【原文】
老を養うに酒を用いるは、醴酒(れいしゅ)若しくは濁醪(だくろう)を以て佳と為す。醇酒(じゅんしゅ)は烈に過ぎて、老軀(ろうく)の宜しきに非ず。〔『言志耋録』第311条〕
【訳文】
老後を安楽にするために酒を用いる場合には、甘味の酒かどぶろくがよい。濃い良い酒は強過ぎるので、老人の体には適していない。
【所感】
年をとった人の養生にお酒を用いるときは、甘酒の類かにごり酒が良い。日本古来の製法で醸造したお酒は、身体への影響も大きいので、老体には控えた方がよいであろう、と一斎先生は言います。
今日の神坂課長は、相原会長、営業部の佐藤部長と3人で小料理屋「ちさと」にいるようです。
「お酒はぬるめの燗がいい、肴はあぶったイカでいい~」
「会長、なんですか、その歌?」
「え、神坂君、知らないの? 八代亜紀の『舟唄』だよ」
「ははは、会長。『舟唄』は1979年のヒット曲ですから、神坂君が知らないのも当然ですよ」
「1979年といったら、私はまだ2歳ですよ!」
「えー、神坂君ってそんなに若いのか!」
「それ、どういう意味です? 老けてるってことですか!」
「いや、違う、違う。小生意気な割りに意外と若いなっていう意味」
「相変わらずストレートですね」
「君に言われたくないよ!」
「まあまあ、お二人の掛け合い漫才もそのくらいにしていただいて。さあ、会長。次は何を飲みますか?」
「本当は、辛口のキツイやつを熱燗でキューっといきたいんだけどね。それやっちゃうと、翌日が辛いんだよな。佐藤君、一斎先生からのアドバイスはないの?」
「実は、あるんです。『老人の養生に酒を用いる場合は、甘酒の類かにごり酒が良い。醇酒と言われれる日本古来の力強い酒は年老いた身体には良くない』とあります」
「やっぱりそうだよな。だけど甘酒やどぶろくは嫌だなぁ」
「あら、相原さん。それなら良いお酒がありますよ」
「お、ママ、流石! どんなお酒なの?」
「最近、若い人には、アルコール度数の低い日本酒が人気なの」
「それだと物足りないんじゃない?」
「そういう人のためのお酒がコレ」
ちさとママが酒瓶を相原会長に手渡しました。
「『加茂金秀 特別純米13』? ママ、これはどんなお酒なの?」
「このお酒はね、アルコール度数13度の原酒なの。原酒でアルコール度数を低くするのは、とても難しいことらしいの」
「通常の日本酒のアルコール度数は15~16度、原酒だと17~18度くらいですよね」と佐藤部長。
「さすがに佐藤君は酒に精しいね。そういうものなのか。でお味は?」
相原会長は興味津々です。
「どうぞ。飲んでみてください」
3人とも加茂金秀 特別純米13をグラスに注いでもらったようです。
「おーっ、全然物足りなさはないな」
相原会長はご満悦です。
「ワインのような甘みと、日本酒独特の旨みが見事に調和していますね」
佐藤部長も驚いています。
「たしかに、これなら違和感はないなぁ」
神坂課長も納得のようです。
「これはいいねぇ。いつもの酒よりは身体に優しいはずだしなぁ」
「このお酒は、広島の金光酒造さんの自信作らしいの。相原さん、特別に1本お分けしましょうか?」
「え、うれしいね。ママ、ありがとう」
「会長、家で飲みすぎないようにしてくださいよ」
「ひとり酒 手酌酒 演歌を聞きながら~」
「会長、なんですか、その歌?」
「えっ、神坂君、知らないの? 吉幾三の『酒よ』じゃないか!」
「私のカラオケの十八番でもあります」
「おお、佐藤君も『酒よ』が好きか! いい歌だよなぁ。何度聞いても心に沁みる」
「どうせ、それも古い歌なんでしょう?」
「『酒よ』は1988年の大ヒット曲だよ」
「やっぱり。1988年だと、私はまだ11歳ですよ」
「えっ、神坂君ってそんなに若かったの?」
「はい、まだ40歳になったばかりです!」
「君、小生意気な割りに意外と若いんだなぁ」
「それさっきも聞きましたわ。もうやめさせてもらうわ!」
「お二人は、本当に名コンビね!」
ひとりごと
正直に言いまして、この章句の物語づくりには苦労しました。
というのも、小生は下戸で、お酒の知識がまったくありません。
そこで、大好きな歌と漫才のネタを盛り込んでみました。
ところで、もしお酒が飲めるなら、ここで取り上げた金光酒造さんの『加茂金秀 特別純米13』は実際に飲んでみたいですね。
ただ、アルコール度数が低いといっても13度ですから、小生はとても手が出せません。
お酒が好きな方はぜひお取り寄せしてみてはいかがでしょうか?
『加茂金秀 特別純米13』 はせがわ酒店オンライン店より
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