【原文】
信、上下に孚(ふ)すれば、天下甚だ処し難き事無し。
【訳文】
誠の心があって、上下の人々に信用を得たならば、この世の中で、どんな事でも至難とされることはない。
【所感】
職位が上の人からも、また部下からも信頼を得ているならば、この世の中で成し難いことなどない、と一斎先生は言います。
有名な『論語』の一節があります。
(原文)
子貢政(まつりごと)を問う。子曰わく、食を足し兵を足し、民之を信にす。子貢曰わく、必ず已むを得ずして去らば、斯の三者に於て何れをか先にせん。曰わく、兵を去らん。曰わく、必ず已むを得ずして去らば、斯の二者に於て何れをか先にせん。曰わく、食を去らん。古(いにしえ)より皆死有り、民、信無くんば立たず。
(訳)
子貢が政治の要道を尋ねた。
先師が答えられた。
「食(食糧)を豊かにし、兵(軍備)を充実し、民に信(道義)を持たせることだ」
子貢が尋ねた。
「どうしてもやむなく、捨てなければならないときに、この三つの中どれを先にすればよいでしょうか」
先師が言われた。
「兵を捨てよう」
子貢が更に尋ねた。
「どうしてもやむなく捨てなければならないときに、この二つの中どれを先にすればよいでしょうか」
先師が言われた。
「食を捨てよう。昔から食の有無にかかわらず、人は皆死ぬものだ。然し人に信がなくなると社会は成り立たない」(伊與田覺先生)
このように孔子は明確に、「信」の重要性を説かれています。
職場に置き換えてみましょう。
どんなに給与を含めた福利厚生面を充実させ、またカタログ等の販売ツールを整えたとしても、リーダーとメンバーの間に信頼関係がなければ組織は成り立たない。
このように理解することができそうです。
ではリーダーがメンバーから信頼を得るにはどうすべきか。
あくまで小生の拙い経験から導き出した答えであることを前置きした上で、掲載しておきます。
メンバーから信頼されるリーダーの条件
1.メンバーの誰よりも働いている。
2.ものさし(判断の基準)は常に「利よりも義」に置かれている。
3.トラブルが発生した際には、逃げることなく、先頭に立ってその解消に
努める。
信無くんば立たず。
組織運営においても非常に重要な言葉であり、肝に銘じておくべき箴言ですね。