【原文】
世を避けて世に処するは、難きに似て易く、世に処して世を避くるは、易きに似て難し。


【訳文】
この俗世間(浮世)から逃れて世渡りするということは、難しいようであるが易しいものであり、俗世間の中にいてこの世から離れるということは、易しいようにみえて難しいものである。


【所感】
人間世界を避けて世事に対処するというのは、難しいようで実は容易なことであり、人間世界にまみれていながら世事から離れた心境でいるということは、簡単そうにみえて実は難しいものだ、と一斎先生は言います。


よく言われるように、「人」という字は、人と人が支えあうという意味の象形文字です。


つまり、人間というのは人間世界の中で他人と付き合いながら生きていかねばならない生き物なのです。


しかし、森信三先生が「一切の悩みは比較から生じる」と喝破しているように、人と人の間で暮らす限り、多くの悩みを抱えて生きねばなりません。


一方、隠者あるいは浮浪者のように世を捨てて生きることは、生計を立てるという上においては大変でしょうが、人間関係の悩みを抱えることはないでしょう。


小生は新卒から現在に至るまでずっと組織人として仕事をしています。


被雇用者ですので、自分の思いが経営者に伝わらずに切ない想いをすることも多々あります。


あるいは、私の言葉が自分の意思とは違う形で後輩の心に突き刺さり、辛い想いをさせてしまうこともあります。


それでも後輩達の育成をサポートして、彼らが立派な営業マンへと成長していくのをみることが何よりの喜びです。


一斎先生の言うように、世事から一定の距離をおいた心境でいるというのはとても難しいことですが、人間学を学び続けて、世間にまみれながら一個の自分を失わない生き方を貫きます。