一日一斎物語 (ストーリーで味わう『言志四録』)

毎日一信 佐藤一斎先生の『言志四録』を一章ずつ取り上げて、一話完結の物語に仕立てています(第1066日目より)。 物語をお読みいただき、少しだけ立ち止まって考える時間をもっていただけたなら、それに勝る喜びはありません。

江戸末期、維新を成し遂げた志士たちの心の支えとなったのが佐藤一斎先生の教えであったことは国史における厳然たる事実です。
なかでも代表作の『言志四録』は、西郷隆盛翁らに多大な影響を与えた箴言集です。

勿論現代の私たちが読んでも全く色褪せることなく、心に響いてきます。

このブログは、『言志四録』こそ日本人必読の書と信じる小生が、素人の手習いとして全1133章を一日一章ずつ拙い所感と共に掲載するというブログです。

現代の若い人たちの中にも立派な人はたくさんいます。
正にこれから日本を背負って立つ若い人たちが、これらの言葉に触れ、高い志を抱いて日々を過ごしていくならば、きっと未来の日本も明るいでしょう。

限られた範囲内でも良い。
そうした若者にこのブログを読んでもらえたら。

そんな思いで日々徒然に書き込んでいきます。

第2429日 「性」 と 「果」 についての一考察

今日のことば

原文】
学者当に徳は歯(とし)と長じ、業は年を逐(お)いて広かるべし。四十以降の人、血気漸く衰う。最も宜しく牀弟(しょうし)を戒むべし。然らざれば神昏く気耗し、徳業遠きを致すこと能わず。独り戒むこと少(わか)きの時に在るのみならず。〔『言志録』第163条〕

【意訳】
本当に学問を修めている者の徳は年齢と共に進み、学業は年々広がっていく。四十を超えた人は、血気も衰えてくるので、寝室でのことを慎むべきである。そうでなければ精神も気力も衰えて、学徳の達成が覚束なくなる。寝室での慎みは若いときだけの問題ではない。

【一日一斎物語的解釈】
真摯に仕事に取り組むビジネスマンは年齢と共に仕事の成果も大きくなり、それにつれて人格も磨かれていく。しかし、人間は40歳頃を境に体に衰えが生じる。そこで重要なのが性欲のコントロールである。性欲を妄りにすると、精力も気力も消耗し、仕事の成果も人格も伸び悩むことになる。性欲をコントロールするという慎独の工夫は、なにも若いときだけの問題ではない。


今日のストーリー

今日の神坂課長は、YouTubeで『孔田丘一(こうだきゅういち)の儒学講座』を閲覧しているようです。

「皆さん、あっという間に夏も終わりですな。これでワシもまたあの世に一歩近づいたわけじゃ」

「そう言いながら、百歳まで生きるぞ、この爺さん」

「さて、今日は性欲の話をしよう」

「相変わらず突拍子もない話題だな」

「いいかな、諸君。四十を過ぎても女の尻を追いかけているようでは、人生を棒に振りますぞ」

「四十を過ぎた連中は、よくわかっていると思うが、一気に体力が落ちてくるのがその頃からなんじゃ」

「そんな時にせっかくの力を女に使っていては、仕事は覚束ない。ロクな成果はでませんぞ!」

「若い時にみだりに性欲を洩らすのも問題じゃが、最近の四十代・五十代は元気じゃからな。十分に機能は果たせるじゃろう」

「だからといって、見境なく性行為を繰り返してしまえば、それだけ生きる力、働く力を喪失することになるんじゃ」

「中小企業に働く中年男にそんなチャンスも金もないよ、爺さん」

「自分には縁がないと思って聴いている君! 魔の手はどこから差し向けられるかわかりませんぞ」

「かくいうワシも随分と女では失敗してきたわ」

「こう見えてもワシの四十代・五十代は渋いイケメン中年じゃったからな、ははは」

「自慢かよ!!」

「けっこういい女が近寄って来るんじゃよ。そうなると、つい・・・。なんてことをしていたら、いけませんぞ!!」

「説得力が全然ないよ。(笑)」

「とにかく、精液を大切にしなされ。それが人生成功の秘訣じゃからな

「お、そろそろ今日は終了じゃ。この後、自分より三十歳も年下の女性とデートの予定がありましてな。ははは」

「おーい!!」

「あ、デートと言っても、次の本の出版の打合せじゃがな」

「・・・」

「では、また生きていたらお会いしましょう!」

「やっぱりこの爺さんは、百まで生きるな」


ひとりごと

性欲の問題については、森信三先生も『修身教授録』の中で、一斎先生の言葉と同じようなことを語っています。

たしかに四十歳を過ぎると、体力も気力も一気に落ちてきます。

五十代になると、さらに!!

四十代・五十代で良い仕事をするには、みだりに性欲を洩らしていてはいけないのでしょう。

とはいえ、まったく女性との交わりがないというのも・・・。


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第2428日 「形なきもの」 と 「形あるもの」 についての一考察

今日のことば

原文】
耳目手足は、都(すべ)て神帥(ひき)いて気従い、気導きて体動くを要す。〔『言志録』第162条〕

【意訳】
人間の耳や目といった器官や手足などは、みな精神が率いて、それに気が従う。次いでその気が導いて身体を動かすことを可能にするのである。

【一日一斎物語的解釈】
人間が五感を働かせたり手足を動かすのは、心の指示に従っているのである。しかし、普段はそれを実感していない。仕事においても、メンバーが動くのはリーダーの指示によるのであるが、メンバー自身は自分の意志で動いていると感じるようなマネジメントをすることが理想である。


今日のストーリー

今日の神坂課長は、緊急事態宣言が明けたので、佐藤部長と一緒に「季節の料理ちさと」に来たようです。

「ママ、ようやくだね!」

「うん、でもお酒を出せるのは20:00までだけどね」

「20:00なら仕事を終えてこうしてやってきても酒が飲めるからありがたいよ」

二人は生ビールを注文したようです。

「しかし、人間の身体って不思議ですよね? こうやってビールを飲むのには、手がジョッキを握って口元まで運び、口を開けてジョッキを傾けるとビールが喉に流し込まれます。これって手と口とが見事に連動しているじゃないですか」

「ははは、そうだね」

「でも手と口は勝手に動いているわけではなく、その動きを司っているのは脳です」

「しかも、その脳に指示を与えているのは、心だよね」

「その心というのが不思議です。人間が死んで解剖されたとしても、心というものは実体がないじゃないですか」

「形のないものが、形あるものを動かしているんだよね」

「私の馬鹿な頭では、なにがどうすればそうなるのか、さっぱりわかりません」

「しかし、リーダーがメンバーを動かすのも、形のない徳というものだよね」

「あぁ、なるほど。形のない徳目が人を動かすのか!」

「誠とか、仁とかいうものは、形はない。形はないけれどたしかに存在する。存在するからこそ、人はそれに動かされるわけだからね」

「結局、見えないものが見えるものを動かすんですね。しっかり、徳を身につけないと!」

「二人とも、せっかくウチに来たのに難しい話をしてるわね」

「あ、ママには高尚過ぎたかな?」

「あのね、あなたよりはかなり勉強ができると自負してますけど!」

「いいねぇ、ママの怒った顔は可愛いよね。いくつになっても」

「神坂! 最後の言葉は余計でしょ!」

「部長、考えてみたら、言葉というのも形無きものですね。それがこうやって、一人のおばさんを怒らせるんですから不思議です。(笑)」

「神坂!!」


ひとりごと

人間の器官を動かすものは、脳であり、その脳に指示を与えているのは心です。

しかし、心とは実体のないものです。

それが諸器官を見事に連動させている。

人体ほど不思議なものはないですね。


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第2427日 「虚明」 と 「神光」 についての一考察

今日のことば

原文】
胸憶虚明なれば、神光四発す。〔『言志録』第161条〕

【意訳】
心の中にわだかまりがなければ、精神が四方に光輝く。

【一日一斎物語的解釈】
リーダーの心が澄み切った状態にあれば、周囲を良い雰囲気で包み込むことができる。


今日のストーリー

今日の神坂課長は、大累課長のデスクにやってきたようです。

「どうした、大累。そんな苦虫を噛み潰したような顔をしていたら、メンバーも近寄れないぜ」

「大きなクレームが発生したんですよ。もしかすると300万円近い損失が発生するかも知れません」

「それはヤバいじゃないか!」

「だから、こんな顔をしているんですよ」

「しかし、そういう時だからこそ、お前がデンと構えていないとメンバーも慌ててしまうぞ」

「たしかに、神坂さんはこういう時もいつも笑っていましたよね。ちょっと馬鹿なんじゃないかと思う程にね」

「馬鹿は余計だ! 俺なりに考えてそういう態度を取っていただけだ」

「そうだったんですか? 根っから陽気な人だと思っていました」

「失礼な奴だな。リーダーたる者、ちょっとやそっとで動じてはいけない。どんな時も心を曇らせることなく、清々しい心を保てば、周囲に良い影響を与えられるんだ。クレームだってきっと解決する!」

「そういうところだけは尊敬しますよ」

「どんなに悩んだところで、起きてしまったことは元には戻らない。だから悩む暇があったら、今何をすべきかを考えないとな」

「そうですね」

「施設はどこだ?」

「夏目病院です」

「あー、夏目先生のところか!」

「え、院長をご存知でしたか?」

「実は仕事ではまったくご縁がなかったんだけど、同じ草野球チームのチームメートなんだよ」

「マジですか! それはありがたい!!」

「詳しくクレームの内容を教えてくれ」

結局、神坂課長の訪問によって、クレーム案件は無事解決したようです。

「言っただろ、心にわだかまりのない男には、こうやって幸運が舞い込むんだ。リーダーは笑うんだ、どんなに辛いときもな!」

「いや、本当に助かりました。私も神坂さんを見習って、ノー天気なリーダーを目指します!」

「おい、そうじゃないだろ!」


ひとりごと

リーダーとなって人の上に立つ人は、つねにメンバーから観られていることを意識すべきです。

そうであるなら、辛いことがあっても、簡単に弱音を吐いたり、愚痴をこぼしてはいけません。

少なくとも、メンバーの前では。

泣くのは、独りのときです。


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第2426日 「活敬」 と 「死敬」 についての一考察

今日のことば

原文】
人は明快灑洛の処無かる可からず。若し徒爾(とじ)として畏縮シ趄(しょ)するのみならば、只だ是れ死敬なり。甚事(なにごと)をか済(な)し得ん。〔『言志録』第160条〕

【意訳】
人は明快でさっぱりとしたところがなければならない。もしただ委縮して、ぐずぐずしたところがあれば、それは死んだ敬に過ぎない。そんなことでは何も成し得ることはできない。

【一日一斎物語的解釈】
仕事をする上ではいつも明るく清清しい態度であるべきだ。ビクビクしたりぐずぐずしたところがあるなら、それは一見人を敬うように見えて、実は卑屈なだけの死んだ敬である。そのような態度や外見でビジネスがうまくいくわけがない!


今日のストーリー

今日の神坂課長は、営業2課の石崎君と同行中のようです。

「F社の大谷さんには敵いません。ドクターを完璧に押さえていて、付け入る隙がないんです」

「彼はF社のエースだからな。相手に不足はないじゃないか!」

「私なんかじゃ太刀打ちできませんよ」

「最初からそういう気持ちじゃ、勝てるわけないだろう」

「私はあの人のことを尊敬しています。あの人はディーラーの鑑だと思います。あんな営業マンになりたいと思っています。尊敬しているからこそ、あの人には勝てないと思うんです」

「くだらねぇな」

「え?」

「そんなの尊敬じゃない。死んだ敬意だ。死んだ敬意を抱いたってなんの価値もない!」

「なぜ、そんなことを言うのですか?」

「俺なら、尊敬するライバルと闘えるなら嬉しくて、ワクワクして仕方ないよ。尊敬できる相手の胸を借りることができるなんて幸せじゃないか」

「ポジティブ過ぎませんか?」

「尊敬できない相手と戦っても燃えないじゃないか。戦い甲斐がある相手だから、こっちにも驚くようなアイデアや戦略が浮かんでくるんだよ」

「私は、ただビビッているだけなのでしょうか?」

「お前が先に内視鏡室に居て、後から大谷さんが入ってきたら、逃げ出すんだろ?」

「はい」

「そんなことじゃ、お前はいつまで経っても成長できないぞ。最初は勝てなくてもいいから、ぶつかってみろよ。大谷さんが本当に尊敬できる人なら、きっとお前を無碍には扱わないはずだ」

「それが本当の敬意なんですね?」

「そうだ。俺も今までに散々に他社のベテラン営業マンにやられてきた。でも、その経験が糧になって、今があるんだ。逃げたら何も変われないぞ」

「わかりました。今度、大谷さんに会ったら、勝負を挑んでみます」

「徹底的にやられてみろ。そして、悔しいけど清々しい敗北感を味わえ。それがお前の力になる!!」


ひとりごと

敬意にも活きた敬と死んだ敬があるのだ、と一斎先生は言います。

死敬は、卑屈な心を胡麻化すものでしかありません。

本当の尊敬とは、自分の魂を揺さぶるものであるはずです。

活敬を抱けば、成果も変わります。


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第2425日 「敬」 と 「累」 についての一考察

今日のことば

【原文】
敬を錯認(さくにん)して一物と做(な)し、胸中に放在すること勿れ。但だに聡明を生ぜざるのみならず、卻って聡明を窒(ふさ)がん。即ち是れ累(わざわい)なり。譬えば猶お肚中(とちゅう)に塊(かい)有るがごとし。気血之が為に渋滞して流れず、即ち是れ病なり。〔『言志録』第159条〕

【意訳】
敬を重視せずに単なる一物として、胸中に放任していはいけない。ただ聡明になれないだけでなく、愚かになってしまう。これは禍いといえるだろう。例えて言えば体内に大きな塊があって、血液の流れを滞らせている状態、すなわち病と同じだ。

【一日一斎物語的解釈】
人を敬う気持ちを疎かにすると、聡明になれないどころか愚かになってしまう。これは非常に危険なことだ。まるで血管内のコレステロールの塊が血流を塞ぐように、ビジネスの流れも滞ってしまう。


今日のストーリー

S急便の中井さんが荷物を届けにきたようです。

毎度、今日は荷物が5点です

あ、中井さん。ありがとうございます

神坂さん、相変わらず元気ですね

そのセリフそっくりそのままお返ししますよ

バカは元気だけが取り柄ですからね

ということは、俺もバカだと?

違う?

大正解。(笑) 相変わらず、後輩たちを敬ってますか?

それはもちろん。あいつらホントによく頑張ってくれているんですよ。営業所の売り上げも常に全国3位以内をキープしてますからね

すごいなぁ。やっぱり敬う気持ちは人を動かすんですね

そうかもしれません。でも、心からそう思わないとダメだとおもいますよ

それはそうですね。敬う気持ちが薄れると、職場を流れる血液が滞留してしまうんだそうです

わかる気がしますね。あいつらも俺を尊敬してくれている気がします

間違いないですよ。そうじゃなかったら、売り上げトップ3は維持できませんよ

神坂さん、石崎くんが何か言いたそうにこっちを見てますよ

目を合わさないでおきます

神坂さん!

わかりましたよ。なんだよ、小僧

課長ももっと私たちを尊敬してくださいね

お前が気づいてないだけで、結構尊敬してるんだぞ

言葉と態度で表してもらわないと

中井さん、殴っていい?

絶対ダメです‼️


ひとりごと

敬意がなければ、血流がせき止められるように、仕事もうまくいかない、と一斎先生は言います。

世の中に頑張っていない人はいない。


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プロフィール

れみれみ