原文】
少壮の人、精固く閉ざして少しも漏らさざるも亦不可なり。神滞りて暢びず。度を過ぐれば則ち又自ら牀(そこな)う。故に節を得るを之れ難しと為す。飲食の度を過ぐる、人も亦或いは之を規す。淫欲の度を過ぐる、人の伺わざる所(か)、且つ言い難し。自ら規するに非ずして誰か規せん。


【訳文】
若くて元気盛んな人が、精(精力)を極端に抑制して少しも外に発散しないのも良くないことである。精神が滞ってしまって順調にのびのびとしない。度を過ごしたならば体を害することになる。それで、節度を得るということは難しいことである。暴飲暴食して度を過ごしたのは、誰でも正し戒めることができるが、性欲の度を過ごしたのは、人の存知しないところであり、なお口に出しては言いにくいことである。自分で規制していかなければ、誰がこれを規制することができよう。


【所感】
若い人が性欲を抑制し過ぎて、少しも漏らすことがないというのも問題である。精神が滞って健全に成長しなくなってしまう。度を超せばかえって自らの健康を害することにもなる。そういう意味でも、節度を守るということは難しいことである。暴飲暴食は人から指摘してもらうことも可能だが、性欲については人の伺い知れないところであり、また指摘もしづらいものである。自分自身で抑制して行く以外に方法はない、と一斎先生は言います。


引き続き性欲についての章です。


昨日紹介した森信三先生のお言葉の中に、


そこで生まれつきとしては、肉体的にいかに強壮な人でも、もしその人が性欲を守る点できびしくなかったら、将来必ずや衰える期がくるのであります。同時にまたこれに反して、その生まれつきとしては、さまで健康でない人でも、もしその人が性欲を制御することがきびしかったとしたら、その人はよく天寿をたもち、永く精神的な活動に堪えることができるのであります。


とありました。


佐藤一斎先生は、性欲を自制することを自らも実践され、87歳で亡くなるまで精力的に活動されました。


考えてみれば、森信三先生は97歳、坂村真民先生は98歳でご逝去されており、見事に天寿を全うされています。


さらに安岡正篤先生のご高弟である伊與田覺先生に至っては、100歳を超えた今もご健在であられます。(安岡正篤先生も85歳までご活躍されております。)


現在の日本人男性の平均寿命は80.2歳だそうです。


これら諸先生が生きた時代の平均寿命はそれよりはるかに短かったことを考慮すれば、驚くべき長寿であったと見ることができます。


性欲を漏らすことが人体に及ぼす影響は、吾々が想像する以上に甚大であると言えそうです。