原文】
私欲は有る可からず。公欲は無かる可からず。公欲無ければ、則ち人を恕する能わず。私欲有れば、則ち物を仁する能わず。


【訳文】
利己的な欲心は有ってはいけないが、公共的な欲心は無くてはならない。公共心が無ければ、同情心を他人に及ぼすことはできない。利己心があれば、慈愛の心を以て他人に物を与えることはできない。


【所感】
私欲はあってはいけない。社会のためにという公的な欲はなければならない。公的な欲がなければ、人におもいやりを施すことはできない。私欲があれば、仁を施すことはできない、と一斎先生は言います。


森信三先生は『修身教授録』の中で、以下のように述べておられます。


人間が真に欲を捨てるということは、実は自己を打ち越えた大欲の立場にたつということです。すなわち自分一身の欲を満足させるのではなくて、天下の人々の欲を思いやり、できることなら、その人々の欲をも満たしてやろうということであります。


つまり、人間がこの世に生まれた使命を果たすためには、この私欲を捨てて、公欲すなわち大欲をしっかりと胸に抱くということです。


大欲とは言いかえれば、志でしょう。


自分の保身や処遇にばかり意識を向けているようでは、大きな仕事はできません。


しかしそれを理解するためには、学問が必要です。


小生のような世代は、これから日本を背負って立つ若者たちに、学問をする機会を与えていかなければならないのではないでしょうか。