【原文】
老人は衆の観望して矜式(きょうしょく)する所なり。其の言動は当に益々端(たん)なるべく、志気は当に益々壮なるべし。尤も宜しく衆を容れ才を育するを以て志と為すべし。今の老者、或いは漫(みだり)に年老を唱え、頽棄に甘んずる者有り。或いは猶お少年の伎倆(ぎりょう)を為す者有り。皆非なり。


【訳文】
老人は多くの人が仰ぎ見て、敬いのっとる所のものであるからして、その言語や動作は益々端正にしなければならないし、その意気は益々壮大でなければならない。そして、多くの人々を包み入れる度量をもち、才能のある者を育成することをその志とすることが最もよい。ところが、今時の老人達は、むやみに年をとったといって、自分を役に立たぬすたれ者としてそれに満足している者がおるかと思うと、いまだに少年達がするような幼稚なことしかしない者がいる。それらは宜しくないことである。


【所感】
老人は多くの人が仰ぎ見て、お手本とする存在である。その言葉や行動は老いて益々端正になり、志は益々荘厳になるべきである。とりわけ適格に多くの人を受け容れ、その才能を育てることを志とすべきである。ところが今の老人は、むやみに老いたことを歎き、老いて衰えることをよしとしている者もいる。あるいは、いまだに年少者レベルのことをしている者もある。ひじょうに宜しくないことである、と一斎先生は言います。


小生のまわりには、言葉は少々失礼にあたりますが、老いて益々盛んな方がたくさんいらっしゃいます。


それらの方に共通して言えるのは、笑顔がとても自然で素敵であるということであり、常に謙虚で、小生のような若輩者の話しにも真剣に耳をかたむけてくださいます。


小生も営業という生き方をはじめて20年を超えておりますので、ある程度顔を見ただけでその方の生き様を推測できるようになりました。


精進の足りていない方は、見事にそれが顔相に現われていますし、なにより笑顔が素敵ではないのです。


一方、小生がご縁を頂いた方々の笑顔には神々しさをさえ感じてしまいます。


矜式(きょうしょく)、とは慎んでお手本とすることを意味する言葉のようです。


この言葉はこの章を読んで初めて知りましたが、まさに小生はそれらの方々をお手本として、その方々のような老後を迎えたいと心から思い、精進を重ねておるつもりです。(他人さまのご評価は存じませんが。。。)


少年老い易く、学成り難し


とは、南宋の学者であり、儒教中興の祖である朱熹のことばだと言われております。


小生も気が付けばあっという間に50を迎えようとしています。


まさに、学成り難しを実感する今日この頃です。


還暦までの残り10年を大切に、学び、気づき、実践して、お手本とさせて頂いている方々に少しでも近づきたいと心より願っております。