【原文】
人主の賢不肖は、一国の理乱に係る。妙年嗣立(しりつ)の者、最も宜しく交友を択ぶべし。其の視効(みなら)う所、或いは不良なれば、則ち後遂に邦家を誤る。懼る可きなり。


【訳文】
藩主の賢愚は一国の治乱に関係する。それで、若くて先君の後を嗣いだ者は、最もその交友の選択に注意を払うがよい。平生見習っている人が、もし善良でなければ、後日ついに一国の前途を誤ることになる。恐るべきことである。


【所感】
君主が堅いか否かで、国が治まるか乱れるかが決まる。年若くして後を継いだ者は、とくに交遊関係を慎むべきである。日頃模範とする人が不善であれば、将来的に国を滅ぼすことにもなり得る。恐ろしいことだ、と一斎先生は言います。


野球評論家の野村克也氏は、こう言っています。


組織はリーダーの器以上には大きくなれない。


良かれ悪しかれ、組織はリーダー次第ということでしょう。


一斎先生はとくに若いときの交際に気をつかえとアドバイスをしています。


経営者の跡継ぎでなくても、将来人の上に立って大きな仕事をしたいと考えている若者は、慎重に交際をするべきです。


現代の日本において、若くして師と呼べる人に巡り会える人は一握りの数でしかないでしょう。


では、どうすべきか。


小生は、読書に如かずと断言します。


たとえば、『貞観政要』という中国古典があります。


これは、唐の第二代皇帝太宗とその重臣とのやり取りを記録した書で、古来帝王学のテキストとされてきました。


太宗の治世は、貞観の治と呼ばれ、見事に国が治まった時代なのだそうです。


そこには、有名な言葉として、


創業と守成、孰(いず)れが難きや 


があります。


そしてこの書は、太宗自身が跡継ぎでもあることから、主に守成についての箴言やアドバースが満載なのです。


若き日にまずは『貞観政要』を読み込み、実践を積む。


そうすれば、正しい道を進むことができ、結果的に師と仰ぐ人に巡り会うことも可能となるはずです。


小生に関しては随分と手遅れではありますが、後世に伝える学びとして『貞観政要』を学んでおります。