今日の神坂課長は、佐藤部長と同行でVIPドクターの定期訪問をしているようです。

「それにしてもO社さんて組織をいじるのが好きな会社ですよね?」

「トップが替わると自分の色を出したいと思うんだろうね」

「開業医専任部隊を作っては解隊したり、処置具専任者もそうでしたね」

「臨機応変といえば聞こえはいいけど、ちょっといじり過ぎかもね」

「いま、『老子』を読んでいるのですが、その中に、大国を治むるは小鮮を烹るが如しとありました」

「おお、よく勉強しているね。大きな国を運営するときは、小魚を煮るときのようにあまりいじくり回さない方が良い、という例えだね」

「はい。私もいろいろと戦術を立てるときがありますので、気をつけようと思います」

「『仏作って魂入れず』という言葉もあるよね。問題は頻繁にいじることじゃなくて、せっかく作った仕組みや箱に魂を注入できるかどうかだろうな」

「ああ、なるほど。戦術の良し悪しも大事ではあるけど、その戦術に込めた自分の想いをしっかりと伝えて、メンバー全員の肚に落とすことがより重要ということですね」

「そう思うよ。一斎先生は天地のはたらきをこんな風に捉えているんだ。地のはたらきは造化で、万物を生み出すこと。そして天のはたらきは、その造化物に気を込めること。この気が注入されなければ万物は機能しないのだと言っているよ」

「戦術に魂を込めてこそ、天地と一体になれるということですね。さて、到着しました。今日はちょっとアウェイなお客様が中心ですので、よろしくお願いします」


ひとりごと
 
「画竜点睛を欠く」という言葉もあります。

せっかく上手に書き上げた竜も、最後に眼を点じなければ台無しになるという例えです。

企画立案部門やマーケティング部門にいると、いつの間にか仕組みを作ることが目的となってしまう傾向があります。

せっかく作り上げた素晴らしい仕組みに、最も大事な魂を注ぐことを忘れてはいけません。


原文】
天は気を始めて地は物を造す。天は変じて地は化するなり。是(ここ)に知る、造化の二字は地の功を語るを。独り人の地たるのみならずして、而も万物皆地なり。然れども天の気入りて之を主宰するに非ざれば、則ち物活(いか)す能わず、人も霊なる能わず。主宰の霊は即ち性なり。〔『言志後録』第78章〕

【意訳】
天は気を生じ地は物を創造する。天は気を変化させ地は万物を化育する。これによって、造化の二字は地の功用を語る言葉であるということを知る。ただ人間だけが地に属しているだけでなく、万物すべてが地に属している。しかし、天の気が万物の中に入って指揮をとることがなければ、物を活かすこともできず、人も霊妙な働きはできない。このような霊妙な働きをするものが、人間の本性なのである

【ビジネス的解釈】
いくら素晴らしい仕組みを作り上げても、その仕組みに対する熱い想いが込められていなければ、決して機能することはない。


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