神坂課長のデスクに相原会長がやって来ました。

「神坂君、明けましておめでとう。今年もいろいろと御指導をお願いしますね」

「会長、本年もよろしくお願いします。御指導って言っても、ギャンブルのことですよね?」

「それだけじゃないよ。神坂君には私が失くしてしまったバイタリティがあるからね。会うたびにパワーを注入してもらっているんだよ」

「それは光栄です。私にはそんなにバイタリティがあるのでしょうか? 目に見えないものは、他人と比べられないので分らないですよね?」

「人間って、目に見えるものだけしか見ないよね。本当は目に見えないものこそ大切なのにね」

「どういうことですか?」

「たとえば、魚は水が無ければ生きられないのに、普段は水の有り難さをわかっていないよね?」

「ああ、そういう意味では、人間だって空気の有り難さを忘れていますね」

「そう。神坂君は御両親がいなければ、この世に生まれてきていないんだよ。御両親を大切にしているかい?」

「確かにそうですね。年末には帰省して、顔を見せましたが、普段は親の有り難味も忘れてい
ますね」

「他人から受けた恩というのは、目に見えないものだから、しっかりと意識をしておかないとすぐに忘れてしまうんだよね」

「ご縁もそうですね。つながったご縁も目に見えているわけではないから、しっかりと繋ぎとめておかないといけません」

「僕は常々、こう思っているんだ。そういう見えない縁や恩を大切にしていると、他人の心の中も見透せるようになるんじゃないかってね」

「ああ、それはそのまま営業につながる訳ですね。お客様の心の中もやはり見えませんからね」

「そのとおり! 若い人たちにこういう話をするとお説教臭くなるけど、研修の中でうまく話して欲しいな」

「おお、それはなかなかハードルの高いお話ですが、チャレンジしてみます」

「よろしくお願いしますね。さて、今月はいつ行こうか?」

「ちょうど今月は、G競艇場でG1レースがナイターで開催されます。24日が優勝戦ですから、その日にどうですか?」

「おお、楽しみだ! そちらもよろしくね!」


ひとりごと
 
私たちは日頃、どうしても目に映るものにしか意識を働かせません。

それが、昨日のような他人との比較などの悩みを生むのです。

むしろ一斎先生が言われるように、見えないものを見る意識を持つことはとても重要なのではないでしょうか?

他人の愛も思いやりも、ご縁もご恩もすべては目に見えないけれど、とても大切なものですから。


【原文】
鱗介の族は、水を以て虚と為す。水の実たるを知らず。〔『言志後録』第53章〕

【意訳】
魚介類は、水の中で棲息していながら水の存在に気づいていない。水がなければ生きていけないということを理解していないのだ

【所感】
今目の前にある物事を当たり前だと思ってはいけない。常に報恩感謝の念を忘れないことだ。


illustrain09-sotugyousiki5