【原文】
凡そ事を為すに、意気を以てするのみの者は、理に於いて毎(つね)に障碍(しょうがい)有り。


【訳文】
何事をするにしても、ただ意気(心持)だけでなす者は、道理の上からすると常に間違いがあるものである。


【所感】
何事を行うにも、意気込みだけで始める人は、道理から見れば常に危険と隣り合わせである、と一斎先生は言います。


学んだことを即実行に移せばよいというものではありません。


自分の置かれた立場や環境などを冷静に分析して、どのように進めるべきかを適切に判断しなければなりません。


これに関しては、以前にも紹介しました細井平洲先生の言葉が思い起こされます。


学思行相須(ま)って良と為す。


この言葉の意味は、学問と思索と実行が三つ揃ってこそ本当の学問である、という意味です。


新たに学んだ知識を、自分なりにしっかりと咀嚼し、しっかりと肚に落としてから実行に移す。


せっかく学んだ知識も、思索(咀嚼)を怠ると、一斎先生の言うように間違いを犯すことになるのでしょう。


小生が師事する永業塾の中村信仁さんは、この3つを 


学び・気づき・実践 


という言葉で、その大切さを語っています。


もちろん強い意気込みをもって事を始めることは大切ですが、いつも一歩下がった冷静さを忘れないためにも、思索するという時間をつくらねばなりません。