今日の神坂課長は、営業1課の新美課長とランチに出かけたようです。

「課長になってあっという間に8ヶ月が過ぎましたが、未だにマネジメントのコツがつかめませんね」

「そりゃそうだろう。1年も経たないうちに簡単にコツがつかめるほど、マネジメントは簡単なものじゃないぜ」

「まあ、そうですよね。特に先輩社員さんとの距離感は難しいです」

「ははは。清水か、あいつと正しい距離感を取れる人は、我が社には居ないんじゃないか?」

「神坂さんは仲が良いじゃないですか」

「そう思うか? あいつ、俺のことをずっと『おっさん』って呼んでるんだぞ。完全に舐められているよ」

「いつからそう呼ばれているんですか?」

「新人のときから。(笑)」

「一応、私のことは『課長』と呼んでいただいています」

「じゃあ、お前のほうがあいつの中では上のランクにいるかもよ。実はな、佐藤一斎先生は、マネジメントなんて簡単だ、と言っているんだよ」

「え、どういうことですか?」

「要するにな、マネジメントで苦労するということは、リーダーが人間的に未熟な証拠だと言っているんだ

「なるほど、そう言われてしまうとぐうの音も出ませんね」

「うん。でも、そういうことだよな。だってこんな俺でも、佐藤部長の前に行くと、素直に話を聞いてしまうからな」

「確かにそうですね。佐藤部長の前では、ゴマをするような人もいませんしね」

そういうことを許さない威厳みたいなものも持っているよな。なあ、新美。身近にそういう人がいるというのは幸せなことだよな」

「はい。本当にそう思います」

「俺もまだ遅くないと思って、人間力強化に取り組んでいるんだ。一緒に精進していこう! あれ、電話だ」

神坂課長は電話に出るために店を出ました。

「もしもし、おお、清水か。うん、うん。マジか、流石だな。わざわざ連絡をくれてありがとうな」

「おっさんには、この前相談に乗ってもらったからさ」

「もちろん、新美には連絡したんだろうな? え、まだなのか。早く電話してやれよ。うん、良かったな。当社にとってもありがたいことだよ。さすがはトップセールスだ!」

電話を切った神坂課長は店に戻りました。

「大丈夫ですか?」

「あ、ああ、石崎からの相談だったよ」

「そうですか」

「(今、清水から大口商談受注の連絡があったことを伝えたら、新美は落ち込むかも知れないからな。ここは嘘も方便でいくことにしよう)」


ひとりごと 

人格を磨けば、人は自然とついてくるのだ、と一斎先生は言います。

かつての私はそれがまったく分っておらず、無理やり恐怖政治でメンバーを従わせていました。

それでは、必ず破綻が来ます。

回り道のように思えても、人格を磨き、リーダー自身が人物となることが、効果的なマネジメントを行う上では一番の近道なのかも知れません。


原文】
聖人は清明躬に在りて、気志神の如し。故に人の其の前に到るや、竦然(しょうぜん)として敬を起し、敢て褻慢(せつまん)せず、敢て諂諛(てんゆ)せず。信じて之に親しみ、尽く其の情を輸(いた)すこと、鬼神の前に到りて祈請するが如きと一般なり。人をして情を輸さしむること是の如くならば、天下は治むるに足らず。〔『言志後録』第7章〕

【意訳】
聖人は清く明るい気を身に充満させ、その気のはたらきは霊妙で神のようである。それゆえ人がその前に立てば、おそれ慎んで尊敬の態度を示し、間違ってもなれなれしかったり、媚び諂うような態度をとるようなことはない。その人を信頼してよく懐き、その真情を発露するのは、鬼神の前で祈りを捧げるのと同じである。このように人の真情を発露させることができれば、天下を治めることなどたやすいものだ

【ビジネス的解釈】
本当に人格ができあがった人物の前では、人は自然と敬意を抱き、軽率な態度をとる事はできないものだ。つまり、人格を磨いて人物となれば、マネジメントで苦労することはないということだ。


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