【原文】
百工は各々工夫を著(つ)けて以て其の事を成す。故に其の為す所、往往前人に超越する者有り。独り我が儒は、今人多く古人に及ばず。抑(そもそも)何ぞや。蓋し徒らに旧式に泥みて、自得する能わざるを以てのみ。能く百工に愧じざらんや。


【訳文】
いろいろな職の人々は、それぞれ工夫をして仕事をしている。それで、そのなす所のものが、時折り先輩よりも勝ったものを作ることがある。ただわが儒者だけが、今の者はたいてい古人に及ばないのは、一体どういうわけであろうか。思うに、ただ徒らに旧来の形式に拘泥して、聖賢の道を自ら会得することができないからなのだ。儒者たるものは、百工に恥ずかしくないだろうか。


【所感】
様々な職種の職人は仕事において工夫を加えている。それゆえに、その仕事は得てして先人の仕事を超える者が出てくる。ところがわが儒者といえば、今の儒者は多くが古人に及ばない。それはなぜだろうか? 私が思うには、徒に古い形式に拘りすぎて、自ら会得することができていないからであろう。職人と比較して恥ずかしく思わねばならない、と一斎先生は言います。


これは、一斎先生の若き同朋への激励の言葉でしょう。


どんな職種においても、後輩が先輩を追い越していくようでなければ、その仕事は衰退するのみです。


常に、フレッシュな発想で、新たなチャレンジを続けていくことこそ、若い人に課せられた使命なのです。


そのためには、まず我々のようなロートルが、保守的な思考を捨てて、大胆に若手に任せていくという決断が必要になります。


昔はこうだったと自慢話をするのではなく、これからこうなって欲しいというビジョンを語り、そのビジョン実現を後輩に托すのです。


たとえば、小生が務めているのは、医療機器商社です。


商社が担う大きな役割のひとつは物流ですが、すでにアマゾンが多くの業界の物流に食い込み、業態の破壊が進行しています。


町の本屋さんが消えているのは、その典型でしょう。


早晩、医療機器の物流も大手物流企業に握られることになるでしょう。


その中で、なにを柱に生き残りを図るのかを、将来を担う若い人にも真剣に考えてもらわねばなりません。


そのとき重要なことが、温故知新なのです。


そもそも自分の会社はなぜ生まれたのか、どのようなお客様に支えられて成長してきたのか、などをもう一度しっかりと振り返るべきです。


そして、そこから新しい進む道を見つけていくのです。


つまり、超保守もダメですが、超革新もダメだということです。


故(ふる)きを温(あたた)めて新しきを知る 


どの職種においても、もう一度、この発想からスタートすべきであることに変わりはないはずです。