【原文】
養望の人は高に似、苛察(かさつ)の人は明に似、円熟の人は達に似、軽佻(けいちょう)の人は敏に似、愞弱(たじゃく)の人は寛に似、拘泥の人は厚に似たり。皆以て非なり。
【訳文】
名声と人望を得ようと心がけている人は志が高いようであり、厳しく人の欠点を責めたてる人は道理に明るいようであり、熟練して上達した人は事理に精通(通達)しているようであり、軽率な人はすばしこい(敏捷な)ようであり、気が弱い人はおおよう(寛大)なようであり、融通のきかない人は情に厚くて誠実なようである。しかし、これらはみな似てはいるが、まったく違ったものである。
【所感】
名望を得ようとつとめる人は志が高いように見え、人を厳しく洞察する人は明敏であるように見え、技術に熟練している人は完成しているように見え、軽薄で浅はかな人は行動が敏捷に見え、気が弱い人は寛大に見え、ひとつのことに執着する人は篤実に見える。しかしこれらはすべて似て非なる者である、と一斎先生は言います。
一般的には人物鑑定の判断基準だと理解できますが、これはまず自分に当てはめてみる必要がありそうです。
いわゆる「つもり」というやつです。
自分は志が高いつもりでいるが、実は地位や名誉が欲しいだけ
自分は明敏なつもりでいるが、実は他人に厳しく自分に優しいだけ
といったことになってはいないか?
そのように捉えた方がこの章句を活かすことができそうです。
ご存知の方が多いかと思いますが、「つもりちがい10ヶ条」をご紹介しましょう。
高いつもりで低いのが教養
低いつもりで高いのが気位
深いつもりで浅いのが知恵
浅いつもりで深いのが欲望
厚いつもりで薄いのが人情
薄いつもりで厚いのが面皮
強いつもりで弱いのが根性
弱いつもりで強いのが自我
多いつもりで少ないのが分別
少ないつもりで多いのが無駄
小生には、どれも耳に痛いことばかりです。
皆さんはつもりちがいしていませんか?