今日の神坂課長は、佐藤部長、ちさとママと3人で、「季節の料理 ちさと」の近くにあるお寺の護摩行に参加しているようです。
「ここの御本尊は不動明王様なんだ。不動明王というのは、炎の世界に住んでいて、人間の煩悩や欲望を焼き尽くしてくれると言われているんだよ」
「それで、こうやって護摩を焚くのですね?」
「私は煩悩の塊みたいな人間だから、毎年こうして煩悩を焼き尽くしてもらって一年をスタートさせるのよ」
「えー、ママにも煩悩なんてあるの?」
「誰だってあるわよ。ねぇ、佐藤さん?」
「そうだね。私も煩悩と欲望と日々戦っているよ。でも、こうして供物が焼き尽くされていくと、自分の心も洗われるような気がするよね」
「なんか、ちょっと安心しました(笑)」
3人はお寺を出たあと、行列のできているお蕎麦屋さんに入ったようです。
「なんか体中から煤のにおいがしますね」
「煩悩が焼き尽くされた証拠よ」
3人は、お店で一番人気の特製鴨南蛮を注文したようです。
「おー、これは旨いですね。あっという間に食べ終わってしまいました」
「相変わらず食べるのが早いねぇ、神坂君は」
「営業マンですから。しかし、先ほどの炎もあれだけ燃え盛っていても、直ぐに消えてしまうし、こうやって美味しいものも食べれば、あっという間になくなってしまう。形あるものはすべて消えてなくなるんですね」
「だからこそ、形あるうちに感謝しないとね」
「そうよ、私が作ったお料理もちゃんと感謝してから食べてね!」
「無くなって初めて気づくのが人間ということかぁ。そうやって考えると感謝すべきなのに感謝していないものがたくさんありますね」
「私はいつもお客様に感謝することを忘れないようにしているの。そっとお料理に私の感謝の気持ちを込めているのよ」
「なるほどね。俺の場合は、お客様は当然だけど、やっぱり上司や同僚、同じ課のメンバーへの感謝を忘れてはいけないなぁ」
「ところで神坂君、会社の神棚にはちゃんとお祈りしているかい?」
「えっ、神棚なんてありましたっけ?」
「おいおい、まずはそこからだな!」
ひとりごと
我々は、今自分が手にしている物や、家族や仲間、そして自分の命もすべて有限であることを忘れて過ごしているのではないでしょうか?
ないものねだりをする前に、今あるものに感謝することから始めましょう!
【原文】
火は滅し、水は涸れ、人は死す。皆迹(せき)なり。〔『言志後録』第54章〕
【意訳】
火はいつかは消え、水もいつかは涸れ、人もいつかは死ぬ。これらはすべて大自然の摂理の痕跡である。
【ビジネス的解釈】
すべて形のあるものは、いつかは消えてなくなる。この大自然の摂理を忘れてはならない。