今日の神坂課長は、総務課の大竹課長と一杯やっているようです。

「そういえば、神坂君のところは息子さんが受験じゃなかった?」

「タケさん、そうなんです。長男が今年、高校を受験します」

「神坂君に似て、デキが良いんでしょ」

「それは完全に嫌味ですよね?」

「そんなことないよ。君は素頭は悪くないと思ってるからさ。ただ勉強が嫌いなだけでね!」

「さすが、タケさん。よくわかってますね! ところが、ウチのガキもそれほど勉強は好きではないようで、公立の有名校はちょっと厳しそうです。大学までエスカレーターのあるC大学附属高校あたりが狙い目みたいです」

「そりゃ、お金がかかるね」

「覚悟しています」

「勉強はともかく、厳しく指導はしているんでしょ?」

「まあ、普通の男親よりは厳しいかも知れませんね。小さい頃はよくビンタしたりもしていましたから」

「お陰でグレずに済んだって感じ?」

「そうですね。これは私というより、カミさんの性格を引き継いでくれたのか、二人とも比較的素直に育ちましたね」

「それが一番だよ。人様に迷惑をかけるのが一番よろしくないからね」

「そうですよね。サイさんから教えてもらった『論語』の言葉に、親に素直に従えないようでは、将来上司にも楯突くようになる、という意味の言葉があるんですよ。私はそれを知ったとき衝撃を受けました」

「若い頃の神坂君は毎日のように上司に刃向かっていたもんね」

「ええ、ということは、私は親にも素直に従ってこなかったということになるんだなと。少なくともそう見られる可能性はあるんだなと思って恥ずかしくなりました」

「そういうこともあるから、当社は採用のときに、親孝行かどうかを重視するんだよね。親孝行なら上司にも素直に従えるだろう。そうすれば良い仕事ができて、結果的には世の中のお役にたつ人材になれるからね」

「西村さんの考えですよね。やるなぁ、赤鬼!」

「昔はああいう怖いおじさんが近所に必ず居たよね」

「居ました、居ました。よく頭を叩かれたりしましたよ。今ならすぐに訴訟沙汰ですね」

「でも、そういう人のお陰で世の中のルールを学んだりもできたんだよね。今は核家族化して、祖父母も一緒に住んでいないし、子供の教育は親が一手に引き受けなければいけなくなっている。そんな親も仕事で忙しくて十分に躾ができない・・・」

「ひどい親は躾を学校にやってもらおうと思っていますからね。学校は教育の場であって、躾の場ではないのに」

「ところが学校でも十分な躾はできずに、会社でも躾から始めないといけない時代になった」

「お恥ずかしい。私はまさにこの会社で躾をしてもらったのかも知れません」

「まだ次男坊もいるんでしょ。しっかり家庭での躾をしないとね!」


ひとりごと 

現代の日本では、子供の躾は両親次第というところがあります。

祖父母がそばに居た時代は、ある程度負担をしてくれていたものですが、核家族が当たり前の現在ではそれも期待できません。

しかし、孔子も一斎先生も、家庭での教育こそが社会人として世の中の役に立つための準備なのだと指摘しています。

そういう意識で子供に接することは、とても大切なことではないでしょうか?


原文】
能く子弟を教育するは、一家の私事に非ず。是れ君に事うるの公事なり。君に事うるの公事に非ず。是れ天に事うるの職分なり。〔『言志録』第233条〕

【意訳】
しっかりと師弟を教育することは、一家の私事ではない。それは主君に仕える公事であるといえる。主君に仕える公事でもない。それは天に仕える仕事なのだ

【ビジネス的解釈】
わが子を教育することは、将来会社で上司に仕える準備をすることでもある。さらに言えば、世の中のために力を尽くすための準備だともいえる。


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