一日一斎物語 (ストーリーで味わう『言志四録』)

毎日一信 佐藤一斎先生の『言志四録』を一章ずつ取り上げて、一話完結の物語に仕立てています(第1066日目より)。 物語をお読みいただき、少しだけ立ち止まって考える時間をもっていただけたなら、それに勝る喜びはありません。

江戸末期、維新を成し遂げた志士たちの心の支えとなったのが佐藤一斎先生の教えであったことは国史における厳然たる事実です。
なかでも代表作の『言志四録』は、西郷隆盛翁らに多大な影響を与えた箴言集です。

勿論現代の私たちが読んでも全く色褪せることなく、心に響いてきます。

このブログは、『言志四録』こそ日本人必読の書と信じる小生が、素人の手習いとして全1133章を一日一章ずつ拙い所感と共に掲載するというブログです。

現代の若い人たちの中にも立派な人はたくさんいます。
正にこれから日本を背負って立つ若い人たちが、これらの言葉に触れ、高い志を抱いて日々を過ごしていくならば、きっと未来の日本も明るいでしょう。

限られた範囲内でも良い。
そうした若者にこのブログを読んでもらえたら。

そんな思いで日々徒然に書き込んでいきます。

第2258日 「年齢」 と 「現状」 についての一考察

今日のことば

【原文】
少者は少に狃(な)るる勿れ。壮者は壮に任ずる勿れ。老者は老に頼む勿れ。〔『言志耋録』第332条〕

【意訳】
若い人は、若さをいいことにして図に乗ってはいけない。働き盛りの壮年の人は、みなぎる力を自負して思いのままに任せてはいけない。そして老人は、年の功を誇るような態度をとってはいけない

一日一斎物語的解釈
若い人は若さを、壮年の人は活力を、老年の人は老いを言い訳にしてはいけない。


今日のストーリー

今日の神坂課長は、営業2課の梅田君と同行中のようです。

「課長、すみません。私の対応のまずさでクレームになってしまって・・・」

「気にするな。誰もが通る道だ」

「若いというだけで、知識がないと決めつけられたのが悔しくて、つい言い返してしまいました」

「ははは。お前らしくて良いさ。俺の若い頃もそうだった」

「課長もですか?」

「『若造のくせに』みたいな言われ方や態度をされるとムカついたもんだよ。たしか、お前と同じようにドクターに文句を言ってクレームになったこともあった気がする」

「そのときは佐藤部長に同行してもらったのですか?」

「うん、たぶんな。覚えてないけど。(笑)」

「嬉しいです」

「バカたれ、そこで喜ぶな!」

「あ、すみません」

「しかし、若さを言い訳にする奴よりはよっぽど見込みがあるよ」

「どういうことですか?」

「『新人なので、わからないです』みたいなことを言う奴もいるからな。若さを言い訳にしていたら、何も成長できないよ」

「あー、そういうことは口が裂けても言いたくないです!」

「いいね! 若者は若さを、俺たち世代は活力があることを、そしてベテランを老いを言い訳にしてはいけないな

「はい!」

「さて、到着したな」

「はい。なんとかこのまま担当させてもらいたいので、ご支援をよろしくお願いします」

「そこは任せておけ!!」


ひとりごと

地味な言葉ですが、小生はこの章句が好きです。

意外と年齢を言い訳にしてしまいがちです。

しかし、それは自分側の問題であって、相手には関係のないことです。

常に、今できるベストを尽くせば、年齢は関係ありませんね!


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第2257日 「天寿」 と 「老化」 についての一考察

今日のことば

【原文】
老人の天数を終うる者は漸を以て移る。老いて漸く善く忘る。忘ること甚しければ則ち耄(ぼう)す。耄の極は乃ち亡ず。亡ずれば即ち漸(し)して原数に帰す。〔『言志耋録』第331条〕

意訳
人が天寿を終えるときには次第に終わりへと近づくものだ。年を取ると次第に忘れ易くなる。忘れることが甚だしいと耄碌(もうろく)する。耄碌の果ては死ぬことである。人間は死ぬと肉体を失って運命の原点に戻っていくのだ

一日一斎物語的解釈
人は徐々に老いていく。老いて、物忘れがひどくなり、やがては死を迎える。死ねば土へと帰っていく。


今日のストーリー

営業2課の本田さんが喫茶コーナーでため息をつきながらコーヒーを飲んでいます。

「本田君、どうした? 元気がないな」

「あ、神坂課長。実は、私の祖父の痴呆が一気に進んでしまいまして・・・」

「あー、そうなの。お爺ちゃんはおいくつ?」

「78歳になったばかりです」

「今までは元気だったの?」

「はい。めちゃくちゃ元気でした。腕相撲をしても、私が負けるくらいでしたから」

「それはすごいね!」

「それが先日、自転車に乗っていてコケて、足の骨を折ってしまったんです」

「それは大けがだね」

「はい。それで、しばらく寝たきりになったんですけど、その間に一気に痴呆が進んだらしいんです」

「また、動くようになったら徐々に回復するんじゃない?」

「私もそう期待していたんですけど、身体が治ってから3ヶ月経っても痴呆は進む一方だそうです」

「そうか」

「仕方ないことですけどね。年をとればいつかはボケてしまうこともあるでしょうし、自分でもよく『あと何年生きられるか』なんて言ってましたから」

「それはそうだけど、やっぱり辛いことだと思うよ」

「本当に元気だっただけに、そのギャップがショックで、祖父のことを考えるとどうしても悲しくなってしまって・・・」

「少しでも長生きして欲しいと思うのは、子供や孫なら当然の気持ちさ」

「あんまり祖父のところにも帰れていなかったのも、心残りで・・・」

「本田君、いまはこういう時期だ。少し休みを取ってお爺ちゃんのところへ行って来いよ」

「え?」

「もしかしたら、本田君の顔を見たら、少し良くなるかも知れないよ。もし、本田君のことすらわからなくなってしまったとしても、まだ元気なんだから、お爺ちゃん孝行できることはあるはずだよ」

「はい。GWもコロナがあるから控えておこうかと思ったんですけど、帰省してみます」

「うん、30日は年休を取って、少し長めにお爺ちゃんとの思い出作りをしてきなよ」

「神坂課長、ありがとうございます!!」


ひとりごと

小生の父方の祖母は、80歳を超えても非常に元気でしたが、梯子から落ちて足を骨折した際に一気に痴呆が進んでしまいました。

最後は、父にも「お宅は誰かね?」と聞くくらいだったそうです。

人はいつかは老いて、物忘れがひどくなり、そして死んでいきます。

両親や祖父母には、生きている間にできるだけのことをしてあげたいですね。


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第2256日 「決断力」 と 「日々の鍛錬」 についての一考察

今日のことば

【原文】
老人の決を少(か)くは神気乏しきを以てなり。唯だ事理精明なれば、則ち理以て気を率い、此の弊無きのみ。〔『言志耋録』第330条〕

【意訳】
老人が決断力に欠けるのは、精神の活力が乏しくなってくるからである。ただ、物事のあるべき道理に明るく詳しければ、理を活かして精神を率いるので、そうした弊害はないものだ。

一日一斎物語的解釈
活力が衰えると決断力が鈍るものである。しかし、その道の専門的な知識を有していれば、最適な決断をすることは常に可能なはずである。


今日のストーリー

今日の神坂課長は、大累課長の相談を受けているようです。

「これは雑賀が取ってきた案件なのですが、メーカーさんと病院のこれまでの関係もあり、薄利での商売になります。私としても乗るべきか降りるべきか判断に迷っています」

「外来患者案内システムって医療機器じゃないもんな。これをやる意味はどこにあるんだ?」

「雑賀が言うには、各科に顔を出すことが可能になるらしいです」

「なるほど、それは面白いな」

「雑賀は、A医科大学のIT推進課の森崎さんとかなり仲が良いみたいで、医療機器ではないIT案件をいくつか紹介してもらっているんですよ」

「あいつ、なかなかやるじゃないか!」

「私はIT関係の知識に乏しいので、判断しかねるんですよね」

「それは俺も同じだよ。やっぱり、その道に精しくないと、よい判断はできないよな」

「雑賀はここでこの商談に噛んでおくと、後の放射線治療器の商談にも関われる可能性があると言うんです」

「放射線治療器って何億もする器械だろ。それはY社の専売特許で、ウチはほとんど噛めていないよな?」

「はい。今度、雑賀と一緒に放射線部の技師長さんにお会いしてくる予定です」

「そこまで話が進んでいるなら、この商談に乗っかるしかないだろう」

「やっぱりそうですよね。神坂さんにそう言って欲しかったんですよ」

「とはいえ、佐藤部長には相談してから進めろよ」

「もちろんです。神坂さんと相談したことはお伝えして良いですよね?」

「もちろんだよ。そんなことでへそを曲げる部長じゃないからな。しかし、これはやり方次第では、新しい柱になるかも知れないぞ」

「我々もちゃんとしたジャッジができるように、ITを勉強しないといけませんね」

「そこは任せた! お前は特販課の課長だからな」

「神坂さん、逃げないでくださいよ!!」


ひとりごと

人間の判断力は、その時の体調によっても大きく影響を受けるものです。

しかし、豊富な専門知識や経験があれば、それを補ってくれるでしょう。

努力は裏切らない、と云います。

日々の鍛錬を怠らないようにしましょう!


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第2255日 「利己の養生」 と 「利他の養生」 についての一考察

今日のことば

【原文】
養生の一念、孝敬より出ずるは、固より天に事うるの道たり。常人の養生は或いは是れ自私なり。宜しく択ぶ所を知るべきのみ。〔『言志耋録』第329条〕

【意訳】
養生への思いが、親への孝行や尊敬の気持ちから出たものであるなら、それは天道にかなったものである。ふつうの人の養生は、利己的な思いから生じていることが多い。どんな理由で養生をするのかをはっきりしておくべきであろう

一日一斎物語的解釈
自分の損得勘定からだけで養生をすることは、宇宙の摂理に反している。


今日のストーリー

「あれ、お前昼ごはんは?」

営業部特販課の大累課長が雑賀さんに声を掛けたようです。

「昼は抜いてます。ダイエット中ですから」

「お前、以前にダイエットで無理し過ぎて倒れたじゃないか。また、倒れるなよ!」

「前回はほぼ絶食でしたからね。今回は昼抜き、夜の炭水化物抜きのダイエットなので、大丈夫です」

「目的は、例の彼女か?」

「いえ、別の人です」

「前の女の子にはフラれたのか?」

「・・・」

「そうか、『デブは嫌い』って言われて頑張ってダイエットしたけど、結局倒れて、たいして痩せられなかったもんな。(笑)」

「人の不幸を笑うなんて、上司として最低ですね!」

「部下として最低のお前に言われたくないわ! しかし、いい年こいて、女にモテたくてダイエットするってのもどうかと思うぞ」

「プライベートのことにまで、口を出されたくないですね」

「そうだろうけどさ。むしろ、お前のことを誰よりも心配しているお母さんのために、もう少し痩せて長生きしなきゃいけないんじゃないの?」

「もちろん、母の為でもありますよ。彼女ができて、結婚して、孫ができたら喜ぶじゃないですか」

「たしかにな。いずれにしても自分の損得勘定だけで痩せるんじゃなくて、周囲の家族のため、あるいはお客様のためにダイエットするという意識が大事だな

「課長も少しダイエットした方がよくないですか?」

「そうなんだよな。最近、食えば食うだけ太るんだよ」

「ダイエットはしないんですか?」

「今、お前に偉そうにダイエットの話をしながら、自分を責めていたところだ。(笑)」

「課長には、奥さんもお子さんもいるんですから、元気で長生きしないとダメですよ!」

「ま、まあ、そうだな。って、なんで俺がお前に説教されなきゃいけないんだ!!」


ひとりごと

利己的な養生はよろしくない、と一斎先生は言います。

自分の身体は自分だけのものではないと認識し、養生すれば、宇宙の摂理に適うのだそうです。

この年齢になると、漠然とした死への恐怖は薄れていきます。

だからこそ、利己的でない養生を心がけねばならないのでしょう。


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第2254日 「学び」 と 「人生」 についての一考察

今日のことば

【原文】
人生は二十より三十に至る、方(まさ)に出ずるの日の如し。四十より六十に至る、日中の日の如く、盛徳大業此の時候に在り。七十八十は則ち衰頽蹉跎(すいたいさだ)して、将に落ちんとする日の如く能く為す無きのみ。少壮者は宜しく時に及んで勉強し以て大業を成すべし。遅暮(ちぼ)の嘆(たん)或ること罔(な)くば可なり。〔『言志耋録』第328条〕

意訳
人生においては、二十歳から三十歳までは、日の昇るような勢いのある時期である。四十歳から六十歳までは、日中の太陽のように日々徳も盛んとなり、大きな仕事ができるときである。七十歳、八十歳となると、衰えて思うように仕事がはかどらなくなり、まるで落日のようで何もできなくなる。青年期、壮年期にある人は、しっかりと学問に取り組み、大きな仕事を成し遂げて欲しい。晩年になって嘆くことがなければ、それに超した事はない。

【一日一斎物語的解釈】
二十代・三十代のうちに、学びと実践をトライアンドエラーで繰り返し、大仕事ができる四十代以降に備える必要がある。納得できる仕事ができないままに六十代を迎えれば、後悔の念に堪えられないであろう。


今日のストーリー

今日の神坂課長は、大累課長、新美課長と雑談中のようです。

「つくづく思うんだけどな。働き方改革って良い面ばかりではないよな」

「そうですね。もし、私たちが若い頃に『残業するな、早く帰れ』なんて言われていたら、ロクなことをしてなかったでしょうからね」

「間違いないよな。飲み歩いて、店で暴れて、出禁の店が日増しに増えただろうな。(笑)」

「あの~、私をお二人と一緒にしないで頂きたいんですけど・・・」

「細かいことを言うな。大きな括りでみれば、新美も俺たちとは同じ穴の狢だよ」

「承服できん!!」

「大河ドラマの渋沢栄一か!」

「今の若い奴らはどうなんでしょうかね? 早く帰って、仕事の準備とか読書とかをしているのでしょうか?」

「ウチに来るような連中は、所詮は勉強嫌いな奴らばかりだからな。それは期待できないだろうな」

「願海君くらいですかね?」

「たしかに、あいつは本も読むし、人の気持ちも読めるし、将来の幹部候補だな」

「結果的に、私たちは夜遅くまで仕事をさせられて良かったんでしょうね。こうやって課長になって、人の上に立たせてもらえているんですから」

「本当だよな。俺はともかく、大累とか新美が課長になるとはなぁ〜」

「よく言いますよ。先輩方が一番驚いていたのは、神坂さんが課長になったときですよ!」

「地球が滅亡するのではないかと心配する人も居ましたね」

「嘘つけ! そこまで大袈裟な奴がいるわけないだろう?」

「いや、大竹課長がそう言ってましたよ」

「ちっ、あのおっさんなら言いそうだ。でも、それは本心じゃないさ」

「さすがはスーパーポジティブ人間だなぁ」

「ノー天気とも言いますけどね」

「まったく失礼な後輩どもだ。しかし振り返ってみると、たしかにあの頃夜遅くまで働いたことは無駄ではなかったんだな」

「いろいろ失敗はしましたが、そういう経験が今になってかなり効いているとは思いますね」

「そして、現状に満足せず、我々四十代も学び続けないといけませんね」

「そうだな。そうしないとやりたいこともできない上に、誰からも頼られず、寂しい老後が待っているんだろう」

「それは怖い!」

「結局、生きている限り学び続けなさいということですね」

「人生死ぬまで勉強か!」


ひとりごと

二十代・三十代で手を抜いた仕事をすると、四十代・五十代で大きな仕事ができません。

四十代・五十代で手を抜くと、六十代・七十代で寂しい人生を歩むことになるそうです。

つまり、現在の自分の行動の結果は、二十年後に明確になるということでしょう。

人生死ぬまで勉強だと言われる所以ですね。


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