今日は、営業部メンバー全員が集まり営業会議が開催されているようです。


「O社さんの内視鏡に関しては、F社さんの攻勢でかなり数字が落ち込んでいるね」
佐藤部長です。


「シェアを確保するために、O社さんもかなり思い切った価格策を打ってきていますので、仮に売れたとしても、前期に比べて売上単価も粗利も下がってきていますね」
新美課長が発言しました。


「今期は開業案件や大型機器のリプレイス(更新)も少なく、特販課の見通しも計画を大きく下回る見込みです」
大累課長からも厳しい見通しが出されました。


「疾患が減っているわけでもないのに、当社の数字が落ちるということは、お客様である医療機関の課題解決に貢献できていないということだよな。目に見えている問題の解決策を打つだけでは、価格競合に巻き込まれるだけだ。やはり未来を見越した新たな機会に目を向けないといけないんだろうな」


「神坂君の言うとおりだ。上期はあと2ヶ月しかない。正直に言って上期計画をクリアするのはかなり厳しいだろう。もちろん各課、各自には最善を尽くしてほしいが、年間での達成を視野に入れた活動をお願いしたい」


佐藤部長の言葉で、会議はお開きになったようです。


そのまま佐藤部長と3人の課長は夕食を共にすることになったようです。


「部長、いま『季節の味 ちさと』に電話したら、個室が空いていたので押さえました」


「神坂君、ありがとう」


四人は仕事を終え、19:30に『ちさと』に集合したようです。


「ここまで見通しが悪いのは、創業以来初めてなんじゃないですかね?」


「大累さんもそう感じますか? 何かがズレ始めているんですかね?」


「会議の中で、神坂さんは『機会』に目を向けるべきだと言っていましたね。我々がお役に立てる機会とは何なんでしょう?」


「大累、そこだよ。俺も偉そうなことを言ったけど、その『機会』が何かが見えていないんだよ」


「我々は今まで疾患を中心においたディジーズ・マネジメントで貢献してきましたよね。しかし、これからはそこじゃないのかな?」
大累課長も首を傾げています。


「ひとつ言えることは、国が何にお金を投資しているかを把握することだよね。6月末に出された『未来投資戦略2018』の中では、重点分野である医療への投資は大きく取り上げられているよね」


「さすがは部長だな。私はその辺の情報に疎いんですよね」
神坂課長が関心しています。


「今、日本の医療の問題点のひとつは、健康寿命と平均寿命(*参照)との乖離が10歳近くあることだ。国はこの乖離を埋めるためにお金を使うと言っているんだよ」


「なるほど、それがうまく行けば、高齢者の医療費を抑えることができるわけですね」


「そのとおり。その中でキーワードとなっているのは、ICT、AI、ロボットといった分野になる。我々はICTやAIが医療に貢献する機会をいち早く見つけていく必要があるだろうね」


「佐藤一斎先生が生きていたら、どんなアドバイスをくれるんだろうな、聞いてみたいなぁ」


「神坂さんらしくない発言ですね。カミサマが神頼みなんて洒落になりませんよ!」


「やかましいわ! 俺だって弱気になるときもあるんだよ。最近は時間があれば読書をしているんだけど、孔子も一斎先生も今はこの世にいないからね」


「神坂君、もちろん昔の偉人は今はこの世にいないけど、素晴らしい言葉と共に誠の精神を残してくれているじゃないか。本を読むときに、言葉だけに目を向けるのでは読み込みが足りないよ。その言葉の裏にある誠を掴み取らないとね」


「言葉の裏にある誠か」


「なぜ、その人はその言葉を発したのかの背景を知ると、その言葉が俄然魂を宿すんだ。それによって読者である我々も大いに発奮しなければいけないんだろうね」


「なるほど。昔の偉人が厳しい状況を打開してきたときの言葉と精神を読み取るべきなんですね。もっとリアリティをもって本と取り組まないと駄目だなぁ」


「当社が貢献できる新たな機会は何かを見つけるのは、我々マネジャーの仕事だろう。特にICTやAIとの関連で各自調査をしてもらえないかな?」


「はい」


*健康寿命:元気な生活ができなくなる年齢(要介護となる年齢)
 平均寿命:死亡時の年齢


ひとりごと 

本当の読書というのは、本で得た知識を実際の生活や仕事に活かすことができる読書です。

知識をひけらかすために本を読むことは、何の意味もありません。(といいながら、自分を戒めているわけですが・・・)

特に『論語』を読んでいると思うのですが、言葉の背景を読まないと、言葉の意味がまったく変わってきてしまいます。

この言葉は誰に向けて発した言葉なのか、周囲にはどんな人物がいたのか、などを予測して読むと状況がリアルに見えてきて、自分の現況と重ねて読むことができるようになります。

言葉の背景を読む読書をしましょう。

ところで、ここで取り上げた『未来投資戦略2018』ですが、国が何にお金を投資するかを明確にしたもので、大変重要なテーマなはずです。

ところが、こういう内容は『報道ステーション等の報道番組で取り上げられることは稀です。

モリカケ問題や裏口入試問題ばかりを取り上げるマスコミの姿勢は大いに問題ではないでしょうか?


原文】
吾れ書を読むに方(あた)り、一たび古昔聖賢豪傑の体魄(たいはく)皆死するを想えば、則ち首(かしら)を俯して感愴(かんそう)し、一たび聖賢豪傑の精神尚お存するを想えば、則ち眼を開きて憤興(ふんこう)す。〔『言志録』第142条〕


【意訳】
私は書を読む際に、昔の聖人・賢人・豪傑と呼ばれた人たちの体も魂も今はこの世にないことを思うと、うなだれて悲しい気持ちになるが、その精神は今もまったく衰えずに存在していることを思うと、目を見開いて発奮興起するものだ。


【ビジネス的解釈】
多くの名言・至言を残した偉人たちはすでにこの世にはいない。それは悲しく残念ではあるが、言葉とともにその人の誠の精神は未だに生きている。それを汲み取り、次の世代へ引き継いでいくのが我々の使命である。


book_gijutsusyo_it_set