一日一斎物語 (ストーリーで味わう『言志四録』)

毎日一信 佐藤一斎先生の『言志四録』を一章ずつ取り上げて、一話完結の物語に仕立てています(第1066日目より)。 物語をお読みいただき、少しだけ立ち止まって考える時間をもっていただけたなら、それに勝る喜びはありません。

江戸末期、維新を成し遂げた志士たちの心の支えとなったのが佐藤一斎先生の教えであったことは国史における厳然たる事実です。
なかでも代表作の『言志四録』は、西郷隆盛翁らに多大な影響を与えた箴言集です。

勿論現代の私たちが読んでも全く色褪せることなく、心に響いてきます。

このブログは、『言志四録』こそ日本人必読の書と信じる小生が、素人の手習いとして全1133章を一日一章ずつ拙い所感と共に掲載するというブログです。

現代の若い人たちの中にも立派な人はたくさんいます。
正にこれから日本を背負って立つ若い人たちが、これらの言葉に触れ、高い志を抱いて日々を過ごしていくならば、きっと未来の日本も明るいでしょう。

限られた範囲内でも良い。
そうした若者にこのブログを読んでもらえたら。

そんな思いで日々徒然に書き込んでいきます。

第2525日 「公・正・清・敬」 と 「私・邪・濁・傲」 についての一考察

今日のことば

原文】
官に居るに、好ましき字面四有り。公の字、正の字、清の字、敬の字。能く之を守らば、以て過無かる可し。好ましからざる字面も亦四有り。私の字、邪の字、濁の字、傲の字。苟も之を犯せば、皆禍を取るの道なり。〔『言志後録』第14章〕

【意訳】
官職に就く者にとって好ましい文字が四つある。公・正・清・敬の四字である。この四つを守れば、過ちを犯すことはないであろう。また好ましくない文字も四つある。私・邪・濁・傲の四字である。かりにこの四つのいずれかを犯せば、みな禍を招くことになるであろう

【一日一斎物語的解釈】
人の上に立つ者は、公・正・清・敬の四字を大切にし、私・邪・濁・傲の四字を遠ざけるべきである


今日のストーリー

Y社の菊池さんとの会話が続いています。

「そうだ菊池君。リーダーとして肝に銘じておくべき文字を教えてあげるよ」

「ぜひ、教えてください!」

「まず先に、この四つの文字を遠ざけること。四つの文字とは、私・邪・濁・傲だ」

菊地さんは手帳にメモしています。

「意味を教えてください」

「自分を優先することが『私』、正しくないことを考えるのが『邪』。賄賂などの悪い行為をすることが『濁』、そして偉そうにすることが『傲』だね」

「なるほど、どれも宜しくないのはわかります」

「特に新米リーダーが陥るのが、『私』じゃないのかな」

「気をつけます!」

「ちなみに、俺はついつい傲慢になりがちなところがあって、上司によく叱られた(笑)」

「わかる気がします(笑)」

「それから大切にすべき文字は、公・正・清・敬の四つ。自分より周囲の人や会社、世の中のためを思うのが『公』、まっとうな考え方をするのが『正』、賤しい行為をしないことが『清』」

「人を敬うのが『敬』ですね?」

「50点!」

「え、何故ですか?」

「『敬』には人を敬うという意味と、自分を慎むという二つの意味があるんだ」

「自分を慎むから、他人を敬えるということですね?」

「さすがは、一流大学を出ている菊池君だな。理解が早い!」

「どれも簡単ではないですが、毎朝この文字を見返して、大切な四文字の実践と、悪しき四文字を遠ざけることを心がけます!」

「なんだか、偉そうなことをたくさん話してしまったな。結局、俺はやっぱり傲慢なのかな?」

「そんなことはないですよ! とても参考になりました。今度は、俺にあの店で奢らせてください」

「『季節の料理ちさと』かい? それは嬉しいな!!」


ひとりごと 

公と私、正と邪、清と濁、敬と傲は、それぞれが対義語となっています。

つまりは、大切にすべき四文字を実践すれば、自然と遠ざけるべき四文字に陥ることはないということでしょう。

世の中のために、正しい考え方と清い行動を、敬う気持ちと慎みの心をもって実践する。

これが守られれば、間違いなく人が集まってくるリーダーとなれるでしょう。


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第2524日 「抑圧」 と 「勧奨」 についての一考察

今日のことば

原文】
小吏有り。苟(いやしく)も能く志を職掌に尽くさば、長官たる者、宜しく勧奨して之を誘掖すべし。時に不当の見有りと雖も、而も亦宜しく姑(しばら)く之を容れて、徐徐に諭説すべし。決して之を抑遏(よくあつ)す可からず。抑遏せば則ち意阻み気撓(たゆ)みて、後来遂に其の心を尽くさず。〔『言志後録』第13章〕

【意訳】
下級役人が仮にも志をもって職務に励んでいるならば、上役の者はこれを励ましながら、力を貸して導いてあげるべきである。ときには正しくない見解もあろうが、それでもしばらくはそのまま容認しつつ、徐々に教え諭していくべきである。決して上から抑えつけるようなことはしてはいけない。抑圧すればやる気を失い、心にもゆるみが出て、職務に精進することを怠るようになるであろう

【一日一斎物語的解釈】
メンバーが自分の精一杯を尽くして仕事に取り組んでいるなら、少しぐらい間違った見方をしていても、頭ごなしに否定したり矯正すべきではない。いきなり否定すれば、やる気を失い、仕事を怠る結果を招くことになるであろう。まずは、勇気づけ、良い方向へと誘うことを意識すべきである。


今日のストーリー

Y社の菊池さんとの雑談はまだ続いているようです。

「もう少し、部下指導の秘訣を教えてください」

「そうだね。自分の思い通りに動かないからといって、頭ごなしに抑え込むことはしない方がいいよ」

「そういうものですか?」

「特に、そいつがやる気のある奴なら猶更のことだよ。せっかく前向きに取り組んでいるなら、その志を誉めてあげないとね」

「でも、そんなことをしたら調子に乗って、大きな失敗をしませんか?」

「お客様を失うような失敗や、会社にダメージを与えるような失敗なら未然に防ぐべきだけど、小さな失敗なら目をつむるのもリーダーの度量だよ」

「それはキツイな。そうなったら叱られるのはリーダーですよね?」

「そうだよ。でも、そうやって自分のせいでリーダーが叱られたと分かれば、何かを変えなければいけないと気づくはずだろ?」

「それはそうでしょうけど、そこまでやる必要がありますか?」

「菊池君だって、たくさん失敗をしてきたでしょ? その経験が菊池君をこうしてリーダーにしてくれたんじゃないの?」

「たしかに、そうですね」

「せっかくやる気がある子を頭から抑え込んでしまったら、かえってやる気をなくすだろうし、下手すれば指示待ちの部下になってしまうかも知れないよ」

「それはマズいですね」

「伸び伸びとやらせて、責任は自分がとる。そういう覚悟がないと、リーダー自身も成長できないよ」

「リーダーの成長ですか?」

「そう。自分とは違う性格や考え方の持ち主がいることを受け容れて、その上でそういうメンバーをどう活かしていくか。そこに試行錯誤を加えていくと、いつの間にかリーダー自身が成長しているもんだよ」

「リーダー自身も失敗をして、そこから学ぶ必要があるんですね?」

「そうだよ。結局、人生そのものがトライアンドエラーの繰り返しなんじゃないのかな?」

「すごいな、神坂さん。いつの間に、そんな大人の考え方ができるようになったんですか?」

「それこそ、リーダーになってトライアンドエラーを繰り返したお陰なんじゃないかな」


ひとりごと 

せっかくやる気があるメンバーを頭ごなしに抑え込むことだけは、避けるべきでしょう。

すこしくらい考え方が間違っていても、そのまま伸び伸びと仕事をさせ、若いうちに挫折や失敗を経験させておくべきです。

一度失ったやる気は、そう簡単には取り戻せないということを覚えておきましょう!


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第2523日 「教育」 と 「引き出し」 についての一考察

今日のことば

原文】
誘掖(ゆうえき)して之を導くは、教(おしえ)の常なり。警戒して之を喩は、教の時なり。躬行して以て之を率いるは、教の本なり。言わずして之を化するは、教の神なり。抑えて之を揚げ、激して之を進むるは、教の権にして変なり。教も亦術多し。〔『言志後録』第12章〕

【訳文】
子弟のそばにいて助け導くことは教育の一般的なやり方(常道)である。子弟が邪道に陥ろうとするのを、戒め諭すことは教育の時宜を得たやり方である。自分がまず実践して子弟を指導することは教育の根本的なやり方である。口先に出して言わず、己が徳を以て教化することは教育の最上の窮極的なやり方である。一度抑えつけて、そしてほめ、激励して道に進ませることは、教育の一時的にして臨機応変なやり方である。教育にもまた、このように幾多の方法があるのである。

【一日一斎物語的解釈】
力を貸し導いてあげることは、教育の常道である。戒めて諭していくのは、教育の時宜を得た方法である。実践して自ら背中を見せることは、教育の根本である。言葉に出さずに感化することは、教育の神技である。抑えたのち褒め上げ、激励して進めることは、教育の臨機応変さを意味する。このように教育もまた様々な手法があるものだ、と一斎先生は言います。


今日のストーリー

今日の神坂課長は、N大学医学部附属病院の倉庫脇にある休憩室でY社の菊池さんと雑談中のようです。

「菊池君、マネージャー稼業はいかが?」

「大変です。メンバーはみなキャラクターが違いますから、指導の仕方もワンパターンでは通用しないんですよね?」

「わかるな。俺もその点ではだいぶ苦労したもん」

「やっぱりそうですか。それで、なにか秘訣はありましたか?」

「ない!」

「ないんかい!!」

「まぁ、敢えて言えば、相手の状況やタイミングに合わせて指導の仕方を変えるということだろうな。変幻自在な指導とでもいうか」

「具体的に教えてくださいよ」

「たとえば調子に乗りやすい奴は、一旦ストップをかけてから激励するし、引っ込み思案の奴には、最初から励ましてすぐに行動させるとかね」

「なるほど。イケイケの奴に簡単にゴーサインを出すと暴走しますもんね!」

「ま、かつて一番暴走していたのは俺だけどね!」

「ははは。そうでした、『業界の特攻隊長』という異名がありましたもんね」

「マジ? それは知らなかった(笑)」

「聞く耳を持たない奴には、何を言っても通じませんよね?」

「そこだよ。まずは、相手に聞く体制をとらせないとな」

「どうすれば良いんですか?」

「頭ごなしに叱らずに、まずはなぜそういう行動を取ったのかをしっかり聞くことから始めるしかないな」

「苦手だなぁ」

「俺もそうだよ。でも、聞いてみると意外な答えが返って来ることもある。そうすれば、その後のアドバイスもタイムリーなものになるもんだよ」

「なるほどなぁ。さすがは、マネージャーの先輩だな」

「結局、マネージャーがどれだけ引き出しを持っているかが一番重要なんだろうな」

「引き出しですか?」

「そう。このパターンの時はまずコレ、逆のパターンならコレというように、いろいろな手を打てないといけないんじゃない?」

「私はどうもワンパターンになりがちなので、意識してみます!」

「うん。そのためには、結局リーダーも学び続けなければダメだと思うよ。菊池君も一緒に読書会に出てみるか?」

「あ、いや、それはちょっと…。考えておきますね!」

「(彼はまだ本当の意味で悩んでいるわけじゃないな)」

神坂課長は心の中でそうつぶやいたようです。


ひとりごと 

教育方法には、万能薬はありません。

相手の性格や状況に応じて、臨機応変・変幻自在なアドバイスが求められます。

学び・気づき・実践のサイクルを回しながら、リーダー自身の引き出しを増やしていくしかありませんね!


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第2522日 「信頼」 と 「矢印」 についての一考察

今日のことば

原文】
「寧ろ人の我に負(そむ)くも、我は人に負く毋れ」とは、固(まこと)に確言と為す。余も亦謂う、「人の我に負く時、我は当に吾の負くを致す所以を思いて以て自ら反りみ、且つ以て切磋砥礪(せっさしれい)の地と為すべし」と。我に於いて多少の益有り。烏(いずく)んぞ之を仇視すべけんや。〔『言志後録』第11章〕

【意訳】
「たとえ人が自分を裏切っても、自分は人を裏切ることはしない」という言葉は確かな言葉である。私もまた言おう、「人が私を裏切るとき、私はなぜそうなったのかの理由を思って自らを反省し、自らを磨き上げる土台とすべきである」と。私には大変有益なことであって、どうしてこれを敵視する必要があろうかか。

【一日一斎物語的解釈】
長期的にビジネスを進めていくためには、仮に人から裏切られることがあっても、自ら人を裏切らないことだ。裏切られたら、相手を責めるのではなく、矢印を自分に向けて反省すべきである。


今日のストーリー

営業2課の石崎君が怒りに震えながら帰社したようです。

「どうした、少年。目が血走っているじゃないか(笑)」

「笑いごとじゃないですよ!! 壷井医療器の壷井社長にまんまとやられました」

「壷井のジジイか。あれは煮ても焼いても食えない爺さんだからな」

「あの人、O社の見積りしか取らないとか言っておいて、実はF社の見積りもとって、天秤にかけてたんですよ」

「そんなの、あの人の常套手段だぞ」

「クソー、こうやって人を裏切る人には天罰が降って欲しいですよ!」

「悔しいのはわかるが、裏切る人間になるよりは、裏切られる人間の方が良いじゃないか」

「私は絶対にあんなやり方はしませんよ。信頼がなければ商売はできません!!」

「そうだな。だとしたら、壷井の爺さんが、信頼こそが大事だということを、あらためて教えてくれたってことだな」

「まぁ、そういう考え方もできますけど、やっぱり許せないですよ!」

「ムカつく気持ちはわかる。しかし、あの爺さんが信頼できない人だとはわかっていたんだろう。それなら、ウラを取る必要があったんじゃないか?」

「はい、そこが今回の最大の反省点です。やはり、直接院長先生に会うべきでした」

「偉いぞ、石崎!」

「え?」

「感情的になるだけでなく、しっかりと状況を分析し、次への反省点を導き出している。その若さでそこまでやれるのは大したもんだ」

「そ、そうですか?」

「裏切った相手が悪いと思う気持ちはよく分かる。でも、文句を言ったところでもう手遅れだよな」

「はい」

「それよりは、何か自分の方で反省すべき点がないかと、相手に向けていた矢印を自分に向けてみる。そして、そこから何か次回に有効だと思われる対策を打ち出す。そっちの方がどれだけ有意義なことか」

「それはそう思います。文句を言って怒りをぶつけたところで、もうロストした商談は戻ってきませんからね」

「うん。今後は一方的に二次店さんを信頼せずに、自分の目と足で確認することを怠らないようにしよう! この学びは重要だよ」

「ありがとうございます。滅多に褒めない課長に褒められたら、ちょっと気分が晴れてきました!」

「俺だってもっとお前を褒めてやりたいんだが、いかんせん、褒めることが少ないからなぁ…」

「すみません。私は正直なので、ごますりが苦手なんです」

「誰もごまをすれなんて言ってないわ!!」


ひとりごと 

対人関係で揉め事があった場合、最初はどうしても相手の方が悪いと考えてしまいます。

これは矢印が相手に向いている状態です。

ある程度、怒りが収まったら、次に矢印を自分に向けて、自分の側にも何か落ち度はなかったか?

あるいは、次に改善すべきことはないか、と反省してみると良いでしょう。

相手を変えることはできませんが、自分を変えることはできます。

矢印を自分に向けるとは、自分を変えるきっかけとなり、やがては相手をも変えてしまう不思議な魔法なのです。


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第2521日 「言葉」 と 「利剣」 についての一考察

今日のことば

原文】
天地間の霊妙、人の言語に如(し)く者莫し。禽獣の如きは徒(ただ)に声音有りて、僅かに意嚮(いこう)を通ずるのみ。唯だ人は則ち言語有りて、分明に情意を宣達す。又抒(の)べて以て文辞と為さば、則ち以て之を遠方に伝え、後世に詔(つ)ぐ可し。一に何ぞ霊なるや。惟(た)だ是の如く之れ霊なり。故に其の禍階を構え、釁端(きんたん)を造(な)すも亦言語に在り。譬えば猶お利剣の善く身を護る者は、輒(すなわ)ち復た自ら傷つくるがごとし。慎まざる可けんや。〔『言志後録』第10章〕

【意訳】
天地の間にあって、人間の言葉ほど不可思議なものはない。禽獣はただ音を発してわずかに意思を通じ合うだけである。ところが人には言葉があって、意思を明確に伝えることができる。また言葉を文字にすれば、遠方の人に伝えることや後世に残すことも可能である。なんと不可思議なものではないか。このように霊妙であるから、禍や人間関係の不和の兆しをつくるのもまた言葉である。例えてみれば、鋭い剣は我が身を護るが、逆に我が身を傷つけるものでもあることに似ている。大いに慎まねばなるまい

【一日一斎物語的解釈】
言葉は唯一人間にのみ与えられた霊妙な力である。詳細かつ明確に自分の意志を伝えることができるのは、言葉が存在するからである。だからこそ、ビジネスにおいて特に慎むべきは言葉なのだ。自分が発した言葉は、時に意図せずに相手を傷つけ、結果的に自分の身を苦境に追いやることもあるので、注意が必要である。


今日のストーリー

今日の神坂課長は、善久君の報告を聞いているようです。

「なるほど、それで院長先生はお怒りになったというわけか?」

「はい。院長先生を怒らせるつもりはまったく無かったのですが、言葉足らずで、こういう結果になってしまいました」

「内視鏡が壊れたら、検査ができなくなる。代替品が必要になるのは当然だよな」

「はい。ちょうど別の施設で同じ内視鏡が故障して、O社さんの備品センターに確認したら、今は代替品が1本もないと言われていたので、それを素直に伝えてしまったんです」

「要するに、代替品がないことを即答してしまったわけか?」

「はい。結局探したところで、代替品が見つかるとも思えなかったので…」

「事実を事実として客観的に伝えるというのは、ケースによってはこういう結果を招くんだよな」

「では、嘘をついた方が良いという事ですか?」

「そうじゃないけど、即答せずに、『備品センターに確認してみます』と伝えて、少し時間を稼いだ方がよかったろうな」

「でも、どうせないんですよ!」

「もしかしたら、我が社の誰かが借りているかも知れないじゃないか。それに、O社さんに頼んで、全国の備品を当たってもらうことだってできるだろう」

「それは、そうですね…」

「最悪、どこにも代替品が見つからなければ、諸先輩のコネを使って、どこかの施設からお借りするという手もあるだろう」

「そんなことができるのですか?」

「もし故障したらと考えると、できればやりたくはないが、本当に必要ならそれもひとつの選択肢にはなる」

「はい」

「そういう動きをした後に、どうしても難しければ、素直にお伝えすればいい。でもな、そのときの言葉には代替品を探す努力をしたという想いが乗る。だから、即答したときと同じ回答であっても、相手に与える印象は違ってくるはずだよ」

「そうですね。先生がお困りだということをもっと自分の身に置き換えて考えるべきでした」

「まぁ、だれもが歩んできた道だよ。俺もそういうコミュニケーション上のトラブルは数えきれないほど経験してきたからな」

「そうなんですか?」

「かつてはトラブルのデパートと呼ばれた男だ。その手の話なら事欠かないぜ!」

「それ、自慢することでしょうか?」

「じ、自慢したわけじゃないよ。とにかく、言葉には想いが乗るものだ。その結果、こちらが意図したのとは真逆の結果を招くこともある。言葉選びは慎重にしないとな!

「はい!」

そこに、石崎君が内視鏡のケースを持って帰ってきました。

「おい、石崎。その内視鏡って機種はなんだ?」

「GIFーXP290Nです。調子が悪いと聞いたので、代替品を手配したんですけど、異常が出なかったので、結局使いませんでした」

「ザキ、それを2~3日借りることはできないかな!!」

「あー、返却日は今週末だから、大丈夫だと思うよ」

「ほらな、善久。やはり、やるべきことを尽くしてから、ノーという習慣をつけた方が良さそうだな!」


ひとりごと 

言葉ほど優れたコミュニケーションツールはありません。

微妙なこちらニュアンスを、的確な言葉を選ぶことでしっかりと伝えることもできます。

しかし、両刃の剣のごとく、使い方を誤れば相手を傷つけ、自身も傷づきます。

だからこそ、言葉選びには慎重にも慎重を期すべきなのです。


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