【原文】
事物に応酬するには、当に先ず其の事の軽重を見て而る後に之を処すべし。仮心(けしん)を以てすること勿れ。習心を以てすること勿れ。多端を厭(いと)いて以て笱且(こうしょ)なること勿れ。穿鑿(せんさく)に過ぎて以て繳住(きょうじゅう)すること勿れ。


【訳文】
物事を取扱う場合には、まずその物事の度合を見てから処理しなければいけない。好(い)い加減な気持でしてはいけない。習慣的な気持でしてはいけない。多忙を嫌って粗末にしてはいけない。余り調べ過ぎて引き止めておくことはいけない。


【所感】
ものごとを処理する場合には、まずその内容の重要性を把握した後に処理をすべきである。いい加減な心で対処してはならない。慣れ過ぎて軽くみて処理するのもよくない。手をつけるところが多いからと手を抜いてはいけない。細かいことにこだわり過ぎて、ひとつのことに深入りし過ぎることもよくない、と一斎先生は言います。


仕事を処する上での心がけについてのアドバイスです。


簡単にまとめてみますと、


① すぐに手をつけるのではなく、ことの重要性をよく見極める。
② いい加減な気持ちで仕事をしない。
③ 狎れた気持ちで仕事をしない。
④ 手抜きをしない。
⑤ 精密音痴にならず、常に全体像を把握する。


となるでしょう。


どんな仕事にも期限があります。(期限のない仕事は自慰行為です)


したがって完璧遅滞より拙速優先でなければいけません。


拙速の意味は、100点を狙うのではなく、80点を狙うということです。


②③④のような仕事をすれば、80点未満の仕事になります。


⑤を意識しないと、完璧遅滞となります。


そうならないためにも、①の仕事の重要度の把握こそが最も大切であるということでしょう。


せっかくここに拙速優先という言葉を出しましたので、小生が所長を務めている営業所で掲げている「わたくしたちの行動指針」を紹介しておきます。


わたくしたちの行動指針 

1.整理整頓かつ即今着手に努めましょう。
2.損得勘定より最善工夫に努めましょう。
3.完璧遅滞より拙速優先に努めましょう。
4.目標設定かつ技術向上に努めましょう。
5.諸縁に感謝、期待にそうよう努めましょう。


この行動指針は、小生がお世話になっている塚本惠昭さんのお力添えで、森信三先生の一番弟子である寺田一清先生に作成いただいたものです。


寺田先生直筆の行動指針を、営業所の入り口正面に額に入れて飾っております。(小生は毎朝、掃除の時間にこの額縁を磨いております)


仕事に迷ったとき、いつもこの指針に立ち返って行動できるようにと、毎朝、朝礼の冒頭に所員さん全員で唱和しております。



図1