【原文】
郡官たる者は、百姓(ひゃくせい)を視ること児孫の如く、父老を視ること兄弟の如く、鰥寡(かんか)を視ることなく家人の如く、傍隣の郡県を視ること族属婚友の如く、己は則ち勤倹を以て之を率い、耑(もっぱ)ら臥治(がじ)を以て旨と為せば可なり。


【訳文】
郡の長たる者は、郡の人民を子や孫のようにかわいがり、年老いた者を兄弟のように助け合い、独り者の男女を家族と同じように扱い、隣の郡県とは同族・親族・友人などのように仲よく交わり、自分は勤勉倹約を旨として郡民を統率し、もっぱら政治を簡略にして成果をあげることを趣旨とするがよい。


【所感】
組織のリーダーは、部下である社員さんに対しては子供や孫を育てるように接し、自分より目上の社員さんには兄弟のように接し、特にベテランかつ独身の社員さんに対しては家族のように労わり、隣の組織に対しては親族か友人のように接する。その上で、リーダー自身は自分が目立たないように心掛けてメンバーの背中を押し、マネジメントについては、なるべくシンプルにすることを心掛ける、と一斎先生は言います。


営業2課の神坂課長は、いつものように、先輩でありながら役職上は部下にあたる山田さんを厳しく叱責しています。


「山田さん、何度同じことを言えば理解してくれるんですか? いい加減にしてくださいよ!! 今月もこのままではね、また1課に売上で負けてしまうんですよ。3ヶ月連続ですよ!!」


人の良い山田さんは、ただ神妙に神坂課長の叱責に対して頭を下げています。


それを悲しい目で見ているのが、同じ2課の若手社員本田さんと1課の廣田さんです。


実は、廣田さんは今月見込んでいた大きな商談を失注してしまったのです。


廣田さんが、その件を同期の本田さんに相談していたところ、その話を聞いていた山田さんが自分の商談を廣田さんに回してあげたようです。


そのお陰で、廣田さんはなんとか今月の計画をクリアでき、営業1課も計画を達成しました。


しかし、売上を譲ってしまった山田さんだけは、計画を達成できませんでした。


でも、本田さんと新人の石崎君の頑張りで、営業2課の今月の目標はクリアしているようなのです。


さて、神坂課長の叱責はかれこれ30分以上続いています。


そんなとき、佐藤部長が部長室から出てきました。


「神坂君、山田君は君の部下かも知れないが、先輩だろう? 先輩社員さんには、弟が兄に接するようにするとよいと一斎先生は言っているよ。それに、2課の目標は達成してるんだろう?」 


「部長、それはそうですが、山田さんがもう少し頑張ってくれれば、1課に負けないで済んだんです。」


「1課も2課も同じ営業部だろう。隣の組織とは、親族や友人のように接するとよいと一斎先生は言っているよ。我々の敵は、同業のY社ではないのかな?」


「それはそうですが・・・」


「敵は社内にはいないよ。Y社に勝つために何をすべきか。マネジメントは、シンプルに・・・」


神坂課長は、佐藤部長の言葉を遮って言いました。


「と、一斎先生は言っているのですね?」


「そのとおり!」


いつも佐藤一斎先生の言葉を引き合いに出す佐藤部長の前で、神坂課長は不満な表情を露にして、しぶしぶ叱責をやめました。


佐藤部長は、山田さんの肩をポンと叩き、本田君と廣田君にウインクをして部長室に戻っていったそうです。



編集後記 

今回、小生が師事する方のアドバイスを頂戴して、今までとは違うパターンで「一日一斎」を書いてみました。

もちろん、まだまだ未完成であり、当面試行錯誤を続けます。

毎回とはいかないかも知れませんが、今後はストーリー仕立ての「一日一斎」をお届けします。

登場人物のキャラクターについては、おいおいご紹介していきますが、いつもガミガミ叱っているパワハラ課長の神坂さんに、小生が共感するのは言うまでもありません。

今後の神坂課長の成長に期待したいところです。