今日の神坂課長は、社長室に呼ばれたようです。

「平社長、遅くなりました」

「おお、神坂。すまんな、そこに座ってくれ」

「何の御用件でしょうか?」

二人は応接セットに対面で腰掛けたようです。

「ウチはディーラーだ。だから当然のことだが、営業部門の働きがそのまま会社の業績に直結する」

「はい」

「しかし、ここに来てやや売上の面で伸び悩んでいるよな。そこで、お前に俺が意識していることを伝えておきたい。しっかりメモをしてくれないか」

「はい、承知しました」

「俺が経営を行う上で特に意識していることが5つある。一つ目は、会社にとって重要な事項を明確にすることだ。すなわち劣後順位をつけてやらなくてよいことをまず省き、その上で優先順位を決定することだ。二つ目は、ビジネスのタイミングをよく見定めること。冬に種を蒔いても植物は育たない。種を蒔くのに最適な時期は春だ。ビジネスの種を蒔くのもまったく同じことだ」

「はい。それは私にも理解できます」

「うん。三つ目は、社員に対しては、寛大かつ手厚い処遇をすること。いつも俺が言い続けている『真の家族主義だ。そして四つ目は社員の心を安定させ、ひとつにまとめることだ。精神的に不安定な状態でよい仕事はできないからな」

「はい」

「最後は、短気を起さないこと。忍耐を大切にすることだ。この5点をお前も意識して欲しい。営業部をまとめていく上で、今やお前の存在は当社にとっては掛け替えのない存在だからな」

「ありがとうございます。ただ、社長。ひとつ教えてください。なぜこの話を私にされるのですか?」

「佐藤に話すべきだと言いたいのか? あいつはもう、今言ったようなことは理解しているはずだ。それに、最近お前の顔を見ていなかったからな。直接、話をしたかったんだよ」

「そうですか・・・」

「営業部を頼むぞ!」


ひとりごと
 
本章は、政治を執り行う上で、何を考え、何をすべきかを具体的に教えてくれます。

それはそのままマネジメントにも当てはまるでしょう。

小生なりの理解を下記の「ビジネス的解釈」に記載しましたので、ご一読頂ければ幸いです。


原文】
政を為すに、須らく知るべき者五件有り。曰く軽重、曰く時勢、曰く寛厚、曰く鎮定、曰く寧耐、是れなり。賢を挙げ、佞を遠ざけ、農を勧め、税を薄くし、奢を禁じ、倹を尚(たっと)び、老を養い、幼を慈む等の数件の如きは、人皆之を知る。〔『言志後録』第79章〕

【意訳】
政治を執り行なうにあたってよく知っておくべき事項が五つある。すなわち、何を重んじ何を軽くみるかを誤らないこと、時の趨勢を把握すること、人民に対し寛大で手厚く処遇すること、人心を鎮め安定させること、感情的にならず平静でいることである。賢人を採用し、口だけの者を遠ざけ、農業を盛んにし、租税を低く抑え、贅沢を禁じ、倹約を奨励し、老人を大切に養い、幼児を慈しむといったこともまたよく知られたことである

【ビジネス的解釈】
ビジネスを行う上で、組織の長は以下の五項目を大切にすべきである。
一、物事の軽重を正しく判断すること。
二、好機を逃さないこと。
三、部下には寛大であること。
四、社員の心を穏やかにすること。
五、感情的にならないこと。
そのためには、
① 能力の高い人を採用すること。
② 口先だけの人を信用しないこと。
③ コアビジネスに特化すること。
④ 社員に負荷をかけ過ぎないこと。
⑤ 過度な接待をさせないこと。
⑥ 経費節減を意識させること。
⑦ ベテラン社員を重用すること。
⑧ 若手社員を育成すること。
を特に意識すべきである。


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