朝早く出社した神坂課長は、デスクで新聞を広げています。


「今年になって特に天災が増えた気がするな。人類は万物の長だなんて言うけど、それは驕りに過ぎないんだろうな」


「本当だよね。私は北海道にも関西にも友人がたくさんいるので、何人か確認をとって、皆無事なことは確認したんだ。でも、停電状態が続いているようだし、水や食料の供給も不足している地域もあるようで、それが心配だね」
佐藤部長もそばに座っているようです。


「職業柄、北海道や関西の病院がどうなっているのか、患者さんは大丈夫なのかが気になりますね」


「基本的には病院は自家発電の設備を有しているとは思うけど、あまり長く続くとそれもねぇ」


「ただ、こういうときに電力会社をはじめとする公共事業の業者さんや警察・消防・自衛隊の人たちの迅速な行動には頭が下がりますね」


「まさに不眠不休で働いてくれているからね。そういう人の中には自分自身も被災者であるという人も結構いるようだしね」


「それこそが『義』だよなぁ」


「全くその通りだね」


「それにしても、この天変地異は我々にどんな警鐘を鳴らしているんでしょうね?」


「さっき神坂君が人間の驕りだと言っていたけど、それを知らしめているのかもね」


「所詮、天変地異の前には人間は無力だということを思い知らされます」


「しかし、別の見方をしてみると、太陽や月、雨や風や雷、あるいは山や川や渓谷などは、それぞれが必要に応じて自分の果たすべき役割を果たしていて、それを天地がすべて適切にマネジメントしているとも見ることができる。つまり、天地はリーダーに見立てることができるんだよね」


「なるほど」


「ところが、太陽にしても、雨や風や雷にしても個性派ぞろいだ。リーダーに確固とした覚悟がないとなかなかマネジメントしきれない。私もかつて雷をコントロールするのに苦労をしたのを思い出すよ」


「もしかして、その雷って・・・」


「誰だっけなぁ」


「嫌味な言い方ですね。ストレートに言ってくださいよ、私だって」


そのとき横から石崎君が口を挟んだようです。


「佐藤部長、それは雷ではなくて、風じゃないですか? 神風ですよ!」


「こらっ、ガキ! 上司の話し合いを盗み聞きするな!」


「だって声がデカいから全部聞こえるんですよ!」


「うるさいガキは無視するに限るな。まあ、私が言うのもなんですが、今から10年前のウチの会社は超個性派が集まっていましたからね」


「神坂君を筆頭にね! そのときに学んだ大切なことは、各々の個性を消さないということだな。人間には誰にだって長所と短所がある。その長所と短所を合算して人物を判定するのではなく、長所だけをみて、いかにその長所を伸ばし、会社に貢献してもらうかを考えることが大切だ、ということを学んだよ」


「私はどちらかというと人の短所に目がいきやすい性質(たち)ですから、その点は気をつけないといけないですね」


「いわゆる良い所探しをするとか、リフレーミングをしてみるとか、鍛錬をすることで少しずつ改善できるよ。私がそうしてきたようにね!」


「リフレーミングって何ですか?」


「たとえば、口数の少ない営業マンを見たら、しゃべらなければ営業はできないと考えるのではなく、相手の話をしっかり聞ける営業マンだと捉えなおしてみるといったことだね。欠点と思われることを逆の見方をして長所にしてしまうモノの見方を言うんだよ」


「なるほど。石崎は背が低いから子供に見られて商売上不利だと考えるのではなく、クレームのときも子供だと思って許してもらえるかも知れないと考えればいいんだな」


「神坂課長、それは違うと思いますよ。ねぇ、佐藤部長」


「そ、そうだね。リフレーミングには鍛錬が必要だからね。神坂君も今日からやってみてよ」


「はい。でも難しいなぁ」


「課長、簡単ですよ。課長は勉強不足で学が足りないと考えるのではなく、まだ空っぽだからこれからいくらでも吸収できる、という風に考えればいいんですよ」


「なるほどな。て、てめぇ! 上司に対して学が足りないとはなんだ!」


「私も鰻を奢ってくださいよ。そうしたらもっと褒めてあげるのに!」


「やかましいわ! だったら、お前も善久みたいに上手にお世辞を言え!」


ひとりごと 

先日の西日本豪雨、そして4日の台風21号、さらに昨日6日の平成30年北海道胆振東部地震と災害が相次いでいます。

その都度、多くの貴い命が奪われていきます。

こうした事実を目の前にすると、天変地異に対する人間の無力さを思い知らされます。

一刻も早くライフラインが復旧することを祈るしかありません。


原文】
吾れ俯仰して之を観察すれば、 日月は昭然として明を掲げ、 星辰は燦然として文を列し、 春風は和燠(わいく)にして化を宣べ、 雨露は膏沢して物に洽(あまね)く、 霜雪は気凛然として粛に、 雷霆は威嚇然として震い、 山岳は安静にして遷らず、 河海は弘量にして能く納れ、 谿壑(けいがく)は深くして測る可からず。 原野は広くして隠す所無く、 而も元気は生生して息まず。 其の間に斡旋す。 凡そ此れ皆天地の一大政事にして、 謂わゆる天道の至教なり。 風雨霜露も教に非ざる無き者、 人君最も宜しく此れを体すべし。〔『言志録』第171条〕


【意訳】
俯仰して観察してみると、日月は明るく照らし、星は燦然として輝き、春の風は万物を化育し、雨露は万物を潤し、霜や雪は凛として厳しく、雷は威嚇するかのように奮い、山岳はどっしりとして動かず、河川や海は広大にして物を受け容れ、渓谷は深くして測り尽せず、原野は広く隠す所がなく、天地の気は活き活きとしてそれらを結び付けている。これはすべて天地の大きな政事であって、天の道の至大なる教えである、風雨や霜や露もすべて教えでないものはなく、人君たる者は、このことを正しく体得しなければならない


【ビジネス的解釈】
太陽・月・星、風・雨・露、雷、山岳・河川・渓谷・原野、これらはそれぞれが個性と自身の役割を果たしながら、天地がそれを束ね、すべてが一体となってこの地球をつくりあげている。リーダーは天地を観察し、これをマネジメントに応用しなければならない。


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