営業1課の新美課長が佐藤部長の部屋に相談に来たようです。

「部長、課長になってもうすぐ1年が経ちますが、私のマネジメント力は悲しいほど伸びていません」

「そんなことはないだろう。営業1課は、よくまとまっているように見えるよ」

「そうでしょうか。メンバーひとりひとりを活かせていないというか、よい点を伸ばせていない気がします」

「今は課題が見えていればそれで良いのではないかなぁ?」

「一度は退職を考えた廣田君などは、どう接して良いのかすごく迷います」

「すべてが勉強だよ。新美君、お子さんはまだ小さかったよね?」

「はい、長女が今4歳です」

「そうか、可愛いだろう。子供は純真無垢でいいよね。何も知らない真っ白な状態から、ひとつずつ善いこと、良くないことを学んでいくよね

「はい。日々成長していくのがわかって楽しいです」

「新美君もマネジャーとしては、娘さんと同じ状態なんだよ。ひとつずつ学び、気づき、それを実践してくれれば良いんだ」

「はぁ」

「新美君が娘さんをみて、日々成長しているのを喜んでいるように、私も新美君をみて、日々
の成長を悦んでいるんだからね」

「ありがとうございます」

マネジメントの基本は、メンバーに肚落ちさせることだ。彼らが悩んでいるときに、ふっと心が晴れるようなアドバイスやヒントを与えることを意識するといいね」

「はい。しかし、それはなかなか難しいですよね」

「もちろん、そのために新美君はどんどん勉強しないとね。ただ、神坂君にこの話をしたときは、彼はこう言っていた。『なるほど、わかりました。では、彼らが毎日ワクワクしながら会社に来れるような雰囲気を作ります』ってね」


ひとりごと
 
小生が初めて営業部門に配属されたのは、入社4年目でした。

自ら希望して異動した職場であり、期待と不安に包まれながら、日々とにかく仕事に邁進しました。

忙しくて深夜に帰宅することがあっても、それが楽しくて仕方がありませんでした。

時代柄、深夜残業は別としても、常に初心を忘れず、ワクワクして仕事ができる環境を作ることが出来れば、若手社員さんの離職問題は解決するのではないでしょうか?


原文】
人は当に自ら母胎中に在る我れの心意果たして如何を思察すべし。又当に自ら出胎後の我れの心意果たして如何を思察すべし。人皆並(ならび)に全く忘れて記せざるなり。然れども我が体既に具われば、必ず心意有り。則ち今試みに思察するに、胎胞中の心意、必ず是れ渾然として純気専一に、善も無く悪も無く、只だ一点の霊光有るのみ。方(まさ)に生ずるの後、霊光の発竅(はっきょう)、先ず好悪を知る。好悪は即ち是非なり。即ち愛を知り敬を知るの由りて出づる所なり。思察して此に到らば、以て我が性の天たり、我が体の地たるを悟る可し。〔『言志後録』第71章〕

【意訳】
人は自ら母胎の中にいた頃の自分の心がどうであったかを思い出してみるべきである。また、母胎から生まれ出た頃の自分の心はどうであったかも思い出してみるべきである。皆完全に忘れていて記憶してはいない。しかし、自分の体がすでに出来上がっていれば、必ず心も備わっているはずである。いま試みに考えてみると、母胎内にあった心は、一つの純粋な気であって、善も無く悪も無く、ただ一つの霊妙な光があるだけである。この世の中に生まれ出ると、この心の霊光が現われて、まず最初に物の善悪を理解する。善悪とは、すなわち是非のことである。この是非こそが愛と敬を知る根源である。思いがここに至ると、私の本性は天から授かったものであり、体は地から得たものであることを悟ることができる

【ビジネス的解釈】
道に迷ったら童心に帰るとよい。童子は純真無垢な心で生まれ、ひとつずつ善悪を知り、愛することや敬うことを学んでいく。仕事に迷ったら初心に帰るとよい。何も知らなかった新人時代を経て、ひとつずつ学び、気づき、実践してきたはずだ。それが今では、かえって善悪より損得を優先してしまいがちになっている自分に気づくはずだ。


taiji