今日のことば
【原文】
人命には数有り。之を短長する能わず。然れども、我が意、養生を欲する者は、乃ち天之を誘(いざな)うなり。必ず脩齢(しゅうれい)を得る者も、亦天之を錫(たま)うなり。之を究するに殀寿(ようじゅ)の数は人の干(あずか)る所に非ず。〔『言志耋録』第288条〕
【意訳】
人間の命にはさだめがある。それを自分の意志で短くしたり長くすることはできない。しかし、自らの意志によって摂生をしようとする者は、実は天が導いてそうさせているのである。長寿の者もまた天がその命を与えるのである。これを突き詰めていくと、長寿や若死するさだめについては、人が関与することのできないことなのだ。
【一日一斎物語的解釈】
自分の一生の長さを自分で決めることはできない。しかし、与えられた時間をどう生きるかは、自分で決めることができる。
今日のストーリー
今日の神坂課長は、いつもより元気がないようです。
「神坂課長、体調が悪いんですか?」
石崎君が声をかけたようです。
「石崎、人の命なんて儚いものだな」
「どうしたんですか?」
「JRAの藤原康太騎手が落馬事故で亡くなったんだよ。まだ35歳だぞ」
「競馬って、やっぱり危険なスポーツなんですね」
「騎手はみんなどこかで覚悟はしているのかもしれないけど、それにしてもなぁ。去年、14年ぶりにG1を勝って久しぶりの美酒に酔ってから、まだ半年も経っていないんだよ」
「その時はまさか半年後に自分が亡くなるなんて想像もしていなかったでしょうね」
「うん。人の一生の長さは自分では決められないんだよな」
「長生きできる運命であって欲しいです」
「そうだな。少しくらい不幸だろうと、辛いことを経験しようと、やっぱり生きていたいよな」
「はい。大成功して早死にするより、平平凡凡に長生きする方がいいです」
「そのとおりだよ。それが一番幸せなのかもな。ただ、明日は藤原康太騎手が生きたいと思った一日だ。生きられる俺たちは無駄な生き方はしないように大事にしよう!」
「はい。自分にできることは精一杯やれる毎日を心掛けます! 藤原騎手、どうか安らかにお休みください」
二人は目を瞑り、静かに合掌しました。
ひとりごと
昨日、二人のスポーツ選手の訃報が飛び込んできました。
ひとりは元横綱・曙太郎氏、享年54歳。
もうひとりはJRAの藤原康太騎手、享年35歳。
藤原騎手は、落馬事故により帰らぬ人となっています。
昨年のG1、マイルチャンピオンシップで、当日の乗り替わりにもかかわらず、見事な机上で14年ぶりのG1制覇を成し遂げ、先月には通算800勝を達成したばかりでした。
つくづく、自分の死に時は自分で決められないことを教えられました。
朝目覚めるだけでも奇跡なのかも知れません。
毎日を楽しく、精一杯生きていきましょう!
藤原康太騎手、曙太郎さんのご冥福を心よりお祈り申し上げます。