【原文】
人、智略有る者、或いは藝無く、藝有る者、或いは智略無し。智略は心に在りて藝能は身に在り。之を兼ぬる者は少なし。


【訳文】
優れた計画を持っている人には芸の能力が乏しく、芸の能力のある人には才智ある計画が無い。智略というものは心にあるが、芸能は身体にある。この智略と芸能を兼ねる人は少ない。


【所感】
才智に富んだ謀をめぐらす人は意外と技芸がなく、技芸をもつ人は意外と謀をめぐらせることができない。智略は心に存するものだが、技芸は身体に存する。智略と芸の両方を有している人は少ないものだ、と一斎先生は言います。


ビジネスの基本として、PDCAのサイクルを回す、というものがあることは皆さんもご存じでしょう。


念のために、記載しておくと、


P(PLAN:計画) D(DO:実行) C(CHECK:検証) A(ACTION:改善策実施)
という4つの段階を何度も何度も継続していくことです。


これに関して、若い営業社員さん(新卒から5年生くらい)を見ていると、ふたつの傾向があります。


タイプA:物怖じせず、どんどん積極的にチャレンジするが、計画を立てて実行することが苦手なタイプ

タイプB:慎重に計画を立て過ぎて、行動に移すのが苦手なタイプ 


営業の世界で実績を上げるのは、どちらかといえばタイプAです。


小生は研修やOJTの場面で、若い営業マンには、


DCAでも構わないから、行動することを重視して、多くのミスをし、そこから学べばよい 


と伝えます。


行動を通して経験を蓄積することで、計画や準備をする必要性に自然に気づくはずだ、という考え方です。 


この章でいえば、まずは芸を磨き、その経験を通して智略を磨くというスタンスでしょうか。


理想的な仕事のステップは、


夢を持つ → 心を磨く → 技を磨く 


となることは重々承知しています。


しかし、夢を持たないまま入社してくる若者が多い現代においては、「夢を持て」という前に、「まず目の前にある仕事を通して技を磨け」と指導することは、けっして誤りではないと確信しています。


技芸を磨き続けて行けば、中堅社員と為る頃には智略も身につき、将来リーダーとなった際に、しっかりとPDCAのサイクルを回すことができるようになるはずです。