今日は、J医療器械の経営幹部である、相原会長、平社長、川井経営企画室長、西村総務部長、佐藤営業部長の5名が、創業25周年の記念行事に向けた打ち合わせをしているようです。


「当社も2年後には創業25周年を迎えることになる。なんとか四半世紀の間生き残ることができた。それは、川井、西村、佐藤、君たち3名が身を粉にして働いてくれたお陰だと感謝している」



「業界を変革し、医療機器ディーラーの存在意義を高めたい、という社長の想いにほだされて、創業のお手伝いをさせてもらいましたが、もう25年が経つんですね」
川井室長も感慨深く振り返ります。


「創業には何よりも志が必要だと思う。信念と言ってもいいかも知れない。創業の時に描いた私の志は決して間違っていなかったのだと思う。だからこそ、この先どうなるかもわからない会社の立ち上げに、川井も西村も佐藤も手を貸してくれたんだよな」


「お互い若かったからね」
社長と同い年の西村部長の発言です。


「しかし、志や信念だけでは企業は存続できないのも事実だ。我々も全員50を超えた。知らないうちにコンフォーソゾーンから抜け出すのが億劫になってきているかも知れない」


「安心領域ですね。たしかにチャレンジ精神は薄れているのかも知れません」
佐藤部長です。


「そういう意味では、変化を恐れずに前進できる行動派の社員を育てていく必要もある」


「神坂にはその資格がありそうですね」


「川井、その通りだ。だが、まだまだ奴には勉強してもらわないとな。その下の大累もチャレンジャーとしての資質を持っている。そして、やや慎重派の新美がいる。今の3名の営業課長のバランスは悪くないな」


「それを育ててきたのは佐藤君ですよ」


「恐縮です」


「佐藤、先日は君に失礼なことを言ってしまったが、たしかに君の存在があってこそ、あの3名が生きていると私も見ている」


「社長、私の方こそ先日は失礼なことを申しました。あらためてお詫びします」


「まあ、過ぎたことだ。このメンバーだから正直に言うが、一時期は川井との関係もうまく行っていなかった。しかし、二人で話し合って創業時の想いを共有することで分かり合えた。とにかくこの創業メンバーはなにがあっても一枚岩でいよう!」


「はい」


「すばらしいね。いろいろ心配したけど、さすがは平君だ。しっかりと自ら動いて難局を乗り越えたんだね」


「相原会長。会長の存在は当社にとってとても大きなものがあります。川井に適切なアドバイスをしてくれましたし、佐藤にも配慮をしていただいています。本当に感謝しています」


「いや、僕は何もしていないよ。実は、先ほどからの話に水を差すようだけど、25周年を機に引退させてもらおうと考えているんだ」


「それは困ります。体調が悪いということならやむを得ませんが、お察しするところ、まだまだお元気そうじゃないですか。ぜひそこは思いとどまって頂きたいです」


「そうですよ、会長。神坂君にとって会長はとても大きな存在なんです。私には伝えられない営業マンとしての在り方をいつも教えて頂いています。彼が本当の意味でマネジャーになるまでは、会長は会長であり続けて頂きたいです」
佐藤部長も懇願しています。


「ははは。神坂君は僕の師匠でもあるからね」


「師匠?」


「平君、そうなの。神坂君は僕の老後の楽しみを作ってくれた師匠なの。競馬と競艇のね」


「だ、大丈夫ですか? あいつそんなことを会長に・・・」


「違うんだよ。僕が競馬を初めてね。社内に詳しい人がいるかなと探したら、師匠がいたの。彼が誘ったわけでないからね」


「そうですか。まあ、いずれにしても、会長。今の話はもう少しゆっくり考えていただきますよ!」


「そんなに睨まないでよ。まあまだ2年あるからね。その間に死んじゃうかも知れないし」


「縁起でもない!」
全員が楽しそうに笑っています。


その後、25周年記念行事について1時間ほど討議が続いたようです。


ひとりごと 

帝王学のテキストと呼ばれる『貞観政要』という中国古典の中に、

「帝王の業、創草と守成といずれか難き」

という明君太宗(唐)の有名な言葉があります。

その問いに対する最終的な太宗の解決案はお見事です。(詳細は第104日をご覧ください)

また、「馬上天下を取るも、馬上天下を治むるべからず」

という言葉もあります。

創業と守成では、やるべきことが変ってきますので、当然中心に立つ人物の適性も変ってきます。

9割以上の企業が創業から10年以内に廃業する要因もここにあるのかも知れません。


原文】
吾れ古今の人主を観るに、志の文治に存する者は必ず業を創(はじ)め、武備を忘れざる者は能く成を守る。〔『言志録』第173条〕


【意訳】
古今の人君を観察してみると、学問をもって治めようと志す者は国を創生し、戦の備えを怠らない者は国を守り抜いている。


【ビジネス的解釈】
学問を積んだ実務派が企業を創業し、常に準備を怠らない行動派が企業を守り育てるものだ。


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