【原文】
道理は往くとして然らざるは無し。敬の一字は固と修身の工夫なり。養生の訣(けつ)も亦一箇の敬に帰す。


【訳文】
物事の道理というものは、どこへ行っても(古今東西)一つで変わるものではない。敬という字は、元来身を修める工夫であるが、暴飲暴食を慎むという保健衛生的なことでもあって、生命を養う肝要な秘訣もまた、敬の一字に帰する。


【所感】
物事の道理というものは、どこへ行こうとも変わることのないものである。「敬」という文字は元来、自分の身を修めるための工夫を指す言葉であるが、摂生をする秘訣もまさにこの「敬」に帰するのだ、と一斎先生は言います。


「おいおい、雑賀君、ちょっと食べすぎじゃないの?」


「なに言ってるんですか、神坂課長。私はまだ20代ですよ。どんどん食べて、どんどん働かないと!」


「ブッ」


「どうした大累、突然吹き出して」


「いや、まさか雑賀の口から『どんどん働く』なんてフレーズが出てくるとは思わなかったもので」


今日は、営業部の新年会のようです。


「大累課長、ひどいなぁ。私はいつだって全力投球ですよ」


「神坂さん、あいつ殴ってくださいよ」


「なんで俺が殴るんだよ!」


「そういうのは神坂さんの専売特許じゃないですか」


「大累、俺はお前を殴りたい!」


「どうぞ、どうぞ。その時はパワハラで訴えますから。(笑)」


営業部のメンバーは皆さん、楽しそうです。


「いや、確かに、雑賀君はちょっと太りすぎじゃないか?」


「佐藤部長、言ってやってください。あいつは、私の指示なんか、最初から聞く気がないんですから」


「大累、それは君の修養が足りないんじゃないか? ねぇ、部長」


「陰で『カミサマ』とか呼ばれてる人に言われたくないですよ!」


「いや、神坂君の言うことにも一理はあるな」


「ええ?部長! まさかカミサマの肩を持つんですか!」


「誰がカミサマや!! やっぱり、お前を殴りたい!」


「私は、しっかり本も読んでますし、人間力も高めようと日々努力しているんですけど、大累課長はそこをわかってくれないんですよねぇ」
雑賀君の口はなめらかです。


「神坂さん、殴ってくださいよ!!」
大累課長が神坂課長の耳元でささやきます。


「俺はカミサマだからな、暴力には反対だ」


「ただねぇ、雑賀君。私が日頃から修養が大切だと言っているのは、学習の面だけを言っているわけじゃないんだ」
佐藤部長が今までとは違う真面目なトーンで話し出しました。


大累課長が大きくうなづきます。


「一斎先生はね、慎ましい食生活で健康面に留意することもまた修養だと言ってるんだよ」


「そうなんですか?」


「雑賀君はまだ若いから、理解するのは難しいかもしれないけど、暴飲暴食は将来必ず身体を悪くするからね。そうなったら、どんどん働こうと思っても働けなくなるよ」


「たしかに、そのとおりだよ。それに、考えてごらん。一流の営業人にあんまり太った人はいない気がしないか?」


「一流の営業人か・・・」
どうやら雑賀君の心に言葉が届いたようです。


「ん? でも、神坂課長もそんなにスリムではないような気がしますが・・・」
やっぱりひと言多いのが雑賀君です。


「カミサマ、鉄拳の時は今ですよ!」
大累課長の悪魔のささやきです。


「ゴン!」


「痛てぇ、なんで俺を殴るんですか」


「先輩に対する敬意が足りない後輩への、カミサマからの愛の制裁だよ。大累君!」


「訴えてやる!!」


「カミサマを訴える奴がどこにいるんだ?


編集後記 

昨年(2017年)6月に健康診断を受け、メタボ予備軍の診断を受けた小生は、メタボ改善プログラムを設定してもらいました。

その時の体重が80kg、そこから3kg落としましょう、という指導を受けたのです。

ちょうど、昨日、プログラムを設定してくれた看護師さんから電話があり、結果を報告しました。

結果は、82kg!

3kg減量するどころか、2kg増量しておりました・・・。

「今後も継続して取り組みますか?」という看護師さんの優しい質問には、「もちろんです!」と元気に即答しておきましたが。。。

孔子は、『論語』のなかで、「君子(立派な人)は、飽食を求めない」と言っています。(※)

このタイミングで本章に当たるということは、摂生しなさいよ!という小生へのカミサマからのメッセージなのでしょうか?

※ 【原文】子曰わく、君子は食飽くを求むること無く、居安きを求むること無し。(学而第一)
  【訳文】先師が言われた。「学問修行に志す人は、飽食を求めない。家で安閑とすることを求めない」(伊與田覺先生訳)


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