今日の神坂課長は同期の人事課鈴木課長とランチを共にしているようです。

「働き方改革=労働時間短縮というのは、間違った解釈なんだな?」

「突然どうした、神坂」

「この前、あるセミナーを受けたときに、講師の社労士さんが言っていたんだよ。『働き方改革に関して、労働時間の削減から手をつけている会社は迷路に入っている』ってな」

「たしかにそうかもな。大事なことは、労働生産性を高めることだもんな」

「おお、さすがは鈴木だな。講師も同じ事を言っていた!」

「一応、俺は人事担当だからな。むしろ、営業のお前がそんなことまで勉強していることに感心したよ」

「お前に褒められたのは初めてだな。でもな、今は営業の技術の研修なんか受けても面白くないんだよ。それより心の在り方を学ぶ研修が楽しく感じるようになってきた」

「ある意味お前はまだ真っ白なノートみたいなもんだからな。これからいくらでも埋めていける」

「それは、褒めてないよな? まあ、いいや。それでな、働き方改革で一番大事な一丁目一番地は何かわかるか?」

「同一労働・同一賃金だろ?」

「鈴木、お前はやっぱり凄い。尊敬する。だから食後のコーヒーを奢れ」

「まあ、ウチの場合は少人数の会社だし、その点は大丈夫じゃないかな」

「なんだよ、スルーかよ。そうだよな、それで俺が面白いなと思ったのは、働き方改革というのは、会社からすると『働かせ方改革』で、社員さんにとっては『働きがい改革』だという話だった。最近よく聞く、ワークライフバランスってやつをしっかり捉えなおす必要があるってな」

「安倍首相がこれからはもう昭和のモーレツ社員は要らないというような趣旨のことを言っているよな。お前は典型的な昭和の男だからな。気をつけないと部下から刺されるぞ」

「わかってるよ。だから、無理は言わないし、させていないよ。ただなぁ・・・」

「なんだ?」

「楽をすることと、楽しむことは違うと思うんだよ。漢字は同じ『楽』という字を使うんだけどな。楽しく仕事ができてこそ、幸せな人生を送ることができるんじゃないのかな?」

「その点は難しいな。幸せの定義は人それぞれ違うからな。ただ、人間はやっぱり仕事にやりがいや達成感を感じることができないと幸福感を味わえないだろうな」

「そうだろう。俺が若い頃は夜中まで働いて、その後飲みに行って、3時間くらいしか寝ないでまた会社に来るなんてことがよくあった。体力的には滅茶苦茶きつかったけど、なぜか毎日楽しかったんだよ」

「それをもっと限られた時間の中で、部下である社員さんに経験させていくことがお前に課せられた働き方改革の課題なんじゃないか?」

「なるほどな。労働生産性も大事だけど、『楽しさ生産性も大事だということだな。いかに効率的に仕事の楽しさを感じてもらえるか。これは労働生産性を高めるより難しいぜ!」

「マスター、食後のコーヒー2つ。こいつの奢りで」

「何でだよ!」

「お前の課題に気づかせてやったんだから、それくらい安いものだろう?」


ひとりごと 

働き方改革法案が可決され、いよいよ本格的に動き出します。

物語の中でも触れましたが、日本は世界水準からみると労働生産性が極めて低い国なのだそうです。

人口減少が避けられない未来である以上、効率的な働き方を模索しない限り、ますます日本の企業は疲弊していくということです。

しかし、効率を求めるときに、楽しさややりがいまで失って、機械のように働くことを提唱しているわけではありません。

いかに短い時間で「楽しく」仕事ができるかを模索していくことが、真の働き方改革につながるのではないでしょうか?


原文】
衆人の以て幸と為す者、君子或いは以て不幸と為し、君子の以て幸と為す者、衆人卻(かえ)って不幸と為す。〔『言志録』第220条〕

【意訳】
一般の人が幸せだと感じるものを、立派な人は不幸であると考え、立派な人が幸せに思うことを、一般の人はかえって不幸とみる

【ビジネス的解釈】
本当の幸せというものは、学んでいる人にしか理解できない。学び、気づき、実践を繰り返すことで、真の幸福に近づける。


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