【原文】
道を求むるには、懇切なるを要し、迫切(はくせつ)なるを要せず。懇切なれば深造し、迫切なれば助長す。深造は是れ誠にして、助長は是れ偽りなり。


【訳文】
道を求める態度は、熱心にやることが大切で、あせってはいけない。物事に熱心であれば、道の奥まできわめることができるが、あせってやれば、苗を助け長ぜしめることの害あるが如く、無理に事をすることになる。道の奥まで至ることは誠の道であり、助長(無理)することは正しくない偽りの道である。


【所感】
道を求めるには、丁寧に真心を込めることが必要であって、せっかちに急いではいけない。丁寧に真心をこめれば、奥深く道理に至り、せっかちに急げば自然の摂理に逆らって無理を強いることになる。奥深く道理に至るのは誠であって、無理を強いることは偽りである、と一斎先生は言います。


の章に出てくる「助長」という言葉は、現代の我々が使う意味とは違っています。


これは『孟子』公孫丑上篇にある言葉で、苗を早く成長させようと手で無理やり引っ張って伸ばすことで、かえって苗を枯らせてしまう、という逸話から取られた言葉です。


要するに、道を求めるのに近道などない、ということです。


書店に行きますと、「3分で○○になれる方法」といった本が山積みされているのを見かけます。


道に限らず、スポーツにおいても、勿論ビジネスにおいても、挫折と失敗を繰り返しながら成長していくのです。


森信三先生も、自分自身で実際に経験したことのみが、自分の身につくものだと言っています。


近道をするという行為は、自然の摂理、つまり大自然のルールに背くことになるのだ、ということをよく理解しておくべきです。


何事も丁寧に心を込めて取り組めば、かならず上達します。


ましてや人生を生き抜くとなれば、それは長くて険しい道を進むことに似ています。


小生は本日、朋友と共に岡崎城を訪ねてきました。


そこでかの有名な徳川家康公遺訓を目にして、あらためてその言葉の深さを噛みしめてきましたので、ここの再掲しておきます。


人の一生は重荷を負うて
遠き道を行くが如し
急ぐべからず
不自由を常と思えば不足なし
心に望み起らば
困窮したるときを思い出すべし     
堪忍は無事長久の基
怒りは敵と思え
勝つことばかり知りて
負けることを知らざれば
害その身に至る
己を責めて
人を責めるな
及ばざるは
過ぎたるより勝れり