神坂課長が善久君のところにやってきたようです。

「どうだ、善久。最近は良い仕事ができてるか?」

「少しずつお客様の心の扉を開けられるようになってきたという実感はあるのですが、結果につながらないのが悩みです」

「そうか。お前はまだ2年生だからな。焦ることはない、確実に成長しているじゃないか!」

「ありがとうございます。でも、やっぱり結果が欲しいです」

「それなら自分の売り上げのことは、頭から忘れ去ることだな」

「課長、営業マンが売り上げのことを忘れて良いのですか?」

「もちろんだ。いいか、俺は売り上げを上げるなと言っているのではないぞ。売り上げのことを考えるな、と言っているんだ

「売り上げのことを考えずに売り上げを上げろということですか? 理解不能です」

「善久はギター小僧だったよな?」

「え、はい。ずっとバンドをやってます」

「ライブのステージ上では、どんな気持ちでギターを弾いているんだ?」

「そうですねぇ。やっぱり、来てもらったお客さんに喜んでもらいたいと思って演奏しています」

「そうだろう。今日は何人入ったからいくらの売り上げだ、なんて考えないだろう?」

「それはそうですよ!」

「良い演奏ができれば、その結果としてお客さんは次のステージにも足を運んでくれるよな?」

「はい、そのとおりです」

「仕事もそれと同じじゃないか?」

「ああ、そうか。ということは、私はまだまだお客様に心から喜んでもらえるような仕事ができていないということですね」

「善久、『そこまでやるか!』とお客様に言わせるだけの仕事ができているか? お客様から心からの『ありがとう』をいただいているか?」

「・・・」

「売り上げのことなんか忘れて、その2つの言葉をお客様に言わしめる仕事をしてみろ。そうすれば結果的に売り上げは上がるはずだ」

「なるほど」

「あえて言えば、ワーカーズ・ハイになれ、ってところかな?」

「ワーカーズ・ハイですか?」

「マラソンランナーが極限に達するとすべてが楽しく感じるのを、ランナーズ・ハイという。登山者が厳しい登山の途中に快感を感じるのを、クライマーズ・ハイという。だから、仕事に没頭していて、なにもかも忘れてしまう境地をワーカーズ・ハイと言っても間違いではないだろう

「ワーカーズ・ハイか。それを味わえるまで、お客様のために自分のできるベストを尽くしてみます!」


ひとりごと 

一斎先生のこの言葉を読んで、小生は大いに反省しました。

若い頃は、本当に仕事に没頭して毎日夜遅くまで仕事をしていましたが、それがまったく苦だとは思っていませんでした。

ところがいつしか、お客様のために我を忘れて仕事に没頭することを忘れてしまっている自分に気づかされました。

もう一度、ワーカーズ・ハイを味わうべく精進します!


原文】
自彊不息の時候、心地光光明明なり。何の妄念遊思か有らん。何の嬰累罣想(えいるいけいそう)か有らん。〔『言志後録』第3章〕

【意訳】
人が自ら休まず勉め励んでいる時には、その心は明るく光り輝いている。どこにもみだらな思いや遊びたいという思いなどはありはしない。また心に引っ掛かるような患い事や悩み事などもありはしない

【ビジネス的解釈】
仕事に没頭しているときは、心は明るく、余計なことはまったく考えていない。また、うまく行くかどうかと悩むこともない。こうした境地で仕事ができることが望ましい。


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