【原文】
古人、易の字を釈して不易と為す。試みに思えば晦朔(かいさく)は変ずれども而も昼夜は易らず。寒暑は変ずれども而も四時は易らず。死生は変ずれども而も生生は易らず。古今は変ずれども而も人心は易らず。是れ之を不易の易と謂う。
【訳文】
漢代の大儒鄭玄(じょうげん)は、易字を解釈して不易(易簡・変易を加えて三義とす)といった。考えてみると、晦(つごもり:月終)からして朔(ついたち:月始)へと変わるけれども、昼と夜とは別に易りはしない。寒さ暑さは変っていくけれども、春夏秋冬は易らずいつも同じく繰り返されている、死ぬのと生まれるのとは変わるけれども、次から次へと生が持続されていくことには易りはない。昔と今は時間的に変るけれども、人間の心は易るものではない。これを不易の易という。
【所感】
古人(漢の鄭玄)は易を不易だと解釈した。試しに考えてみると、暦は晦(つごもり)から朔(ついたち)へと移り変るが、昼と夜は変わらない。寒暑は変って行くが、春夏秋冬は常に順番どおりに繰り返される。ひとりの人間は生きて死ぬが、次々に新たな生が生まれて来ることは変らない。昔と現在で時間は異なるが、人間の心は易わらない。これを不易の易というのだ、と一斎先生は言います。
易という言葉には易の三義と呼ばれる以下の三つの意味があります。
(竹村亞希子先生のブログより)
「変易」:森羅万象、すべてひと時たりとも変化しないものはない。
「不易」:変化には必ず一定の不変の法則性がある。
「易簡」:その変化の法則性を我々人間が理解さえすれば、天下の事象も知りやすく、分かりやすいものになる。
この世の中に変化しないものはありません。しかしその変化には一定のルールがあります。このルールをよく把握したならば、上手に対処することも可能になるということです。
それを理解した上で自分の生を生き抜くためには、以下の「ニーバーの祈り」と呼ばれる考え方が参考になります。
「神よ、変えることの出来ない事柄については、それをそのまま受け入れる平静さを、 変えることの出来る事柄については、それを変える勇気を、 そして、この二つの違いを見定める叡智を、私にお与えください。」
作家でラジオパーソナリティの中村信仁さんは、
人間には「生まれて、生きて、死ぬ」という3つしかない。
そのうち自分でなんとかできるのは「生きる」ことだけだ。
と言っています。
一度しかない人生です。
変えられないことに心を奪われることなく、変えられることを変えていく勇気を持たねばなりません。