神坂課長が喫煙コーナーにいる雑賀さんに声をかけたようです。

「雑賀、お前まだ煙草を吸ってるのか?」

「そうなんですよね。やめた方がいいとはわかっているんですが・・・。来月から禁煙するかな?」

「来月って、お前まだ今日は12月5日だぞ」

「だから、来年から本格的に禁煙に取り組むということですよ!」

『明日からやります』っていう奴が実際にやるのを見たことないぜ。まして来年かよ。お前、煙草を本気でやめる気はないよな?」

「バレました? えへへ」

場所は変わって、ここは「季節の料理 ちさと」です。
今日の神坂課長は、総務課の大竹課長と一杯やっているようです。

「という話を雑賀としたんです。まあ、雑賀じゃなくても、やるべきことを後回しにして、やらなくていいことをやってしまうのが人間の性ですよね?」

「仕事でもそうだよな。急いで処理すべきことを後回しにして、どうでもよい仕事に時間をかけてしまうことがよくあるよね」

「はい。今日のおまかせ料理は、茶碗蒸しです」
ちさとママが料理を運んできました。

「おー、俺は何が好きって、茶碗蒸しほど好きなものはないんだよね」

「神坂君、そのセリフ、この前のおまかせ料理のときにも言ってたよね」

「タケさん、小さいことを気にしないの!」

「ねぇ、神坂君。さっき話していたことだけどね。私のバイブルには、仕事の処理の順序として、こんなことが書いてあるの。
 1.劣後順位を決める。(やらなくて良い仕事を捨てる)
 2.優先順位を付ける。(何から着手するかを決める)
 3.やると決めた仕事にすぐに着手する。
 4.拙速主義で八十点の仕上げで良いので、一気に仕上げる。
という4つのステップね」

「劣後順位か。そうだよね、まずやらなくて良いことを思い切って捨てることから始めるべきなんだろうな」

「そうそう。残しておくと、結局それから手をつけちゃったりするからね」

「よし、明日はまず劣後順位をつけることに手をつけてみよう!」

「神坂君、明日なの?」

「えっ、だってもう今日は閉店したしさ。でも、そうだね。早く帰って、寝る前に整理してみるかな」

「さすが、神坂君! で、こんな話の後で言い出しづらいんだけど、ちょっと一服してくるね」


ひとりごと 

本章の中で引用されている朱熹の勧学の文を再掲しておきます。

謂う勿れ、今日学ばずとも来日ありと。
謂う勿れ、今年学ばずとも来年ありと。
日月逝けり、歳、我と延びず。
嗚呼、老いぬる哉(かな)、これ誰の愆(あやまち)ぞ。

簡単に意訳しておきますと、
今日学ばなくても明日学べばよいと言うな。
今年学ばなくても来年学べばよいと言うな。
時は過ぎるが、自分の命には限りがある。
いつの間にかこうして何もせずに老いてしまったのは、誰のせいだというのか! 

耳の痛い言葉です。

さあ、明日といわず、今日から始めましょう!!


原文】
凡そ人の宜しく急に做(な)すべき所の者は、急に做すことを肯(がえん)ぜす、必ずしも急に做さざる可き者は、卻(かえ)って急に做さんことを要(もと)む、。皆錯慮(さくりょ)なり。斯(こ)の学の如きは、即ち当下の事、即ち急務実用の事なり。「謂う勿れ、今日学ばずとも来日有り」と。讌(えん)を張り客を会し、山に登り湖に泛(うか)び、凡そ適意遊観する事の如きは、則ち宜しく今日為さずとも猶お来日有りと謂う可くして可なり。〔『言志後録』第15章〕

【意訳】
大概、人は急ぎでやるべき事は急いでやろうとしない。必ずしも急ぐ必要のない事を先にやろうとする。まるで反対のことをしている。儒学はいまここに急務とすることを処理する学問である。朱子は『今日学ばずとも明日があると言うな』と言っている。酒宴を催したり、客を集めたり、山に登ったり、湖に舟を浮かべたりするような、総て思いのままに遊び回るようなことは、今日なやらなくても、明日があると言っても良いだろう

【ビジネス的解釈】
限りある時間の中で仕事を成就するには、すぐにやらなくて良いことを切り捨て、今すぐやるべきことにすぐに取り掛かることである。「明日からやります」というような人間には何事もままならない。


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