【原文】
財を理(おさ)むるには、当に何の想を著(つ)くべきか。余謂(おも)えらく、「財は才なり。当に才人を駆使するが如く然るべし」と。事を弁ずるは才に在り。禍を取るも亦才に在り。慎まざる可けんや。
【訳文】
財貨をうまく運用するには、どのように考えたらよいのだろうか。自分は「財は才である。それだから才能のある人を使うようにすればよいのである」と思っている。何か事を処理するのも才能であり、禍を招くのも才能である。それで、慎重にしないでよいだろうか。
【所感】
財産を運用するには、どういう考え方に立つべきであろうか。私は思う、「財は才能である。だから才能のある人を使うように取り扱うべきである」と。事を処理するのも才能であり、禍を呼ぶのも才能である。慎まないわけにはいかない、と一斎先生は言います。
誰でもお金持ちになりたいという気持ちはあるでしょう。
しかし、お金というものは、我々がお客様に提供する価値の代償として受け取るものであり、その価値の大きさがそのまま金額の多寡となります。
したがって、お金を得るためには、自分の目の前にある仕事に全力を尽くすことが必要なわけです。
しかし、それだけでなく、その仕事は清浄なものでなければなりません。
日本三大商人のひとつ近江商人(残りは、大阪商人と伊勢商人)は、商売というものは
売り手よし、買い手よし、世間よし
でなければならないとしています。
いわゆる「三方よし」です。
売り手と買い手の双方にメリットがあったとしても、それが賄賂の取引という形でなされたのであれば、世間的にはアウトです。
またお金というものは、私腹を肥やすために溜め込んではダメで、社会のためにどんどん使うことも大切です。
私腹を肥やそうとすれば、自然に悪いことに手を染めることにもなり兼ねません。
そう考えてくると、お金をうまく活用していくということは、一つの才能であるから、あたかも有能な人をうまく活かすかのように取り扱うべきだ、という一斎先生のお言葉は大いに納得できる言葉ではないでしょうか。
小生には、残念ながらその資質はなさそうですが。。。