今日の神坂課長は、仕事帰りに入院中の佐藤部長のお見舞いに来たようです。

「部長、差し入れをお持ちしました。その後はいかがですか?」

「ああ、神坂君。いつもありがとう。身体のほうはすっかり回復したよ。早く仕事がしたくてうずうずしているくらいだ」

「それは安心しました。しかし、せっかくの機会ですから、しっかり身体を休めてくださいね」

「そうだね。入院してみてわかったんだけど、実は身体だけでなくて、心のメンテナンスも不足していたことに気がついたよ」

「どういうことですか?」

「考えてみると、自分の心とじっくり向き合う時間を作れていなかったな、と思ってね。お酒を飲んで家に帰って、夜更かしをして読書をするような生活は、実は慎独にはなっていないよね。誰も見ていなくても、規則正しい生活をしなければいけないな、と反省したよ」

「その言葉、そっくりそのまま私の心にも突き刺さります」

「神坂君も養生して、自分の心と会話をする時間を持っておくといいよ。そうすれば、私みたいに病気になることもないはずだからね」

「そうですね。『健全な精神は健全な肉体に宿る』と言いますが、もしかしたら『不健全な精神が不健全な肉体をつくる』のかも知れませんね?」

「たしかにね! でもねぇ」

「どうしました?」

「やっぱり、そろそろ飲みたいなぁ」

「わかりました! この後、部長の分までこの私がしっかりと飲んでおきますから!」

「次に入院するのは君だな!」


ひとりごと

人間にとって、身体同様、心のメンテナンスも重要です。

心のメンテナンスは、独りの時間に行うべきものでしょう。

すくなくとも一日の終わりには、自分の行動や言動が世の中のお役に立っているかを振り返る必要がありそうです。


【原文】
人は皆身の安否を問うを知りて、心の安否を問うを知らず。宜しく自ら問うべし。能く闇室を欺かざるや否や、能く衾影(きんえい)に愧じざるや否や。能く安穏快楽を得るや否やと。時時是(かく)の如くすれば、心便ち放(ほしいまま)ならず。〔『言志後録』第98章〕

【意訳】
人はみな身体が健全かどうかについては心配をするが、心が安からであるかどうかを心配しないものである。次のように自らに問いかけてみるがよい。「人に知られない暗い場所にいても自分を正しく持しているかどうか、独りのとき自らの夜具や影に恥じることはないか、そして自分の心が安らかで愉快であるかどうか」と。常にこの問いかけを発し続ければ、心が放たれ失われてしまうようなことはないであろう

【ビジネス的解釈】
ビジネスを行う上では、身体のケアだけでなく、心のケアが重要である。独りを慎み、心を安らかに保つことを常に意識し、工夫をすべきである。


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