原文】
克己の工夫は、一呼吸の間に在り。


【訳文】
自分の私欲に打ち勝つ工夫は、日々持続すべきで、一瞬の間でも怠ってはいけない。


【所感】
己に勝つという克己の工夫は、悩まず一呼吸の間に即断即決実行すべきである、と一斎先生は言います。


この解釈は2通りあるようです。


多くの諸先輩のご意見は、上記のように「時を置くな」というもののようです。


しかし、「なにかを実行する前にゆっくり一呼吸して間をあけろ」とも取ることができます。


つまり、


やると決めたらすぐにやれ


という解釈と、


行動を起こす前に一息入れろ


という二つの解釈です。


この2つの解釈を並べてみると、第276日でご紹介した孔子の弟子に応じた臨機応変の対応を思い起こします。


いわゆる応病与薬です。


つまり、もし自分が冉有タイプだと思うなら、すぐに実行しろと理解すればよいし、子路タイプの人なら、一呼吸置けと理解すればよいのではないでしょうか?


いずれにしても修養における最大の難事は克己にあります。


王陽明先生は、


山中の賊を破るのは易く、心中の賊を破るのは難し


という名言を遺されています。


戦において敵に勝つことよりも、己の心(に浮かぶ欲などの穢れ)に勝つことの方が難しいということです。


結局、人の一生とは己の心にある賊との戦いに過ぎないのかも知れません。


心中の賊に勝って心穏やかに死ねるか


それとも賊に敗れて後悔の念を抱いて死んでいくのか


それは本人の修養次第のようです。