J医療器械では、半期決算に向けて最後の追い込みに入っているようです。


今日は営業2課で朝のミーティングが開かれています。


「ここに来て消耗品の売り上げが伸び悩んでいるな」
神坂課長が懸念を示します。


「O社さんの売れ筋のガイドワイヤーの出荷止めが痛いですよね」
本田さんが応えます。


「それにB社さんの新製品がタイミングよく発売されて、高評価なのも数字に効いています。私の担当のO市民病院でも現在サンプリング中で、このままだと切り替えられる可能性があります」
山田さんも浮かない顔をしています。


「そうだね。しかし、今までO社のガイドワイヤーは長い間トップシェアを保ってきた。我々が忘れてはいけないのは、製品にはライフサイクルがあるということだ」



「確かにそうですね」
メンバー全員がうなずいています。


「そろそろO社のガイドワイヤーもトップを譲り渡す時期が来たということだろう。製品に限らず、どんなことでも変化せずに一定であり続けるなんてことはないからね。良いときがあれば、必ず悪いときもある」


「・・・」


「ただね、私はこう思う。良いときの後に必ず悪いときが来るわけではないとね。人はみんな良いときにはついつい浮かれたり、慢心してやるべきことを怠ったり、やらなくてよいことをやったりしてしまう。それが悪いことを引き寄せるんだ」


「なるほど」
善久君がメモをしながらうなずきました。


「この前、車でラジオを聴いていたら、ラジオのパーソナリティが『良いことの後にはもっと良いことがある』と言っていた。ポジティブだなぁと思ったが、たしかにそう考えて、良いときにこそ自分のやるべきことを徹底すれば、少なくとも状況がすぐに悪くなることはないだろう」


「我々は常にO社さんに頼り過ぎているんでしょうね。O社さんがヒット商品を出せないと売り上げが低迷してしまう」
本田さんの言葉です。


「そうなんだ。我々は医療器械の総合商社であって、O社さんの子会社ではない。もちろん、O社と連携していくことに変わりはないが、一方で他のメーカーさんとも良い関係を築き、売上のバランスをとる必要があるんだよ」


「そうですね」


「先日から『易経』という本を読み始めたんだ。私には難し過ぎる本なんだけど、その解説には、世の中はすべて陰と陽で出来ている。すべてのものは、陰から陽へと変化し、陽から陰へと変化する、と書いてあった。今話をしていて、そのことが頭に浮かんできたよ」


「カミサマすげぇな。そんな本を読んでるのか」
石崎君がつぶやきました。


「とにかく、暗い顔をして暗い話をしていても何も状況は変化しないぞ。状況が悪いときは、良くなるように努力すれば、必ず陰は陽へと変化していくさ。各自が少し先を考えて、何をすべきかをよく見極めて行動して欲しい。まだまだやれることはあるはずだ。お客様の課題は永遠になくなりはしない。売上が落ちてきたのは、我々の提案がお客様の課題とズレ始めている証拠だよ」


「はい」


「よし、そうとわかったら残り三週間、やれるだけのことはやって下期を迎えよう!」


ひとりごと 

易には、易の三義と呼ばれる以下の3つの意味があります。(竹村亞希子先生のブログより)

「変易」:森羅万象、すべてひと時たりとも変化しないものはない。
「不易」:変化には必ず一定の不変の法則性がある。
「易簡」:その変化の法則性を我々人間が理解さえすれば、天下の事象も知りやすく、分かりやすいものになる。

変わるものと変わらないものがあり、それを見極めて手を打てば、大自然の法則に逆らうことなく生をまっとうできるということでしょう。

ビジネスも同じですね。

変わるものと変わらざるものを見極めて、先手先手で行動すれば、大きな失敗はなくなるはずです。


原文】
天下の体は、交易を以てして立ち、天下の務(つとめ)は、変易を以てして行なわる。〔『言志録』第172条〕


【意訳】
天地自然の本質は、陰と陽の交代によって成り立っており、政治を執り行うときは、万物はすべて移り変わるということを理解しておく必要がある。


【ビジネス的解釈】
物事の本質は、陰と陽の交代によって成り立っており、ビジネスを行うときは、何事も移り変わるということを理解しておく準備することが肝要である。


job_ekisya