【原文】
人と事を共にするに、渠(かれ)は快事を担い、我れは苦事に任ぜば、事は苦なりと雖も、意は則ち快なり。我れは快事を担い、渠は苦事を任ぜば、事は快なりと雖も、意は則ち苦なり。


【訳文】
人と一緒に仕事をする場合には、彼が愉快な仕事にあたり、自分が苦しい仕事を引受けたならば、仕事は苦しいけれども心は愉快である。これとは反対に、自分が愉快な仕事にあたり、彼が苦しい仕事を引受けたならば、仕事は愉快であっても心は苦しい。


【所感】
人と一緒に仕事をする際、相手に愉快な仕事をやってもらい、自分は辛い仕事を引き受ければ、仕事自体は辛いかもしれないが心は愉快である。相手に辛い仕事を任せて、自分が楽しい仕事をすれば、仕事は楽しいかも知れないが、心は苦しくなるであろう、と一斎先生は言います。


自分の心を爽快に保つためのとっておきの秘訣が書かれています。


先日来の言葉を振り返ってまとめてみれば、


君子とは人を立てる人、小人とは己を立てる人


となるのではないでしょうか?


『論語』の言葉を見てみましょう。


【原文】      
仁者は難きを先にし獲(う)るを後にす、仁と謂(い)うべし。(雍也第六)


【訳文】
仁者は、困難な仕事を自ら進んで引き受け、その利益や恩恵は問題にしない、これを仁という。


【原文】
君子は諸(こ)れを己に求め、小人は諸れを人に求む。(衛霊公第十五)


【訳文】
立派な人は矢印を自分に向け、凡人は矢印を他人に向ける。


やはり『論語』にも利他の心を推奨した言葉が多くあります。


心爽快にして颯爽と生きるためには、少しだけ損をする生き方を選べばよいのでしょう。