営業部のマネジャーが集まって、下半期の見通しについて会議をしているようです。


「上半期も厳しい状況でしたが、下半期も引き続き厳しいですね」


「新美、その『厳しい』という表現が他人事に聞こえるんだよ。俺は数字を達成できないのは長である自分の責任だと思っているから、そんな客観的な表現は使えないな。敢えて言うなら
『申し訳ない結果』とか『情けない見通し』という表現になるかな」


「私も以前から神坂さんのそういう考え方に染まってきたので、今の新美の表現には違和感を覚えたよ」
これは大累課長です。


「なるほど、そうかも知れません。まだ、私の中で計画数字の大きさが腹に落ちていないから、そういう表現になるのでしょうね」


「まだ腹に落としてないのかよ! もう半分終わってるんだぜ!」


「それはわかっていますが・・・」


「これについては後で佐藤部長に話をしてもらえば良いとは思うけど、俺は計画数字に妥当性を求めることにどれだけ意味があるのかと思ってるよ」


「しかし、計画に妥当性がないと、メンバーへの説明に困りませんか?」


「よくわからないな。俺はメンバーに妥当性を説明したことは一回もないからさ」


「では、どうやって納得させるのですか?」


「その数字を実現したらどんな景色が見えるのか、どんな風に自分の周囲が変るのかを語っているだけだよ。同じ夢をもつイメージなのかな」


「それでメンバーは納得するのですか?」


「ウチのメンバーはそういう話をすると目を輝かせるぞ。それが納得している証じゃないかな?」


「・・・」


「この前、サイデリアの正岡会長の講演を聴いたんだ。そこで正岡会長は言っていたよ。中小企業の経営者の方は、今の1.3倍をやろうとする。でも、自分は100倍、1000倍を目指してきた。1.3倍なら今のやり方の延長線上でできてしまう。しかし、100倍、1000倍となると、やり方や考え方を変えない限り絶対に達成できない、ってな」


「やはり大手企業の経営者の方は考え方がデカイですね」
大累課長が感心しています。


「俺は、考え方を変える、というのがポイントだと思った。それは、難しく考えるということではなく、どれだけシンプルに考えることができるかだと思う」


「シンプル?」


「そうだよ、新美。俺は馬鹿だから、最初から難しくなんて考えられないからな。なるべくシンプルに考えて、それを簡潔に実行するしかないんじゃないかと思う」


「どういうことですか?」


「上から降りてきた数字を、商品単価とお客様の数の掛け算の結果だと考えるんだよ。単価が35万円の物を300人に売れば、1億円になるじゃないか。ウチの主力商品の単価にそれぞれ必要なお客様の数を掛けた結果が計画数字になるように試算すれば良いだけだろう」


「なるほど」


「そこで必要なお客様の数が出たら、後は何をしたらそれだけの数のお客様のお役に立つかを考えて、スピーディかつ簡潔に行動すれば良い。うまく行かなければ反省してまたアプローチするだけだ」


「流石は、神坂君だ!」
佐藤部長が声を上げました。


「みんな仕事を難しく考え過ぎているんだね。新美君も頭が良いから、つい複雑な思考で仕事を捉えてしまうんだろうな。ところが、天地が万物を創るときは、すべて易しく簡単に創り出しているんだよ。本来、人間も天地の創造物だから、同じように易しく考え、簡単に行動すれば、結果はついて来るものなのかも知れないよ」


「ありがとうございます。参考になりました。夢を共有することと、易しく考え、簡単に行動する。さっそく自分の中に取り入れてみます」


「新美、後で今の話を腹に落とそうとか思っているだろう? 良いんだよ、腹になんか落とさないで! すぐ実行しろって!」


「は、はい。しかし、私はそこまで単純には・・・」


「悪かったな、単細胞で!」


ひとりごと 

「いつの頃からか頭の良い人が、ビジネスは複雑ではないと成功できないと思わせてしまった。しかし、ビジネスは本来シンプルに考えるべきものなんだよ」

先日、永業塾の後の懇親会で中村塾長から言われた言葉です。

今日の一斎先生の言葉をみて、まさにこの言葉がピタリと当てはまるなと感じました。

ビジネスは易しく簡潔に!

もう一度、原点に戻って仕事をしましょう。

腹に落とそうとしてはダメですよ!


原文】
乾(けん)は易(い)を以て知(つかさど)るは良知なり。坤(こん)は簡を以て能くするは良能なり。乾坤は太極に統(す)べらる。知・能は一なり。〔『言志録』第204条〕


【意訳】
天下の道理は(乾坤)の易簡にほかならないのであり、それを体得することを求めるべきである。それが行動となって現われるのが良能であり、思考として発揮されるのが良知である。つまり良知・良能とは別々に手に入れようと努力するようなものではなく、易簡の体得によって発揮されるものである。


【ビジネス的解釈】
本来天地は易しく簡単に物事を作り上げている。それを作為的に難しくしているのは人間の小賢しさである。ビジネスとは、シンプルに思考し、簡潔に行動すればうまく行くものなのだ。


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