【原文】
騎は登山に踣(たお)れずして、而も下阪に躓き、舟は逆浪に覆らずして、而も順風に漂う。凡そ患は易心(いしん)に生ず。慎まざる可からず。


【訳文】
人の乗った馬は、山を登って行く時にはたおれないで、かえって下り坂の時につまずくものであり、舟は逆巻く波にはひっくりかえらないで、かえって追風の際にさまようものである。だいたい、禍というものはあなどる心からして生ずるものである。慎まなければいけない。


【所感】
騎馬で山を登っていくときには倒れず、むしろ下り坂で躓くものであり、舟で行くときも、逆巻く波を受けているときは転覆しないが、順風のときにかえって波間にさまようものである。概して、容易だと侮る心から災いは生じるものである。慎まなければならない、と一斎先生は言います。


慣れや慢心ほど恐ろしいものはありません。


車に乗って事故を起こすのも、初心者マークが取れた直後が圧倒的に多いと聞いたことがあります。


これは要するに緊張感がなくなってしまうことに起因するのでしょう。


適度な緊張感を失うと何事もうまく運びません。


小生が師事する中村信仁さんは、こんなことを仰っていました。


いくつになっても緊張できる場面があることは、とてもありがたいことである。


では、どうしたら緊張感を保ち続けられるのでしょうか? 


小生が意識しているのは、いつまでも同じやり方や同じ考え方に固執せず、常に新しいことに取り組むことです。


小生の30年来の行動指針のひとつが、 


Somethin New(少しだけ新しいことを) 


です。 


Absolutely New (すべてを全く新しくする)を意識しようとすると、結局行動に躊躇することになります。 


もうひとつ小生が大事にしていることが、


Better Than Yesterday(昨日より成長する) 


です。


少しだけ新しいことにチャレンジして、昨日の自分より成長する。 


という意識があれば、慢心を払拭して、安全な航海ができるのではないでしょうか?