今日の神坂課長は、相原会長と競艇場にやって来たようです。

「今年度最初のナイター競艇ですね。幸先のよいスタートを切りましょう」

「神坂君の愛するジャイアンツのようにね!」

「そうですね。しかし、監督が代わるだけで、チームってあんなに変わるものですかね?」

「それだけリーダーの存在は大きいということだろうね」

「今回、佐藤部長の代理を務めてみて、決断することの怖さを学びました」

「うん。リーダーの仕事は決断することだと言っても過言ではないからね。大胆さと慎重さのバランスが大事になるよね」

「はい、それは痛感しましたね。慎重になり過ぎてもいけないし、無謀なチャレンジをさせるのもよくない。難しいです・・・」

「慎重さが過ぎれば意気地なしになるし、勇気が過ぎれば混乱を招く。そのバランスを保つには礼が必要だ」

「礼ですか?」

「うん。礼というのは調和を保つことなんだ。自分が善いと思ったことでも、相手のことを考えずに一方的にすすめるとかえって悪徳になってしまうこともある」

「なるほど」

「メンバーの個性をしっかり把握して、さらにお客様のことも十分に考慮した上で、最終的な決断をするのがリーダーの役目なんだよ、神坂君」

「メンバーの性格に合ったアドバイス、お客様の状況を配慮したアドバイスには礼が不可欠ということですか?」

「そういうことだね」

「礼って何か型とか作法のようなものだと思っていました。お辞儀は何度身体を傾ける、みたいな」

「もちろん型を学ぶことは重要だよ。型のない人は形無しと呼ばれるからね。でも、型にこだわるのも宜しくない。大事なのは相手との調和を意識することなんだ」

「なるほど。これから礼を意識してみます。さて、会長。そろそろ11レースですが、1号艇の阿波勝哉という選手は、常に大外6コースからレースをする型をもった選手なんです。いまどきの競艇では本当に珍しい選手ですよ」

「へぇ、せっかく1枠に入っても大外に回るの? すごいこだわりだね」

「はい。ただやっぱり型にこだわり過ぎているせいか、最近は成績は良くないですね」

「じゃあ、今日は型にこだわった阿波選手から買ってみよう!」


ひとりごと

礼とは宜しきに適うことだ、と中国古典の大家、小林一郎先生は言っています。

この礼を欠くと、せっかくの善徳も悪徳になってしまうのだそうです。

つねに相手のことを想う心から礼は生まれます。

お互いの調和を保つための礼について、今一度意識をしてみませんか?


【原文】
静坐の功は、気を定め神を凝らし、以て『小学』の一段の工夫を補うに在り。要は須らく気の容は粛、口の容は止、頭の容は直、手の容は恭にして、神を背に棲ましめ、儼然(げんぜん)として敬を持し、就(すなわ)ち自ら胸中多少の雑念・客慮・貨色・名利等の病根の伏蔵するをそう出して、以て之を掃蕩すべし。然らずして徒爾(とじ)に兀坐瞑目(ごつざめいもく)して、頑空(がんくう)を養成せば、気を定め神を凝らすに似たりと雖も、抑(そもそも)竟(つい)に何の益あらん。〔『言志後録』第136章〕

【意訳】
静坐の工夫は、気持を落ちつかせ精神を凝集して、『小学』にある修身・礼儀の道を行う上での一段の工夫を補うことにある。その要点は、呼吸を整え、口を閉じ、頭を真直ぐにして、手をきちんと揃えて、精神を背中に集中させ、厳かな態度で敬虔の念をもって、胸中にある雑念や妄想、あるいは金銭のことや名利といった迷いの根を見つけ出し、それを除去すべきである。そうせずして、いたずらに坐って目を閉じ、囚われの心を養成するようでは、気持を落ちつけ、精神を凝集しているようで、実際にはなんの効果も得ることができないであろう

【ビジネス的解釈】
何ごとも型がなければ形無しであり、形式は重要である。しかし、形式にとらわれ過ぎて中身が伴わないのもよろしくない。


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