納会を終え、神坂課長は佐藤部長と最寄り駅まで歩いているようです。

「さっきの社長の言葉には、身が引き締まりました」(平社長の言葉については昨日参照)

「さすがは社長だよね。最後に見事に締めてくれたね」

「はい。でも、ふと思ったんですけど、ウチは最近、積極的に新卒社員さんを採用していますよね。それなのに売り上げが横這いでは会社として厳しくなりますよね」

「新卒社員さんの採用は先行投資だからね。とにかく営業部としては、利益を出すことを考えないとね」

「ただし、お客様の課題に対する最善の解決策を提案するという軸はブラさずにですよね?」

「そのとおり。それから、コスト削減も意識して、無駄をなくしていくことも必要だね」

「そうですよね。私が若い頃に安易に都心高速を使っていて、西村さんに叱られたことを思い出します」

「ははは。都心高速は高いからね。昔から、『入るを量りて出ずるを制する、という言葉があってね。とにかく収入に見合った支出を考えるのが基本だね」

「なるほど。売上が伸びないなら、支出を抑えるということか」

「ただし、抑えすぎてしまうと、自分で自分の首を絞めることになる。だから、社長は積極的に新卒社員さんへの先行投資をしているわけだ」

「そうですよね。メーカーさんは常に製品開発に予算を使い続けなければいけないように、我々商社は人に投資しなければいけないんですね」

「人と教育だろうね」

「よし、来年はコスト意識も強く持つことにします!」

「世界の歴史をたどって見ると、入るを量りて出ずるを制することができずに滅びた国がたくさんあるからね。もちろん、企業にも同じことが言える」

「それって、家庭にも言えますね。我が家の家計はかみさんに任せっぱなしですから、たまにはちゃんと話をしてみようかな?」

「うん、それも大事なことだね。会社をマネジメントする前に、我が家をしっかり整えないとね!」

「本当にそうですね。かみさんからは飲み代を抑えろって、しょっちゅう叱られています・・・」

「奥さんがしっかりしているから、神坂家は大丈夫そうだね。さて、駅に着いたよ。神坂君、今年もいろいろとお世話になったね。本当にありがとう!」

「こちらこそ、本当にお世話になりました。もっと教えて頂きたいことがあるので、来年もよろしくお願いします。では、失礼します」

2人は挨拶を交わして、別々のホームへと歩いていったようです。


ひとりごと 

本年も当ブログをご愛読いただきました皆様、ありがとうございました。

来年も迷いながら、悩みながら、三歩進んで二歩下がるような歩みで、当ブログを毎日アップしていく所存です。

来年も何卒よろしくお願いします。(ぜひ、ご意見・ご感想もいただけると幸いです)


原文】
(しょうせん)出でて明衰え、鈔銭盛んにして明亡ぶ。〔『言志後録』第41章〕

【意訳】
紙幣が出されてから明は衰えはじめ、その紙幣が乱発されるに及んで明はついに滅亡してしまった

【ビジネス的解釈】
財政の失敗は即企業衰退につながる。


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