今日は営業部と総務部のマネジャーによる働き方改革対策会議が開催されているようです。


「いよいよ法案も通過して、いくつかやらなければならないことが確定したね。今回の改革は中小企業も例外なく対応を求められる。いまから何をやるべきかを明確にしておく必要があるね」
冒頭、総務の西村部長からの発言です。


「取り急ぎ早急な対応が求められるのは、総労働時間の制限でしょうね」
大竹課長です。


「時間外労働に明確な上限が課せられました。総計で720時間が上限です。また、月の上限も100時間、複数月の平均で80時間を超えてはいけないなど、かなり細かく設定されています」
鈴木課長がパワーポイントを使って解説をしています。


「こうした規制が、大手企業では来年2019年4月から、我々中小も2020年4月からは厳格に適用されていくことになった」
西村部長も難しい顔をしています。


「ウチの営業部員は私を含めて16名です。数は多くはありませんが、複数月で80時間を超えないように業務量を見ていくのは、アナログでは難しいですね」
佐藤部長からの発言です。


「サトちゃん、そのとおりだ。システムの導入を検討していく必要がありそうだな」


「超勤時間の上限が720時間ということは、残業を月60時間以内に抑えないといけないんですね?」


「神坂、それが違うんだ。基本的には45時間が月の上限として課せられており、例外的に6ヶ月まではそれを上回ることが許されているんだよ。ただし複数月の平均が80時間を超えてはいけないとされている」
鈴木課長が補足しました。


「なんだか複雑だな。つまり2ヶ月で160時間、3ヶ月で240時間を超えてはいけないということだよな」


「よく計算できたねぇ、神坂君」


「タケさん、馬鹿にしすぎ!」


「正直に言いまして、今の営業1課の平均月残業時間は60時間程度あります。これだと総計では720時間に収まりそうですが、45時間を超える超勤は6ヶ月以内に抑えるという規制に引っ掛かってしまうんですね?」


「新美君、そのとおりだよ。まずは最低でも月平均を45時間以内に抑えないと指導を受けたり、最悪の場合は罰則を受けることになる」


「指導を受けるとマスコミに名前が出る可能性がある。そうなるとブラック企業として見られてしまい、新たな採用がひじょうに厳しくなるだろうし、お客様の対応にも変化が出てくることが危惧されるな」


「まだ1年以上も先のことだと高をくくっていると直前で大騒ぎになりそうですね」
大累課長です。


「とにかく、システムの導入については、総務で最善のモノを選択して導入を急いでいくが、営業部としても今のうちから残業削減に向けて取り組んで欲しい」
西村部長が締めて、会議は終了したようです。


その後、営業部の4人は喫茶コーナーに場所を移して、雑談をしているようです。


「しかし、今の状況のまま残業を減らせと言っても、メンバーからは不満が出るだけですよね」


「新美、そうだよな。一緒になって残業の中身を把握して、無駄を省き、効率化できることは効率化していかないとな」


「大累君の言うとおりだね。働き方改革というのはけっして『働かない改革』ではない。かつての日本人は、とにかくアウトプット優先で、がむしゃらに働いてきた。しかし、これからは労働人口が圧倒的に不足していく。もうそういうやり方では限界がきているんだね。これからは、同じアウトプットをどれだけ短時間で効率的に出せるかを考えていかなければならないんだ」
佐藤部長のコメントです。


「それをメンバーの腹に落としながら進めていくのは至難の業ですね。最終的には、平社長から強いメッセージを出してもらう必要もあるでしょうね」
神坂課長です。


「そうだね。仕組みを作ったり、それを効率的に運用できるようにマネジメントするのは、我々中間マネジメントの仕事だが、その仕組みに魂を注入するのは経営トップだろうからね。その辺は西村さんと私から社長と川井さんにお願いしておくよ」


ひとりごと 

本章の原文では、日本人が増加している中で、国として何をすべきかが説かれています。

しかし、それから150年が過ぎた現在では、日本人の人口は減少しています。

そうした中で、今までの日本人の働き方の根本的な改革が必要になってきました。

ただし、その場合でも、欧米流をそのまま導入するのではなく、日本流の良さを継承することも忘れないようにしたいものです。


原文】
国家の食貨(しょっか)に於けるは遺策(いさく)無し。園田・山林・市廛(してん)を連ね、尺地の租入を欠く無く、金・銀・銅並に署を寘(お)きて鋳出(ちゅうしゅつ)す。日に幾万計なるを知らず。而(しか)るに当今上下困幣して、財帑(ざいど)足らず。或いは謂う、奢侈の致す所なりと。余は則ち謂う、特に此れのみならずと。蓋し治安日久しきを以て、貴賤の人口繁衍(はんえん)し、諸(これ)を二百年前に比ぶるに、恐らくは翅(ただ)に十数倍なるのみならず。之を衣食する者、年を逐(お)うて増多し、之を生ずる者給せず。勢(いきおい)必ず此に至る。然(しか)らば則ち困幣(こんへい)此(か)くの如きも、亦治安の久しきに由(よ)る。是れ賀す可くして歎ず可きに非ず。但(た)だ世道(せどう)の責有る者、徒らに諸を時運に諉(ゆだ)ねて、之を救う所以の方(ほう)を慮(おもんばか)らざる可からず。其の方も亦別法の説く可き無し。唯(た)だ之を食(くら)う者寡(すくな)く、之を用うる者舒(じょ)に、之を生ずる者衆(おお)く、之を為(つく)る者疾(しつ)にと曰(い)うに過ぎず。而(しか)して制度一たび立ち、上下之を守り、措置宜しきを得、士民之を信ずるに至るは、則ち蓋し其の人に存(そん)す。〔『言志録』第174条〕


【意訳】
国家の食糧と貨幣に関しては手落ちがあってはいけない。田畑・山林から市場に至るまで、少しの土地でも租税の滞納はなく、金貨・銀貨といった貨幣については造幣局を設けて鋳造しており、その額は毎日幾万円になるか計り知れない。その割には人民は上も下も困窮しており、財貨は不足している。ある人はこれは贅沢のし過ぎであると言う。私はそれだけではないと思う。私が思うには、泰平が久しくなり、人口も増加し、二百年前に比べれば十数倍となっている。衣食を必要とする人民は年々増加するが、供給する者の数は増えていないのであるから、こうなるのは当然のことである。そう考えれば人民が困窮しているのは、泰平の世が長く続いたからであり、喜ぶべきであって、嘆くことではない。ただし、国を導く者は、それを時に任せているだけでは駄目で、救済する方法を考えねばならない。その方策も特別な事ではなく、『大学』にあるように、「働かずに食らう者を減らし、物品使用を節約させ、生産者を多くし、生産のスピードを早めること」である。こうした制度を成立させ、人民がよくこれを守り、その措置が義に沿ってなされ、人民がその制度を信頼するようになるのは、ひとえに人君の双肩に懸かっているのだ。


【ビジネス的解釈】
日本は世界一の高齢社会となっている。高齢者は益々増え、それを支える労働力は年々減少していく。国家はもちろん、企業経営者もこれに対して手をこまねいているだけでなく、対策を講じるべきである。ただしその対策は、特別な対策である必要はなく、収支をよく見極め、仕事の効率化を図ることを考えればよい。働く仕組みを作り、社員は幹部から一般職にいたるまでみなそれを適切に遵守し、その仕組みを信頼している状態を築きあげるのは、リーダーである経営者の仕事である。


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デジタル毎日より

https://mainichi.jp/articles/20161219/ddm/003/070/066000c