今日のことば
【原文】
功利の二字は、固より不好の字面に非ず。民の利する所に因って之を利すれば、則ち虞廷(てい)も亦功を以て禹を称せり。但だ謀と計とを以て病と為すのみ。学者之を審(つまびらか)にせよ。〔『言志耋録』第263条〕
【意訳】
「功利」の二文字は、もとより好ましくない文字だというわけではない。人々を益するように利を与えるならば、舜帝が治水の功績で禹を称賛したように、好ましいことである。問題なのは謀略や計略を立てて自分を利することである。学問をする者はこの点を明らかにすべきである。
【一日一斎物語的解釈】
功名と利益自体は、悪いものではない。問題なのは、その与え方である。社会のためとなる功名や利益は良いが、自分自身のためだけの功名や利益は罪悪でしかない。
今日のストーリー
今日の神坂課長は、営業2課の善久君と面談をしているようです。
「課長、利益を得ることはいけないことなのでしょうか?」
「そんなことはないよ。俺たちの給料はその利益の中から出ているんだぜ」
「そうですよね。でも、適正利益っていくらなのかなっていつも考えてしまいます」
「10%ならOKで、20%だと取り過ぎだというのか?」
「そういうイメージです」
「利益というのは、お客様の満足度と比例して大きくなるものなんだ。善久の提案した医療機器を買うことで、医療行為や効率が改善し、お客様が喜んで頂いたなら、20%だって30%だって利益をいただいても構わないと思うよ」
「そうですよね! すごくモヤモヤしていたんですけど、心が晴れました!」
「大袈裟な奴だな(笑) ただな、善久。お客様の満足度を無視して、こっちが儲けたいという思いだけで多くの利益を取るのは罪悪だと云えるだろうな」
「本当はもっとリーズナブルな商品があるのに、あえてそれを隠して高価な商品を提案するというようなことですか?」
「そうそう。だいたいそういう商売をすれば、いつかはそれがバレて信頼を失うことになる。そうしたら、もうそのお客様と商売ができたところで、満足度は上らないから、利益をたくさんもらうことは不可能になるんだよ」
「短期的な利益に眼がくらむと、長期的には利益を失うんですね」
「うん。要するに俺たちの商売がどれくらい世の中のためになっているか。その度合いで利益は決まるということだな」
「はい。ということは、儲けすぎだと思う時は、お客様への貢献度が低いということに自分自身が気づいている証拠なんでしょうね」
「そのとおりだよ、善久。だから俺は、利益率何%を目指せとは言わないことにしている。『お客様のお役に立て!』とだけ指示すれば、結果的に利益はついてくると信じているんだ」
「はい! それで、課長。山縣クリニックさんの商談ですけど、もう少し粗利を下げた方が、院長の満足度と合致するように思うんですけど……」
「なんかその流れ的に、イエスというしかない感じだな(笑)」
ひとりごと
実は多くの営業マンが、利益を取り過ぎていないかと悩んでいるのです。
会社が目指す利益率があるとして、それを大幅に上回ることは、正しいことではないのかも知れないと悩むのです。
しかし、お客様からいただく利益に関して、絶対的な金額や率はありません。
どれだけお客様のお役に立ち、満足度と貢献度を上げられるか否か、利益額は自然と決まるのです。