂課長の妻の菜穂さんが、かなり落ち込んだ表情で帰宅しました。

「どうしたの? えらくがっかりしてない?」

「だって、楽しみにしていた限定販売のケーキがあたしの目の前で売り切れたのよ! あと1分早く着いていたらゲットできたのに!!」

「なんだ、そんなことか」

「なに言ってるの、重大なことよ。ずっと楽しみにしていたのに!!」

「だったら、もっと早く家を出ればよかったじゃないか」

「あんたらの朝ごはんを作ってから、お化粧をして出掛けるとなると、あのくらいの時間になるでしょ!!」

「おいおい、俺にキレるのはやめてくれない」

「あー、今日から何を楽しみに生きていこう」

「大袈裟だなぁ。でも、お前が譲ったことで、そのケーキを手に入れて幸せを味わっている人がいる。善いことをしたと思えばいいさ」

「なにを仙人みたいなこと言ってるのよ。奪い合ってでもゲットしたかったのに!」

「奪い合いや人に驕る行為は、人間破滅の第一歩だと佐藤一斎先生も言っているぞ。人に譲り、嫌なことを自分が進んで引き受ける人生こそが素晴らしいんだよ」

「勇にそんなこと言われるとはね!」

「俺も少しは変わってきたかもよ。この前も、何台もの車に先を譲ったからな」

「うそでしょ? 意地でも自分の前には車を入れなかった人が?」

「そう。意地悪をして道を譲らずに自分が前に出たからって、大して得することもない。逆に前を譲るとすごく気持ちがいいことに気づいた」

「へぇー」

「やっぱり争い合って生きるより、譲り合う方がお互いに幸せだよな」

「なんか、そんなこと言われたら出掛けにくくなったな」

「なんで?」

「明日もデパートのバーゲンに行くつもりだったの。勇が言う醜い奪い合いのステージにね!」

「あー、おばちゃん同士が、まるでウンコにたかる蠅のように、ワゴンに群がるシーンは、この世で最も醜い争いの場だな」

「汚い喩えねぇ。それに悪かったわね、おばちゃんで! そんなこと言われたら行きにくくなるじゃない!」

「でも、行くんだろ?」

「当然です!!」

「明日は醜い争いに勝利して、最高の笑顔で帰ってくることを祈ってるよ!」


ひとりごと

謙譲の心というのは、人間生活の潤滑剤のようなものです。

逆に人に驕ることや、人と奪い合う心というのは、人間生活を不毛なものにする軋轢となります。

謙譲を実行する際の最大のポイントは、見返りを求めないことです。

譲り、謙ることで自分が幸福感を味わえたならそれで良しとする。

ここがポイントでしょう!


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第2052日 「人生」 と 「適温」 についての一考察

今日のことば

【原文】
世に処する法は、宜しく体に可なる温湯の如く然るべし。濁水・熱湯は不可なり。過清・冷水も亦不可なり。〔『言志耋録』第126条〕

【意訳】
世の中を渡るのに最適な生き方は、身体に適温の湯のようであるべきだ。濁った水や熱湯は宜しくないし、きれい過ぎる水や冷水のようでも良くない

【一日一斎物語的解釈】
なにごとも行き過ぎは宜しくない。過ぎたるは猶ほ及ばざるが如しである。


今日のストーリー

今日の神坂課長は、総務課の大竹課長と夕食を共にしているようです。

「神坂君とこうして飲むのも久しぶりだねぇ」

「まだ、COVID19が過ぎ去った訳ではないですが、そろそろ我慢の限界ってやつですかね?」

「この4連休も、上高地なんかは凄い人だったらしいね」

「ニュースで見ました。これはダメだろう、っていうくらい密でしたね。(笑)」

「やっぱり、人間は適度に外にでて日光を浴びないとダメなんだろうな。それと外で飲む酒もまた大事なわけさ!」

「本当はバカ騒ぎしたいですけど、それはちょっと控えつつも、やっぱりくだらない話を肴に酒を飲むのが最高のストレス発散ですよね?」

「100%同意だな!」

「とはいえ、飲み過ぎには注意です!」

「そう、何事も適度が一番。外出も適度に、酒の量も適量に」

「結局、適度を弁えて生きるのが、一番楽な生き方なのかも知れませんねぇ」

「そうだよ。最近は君も『論語』だとか難しい本を読んでいるようだけど、無理はダメだよ。所詮、大した頭があるわけじゃないんだから」

「失礼なジジイだな。後輩がせっかく変わろうとしているのに応援するどころか、否定するとは?」

「否定はしていないけどさ。ストイックに行き過ぎると反動がでるよ」

「水泳のS選手みたいに?」

「あー、また出たね。最近、不倫の報道が多いね。これも皆、無理したことの反動なのかな?」

「有名人はそういうことをすると目立ちますからね。これもまた目立たない程度に適度にやるのが一番なんですよ」

「あれ? 神坂君ももしかして・・・」

「まさか! 例えばの話ですよ!!」

「ちさとママとか?」

「あー、相手がちさとママなら喜んで!」

「こらっ!!」


ひとりごと

人生を渡るにはぬるま湯のように適温が一番だと一斎先生は言います。

しかし、行ているとついつい背伸びをしたり、無理にあがいたりしてしまいがちです。

自分の分を弁え、適温で生きる生き方を意識しましょう!


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プロフィール

れみれみ