【原文】
訴訟には、既に其の言色に就きて以て其の心を視聴すれば、則ち我れ当に先ず平意公心を以て待つべし。急心なるは不可なり。倦心なるは不可なり。愛憎の心は尤も不可なり。


【訳文】
訴え事を裁くには、その言葉や顔つきによって心の中を観て裁くのであれば、自分はまず平静で公平な気持で対処しなければいけない。いらいらした落ちつかない心持で対処することはよくないし、またいやな心持で対処することもよくない。好き嫌いのある心持は最もよくない。


【所感】
訴え事において、人の言葉と顔つきを観察しながら心を視聴するのであれば、まず自分の気持ちを平静で公平にして対処しなければならない。急ぐ気持ちがあるのはよくないことである。またいやいや対応するのもよろしくない。好き嫌いで対応するのは最もよろしくないことだ、と一斎先生は言います。


本章については、クレーム対応に置き換えて読んでみます。


小生も、前職および現職において、製品クレームあるいは部下である社員さんのミスによるクレームの謝罪のために、お客様を訪問したことは多々あります。


クレームに臨む前の心構えとしては、まさに「冷静かつ公平」を意識してきました。


基本的なスタンスとしては、「お客様のいうことは正しい」と考え、冷静かつ公平にお客様のお話に耳を傾けます。


その際、トラブル解消を急がず、まずは誠意をもって話を聴く姿勢が重要です。


「いや、ちがいます」、「そんなことはありません」といった否定の言葉を使わずに、「おっしゃるとおりですね」といった肯定の言葉で共感を示しながら、徹底的に話に耳を傾けるのです。


もちろん、クレーム対応が嫌だとか面倒だとか、あるいは、あのお客様は苦手だといった意識はもちません。


お客様の怒りというのは、第二感情ですから、あえて怒りを鎮めようとするのではなく、怒りに変わる前の第一感情に寄り添うのです。


たとえば、納品を楽しみにしていた器械が届いて、いざ使ってみたら壊れていたという場合。 


お客様は、ワクワクした気持ちから一転して、「残念だ」・「がっかりした」という気持ちに変わります。


この「残念」・「がっかり」という感情に対して、共感のメッセージを発します。


そして、お客様の気持ちが落ち着いてきたら、今後の対応策をすぐに協議の上、決定するのです。


このステップで対応すれば、ほとんどのクレームは解決できます。


クレーム対応とは、単なる苦情処理ではなく、せっかくご縁ができたお客様の嘆きや悲しみを取り除くことなのです。


適切で的確な対応ができれば、そのお客様との関係はより強固になります。


まさに、雨降って地固まるのです。


クレーム対応から逃げていては、永遠にお客様の信頼を得ることはできません。