【原文】
人君たる者は、臣無きを患うること莫く、宜しく君無きを患うべし。即ち君徳なり。人臣たる者は、君無きを患うること莫く、宜しく臣無きを患うべし。即ち臣道なり。


【訳文】
人君たる者は、賢臣のおらないことを心配せずに、明君のおらないことを心配するがよい。これが人君の徳というものである。臣下たる者は、明君のおらないことを心配せずに、賢臣のおらないことを心配するがよい。これが臣下としての道である。


【所感】
人の上に立つ者は、優秀な部下がいないことを憂うのではなく、自分自身が明君でないことを憂うべきである。それが君主の徳である。また、部下として働く者は、立派な上司がいないことを憂うのではなく、自分自身が優秀な部下となっていないことを憂うべきである。それが部下としての道である、と一斎先生は言います。


つねに、矢印を他人に向けず、自分に向けよ、というメッセージです。


リーダーがつねに意識すべきは、今いるメンバーがベストメンバーであるということです。


つまり、結果がでないのはメンバーの責任ではなく、その責任はすべてリーダーにあるということです。


メンバーに責任を転嫁しているうちは、メンバーを入れ替えたところで結果は大して変わらないでしょう。


一方、部下の立場にある人も、組織の問題をリーダーの責任だと決めつけていては成長がありません。


先日も記載したように、リーダーの置かれた環境や心境を忖度して、自分のできるベストを尽くせるかどうかが重要です。


「忠」という言葉は、現在では忠誠心とイコールと捉えられていますが、本来は、自分のベストを尽くすことを意味しています。


ベストを尽くしていない人に限って、上長や組織に不平不満を漏らすのではないでしょうか?


結局、どんな状況にあろうとも、矢印を自分に向けられる人だけが結果を出し続けることができるのです。