今日はJ医療器械の会議室で、就業後に某医療機器メーカーの勉強会が開かれているようです。
「毎週毎週、メーカーさんの勉強会に出てるけど、こう次から次だと、頭の中が整理できないよなぁ」
石崎君が左隣に座った善久君に愚痴をこぼしています。
メーカーさんのプレゼンテーションの後、石崎君の右隣に座っていた営業1課の清水さんが挙手をして質問をしました。
「ご紹介ありがとうございます。製品の仕様についてはよくわかりました。ところで、この製品は、医療機関あるいは患者様に具体的などんなメリットをもたらすのですか?」
「製品的には他社と大きな違いはありませんが、価格なら負けません!」
「わかりました。ありがとうございます」
席に着くと、清水さんが石崎君に話しかけました。
「石崎、この会社とは付き合う必要はないな。安さを一番のウリにしているような会社の製品を扱えば、俺たちまで安売り業者だと思われてしまうからな」
「なるほど。清水さんは、毎週毎週勉強会に出ていて、どんな風に知識を得て、どう活用しているのですか?」
「俺が聞きたいのはさっき質問した一点だけだよ。俺たちの仕事は、お客様である医療機関の課題解決のお手伝いだろう。そうだとすれば、ドクターやコ・メディカル(ドクター以外の医療従事者)にどういうメリットを提供できるかだ」
「はい」
「もうひとつの使命は、この地域に住む人たちの健康な生活をお守りするお手伝いだ。その点でいえば、患者様にどんなメリットを提供できるかだろ?」
「さすがです」
「馬鹿、そんなの当たり前のことだ。それが分っていなければ、売り続けることはできないぞ。自分の売上だけのために頑張ると、いつか必ず頭打ちになるからな」
「トップを守り続けるのは大変なんですね」
「トップであり続けるためには、社内の誰よりも勉強しなければ駄目だ。学びを止めた途端に後輩に追い越されていくからな」
「いつか、僕も清水さんを追い越したいです!」
「絶対無理だな!」
「な、なぜですか!?」
「『○○したい』なんて言っているうちは、絶対に俺を追い抜くことはできない。俺は常に『トップであり続ける』と決めているんだからな。タイやヒラメになったらお終いだよ」
「タイはわかりますけど、ヒラメって何ですか?」
「上司のご機嫌取りばかりする奴のことだよ」
「僕はタイかも知れないけど、ヒラメではないですよ!」
「ははは、わかってるよ。俺はずっとおっさんの背中を追いかけてきた。『いつか必ず追い抜いてやる!』ってな?」
「『おっさん』ってカミサマのことですか?」
「そうだよ。やっと追い抜いたと思ったら、あのおっさんはマネジメントの道を歩き始めやがった。いつの間にか、また俺の前を歩いている気がする。最近はやたら本も読んでいるらしいしな」
「清水さんにとって、カミサマはどんな存在なのですか?」
「ライバルでもあり、良き先輩でもあり、兄貴でもあるかな。あ、これは内緒だぞ。こいうこと言うと、あのおっさんはすぐに調子に乗るからな」
「それなら、よ~く心得ています」
ひとりごと
仕事に限らず、生きている限り学び続ける必要があります。
学びを止めれば、人生の歩みも止まります。
水は流れているうちはキレイですが、留まると澱みます。
人生を澱ませてはいけませんね。
【原文】
此の学は、吾人一生の負担なり。当に斃れて後已むべし。道は固より窮り無く、堯舜の上善も尽くること無し。孔子は志学より七十に至るまで、十年毎に自ら其の進む所有るを覚え、孜孜として自ら彊(つと)め、老の将に至らんとするを知らざりき。仮(も)し其れをして耄(ぼう)を踰(こ)え期に至らしめば、則ち其の神明不測なること、想うに当に何如と為すべきや。凡そ孔子を学ぶ者は、宜しく孔子の志を以て志と為すべし。(文政戊子重陽録す)〔『言志後録』第1章〕
【意訳】
儒学は我々が一生背負っていくべきものである。まさに死ぬまで学びをやめることがあってはならないのだ。道というものは当然極まることがなく、聖人尭や舜の善行でさえ極め尽くすことはできなかった。孔子は十五歳から七十歳に至るまで、十年単位で自らの進むべき道を定め、ただひたすら努め励み、老いが迫っていることすら気づかないほどであった。もし仮に孔子が八十、九十を超えて、百歳まで生きたならば、神のごとくすべてに明るく、人がとても測り知ることのできない境地へと到達したであろうことは、想像に難くない。孔子を学ぶ者は、みなこの孔子の志をしっかりと心に留めて自らの志としなければならない。
【ビジネス的解釈】
仕事を続ける限り、学び続ける必要がある。仕事を極めるためには、自分自身を鍛錬し極めていかねばならない。