今日の神坂課長は、営業部の新年度売上計画に関する会議に参加しているようです。

参加者は佐藤部長と3人の課長です。

「神坂君を中心に、皆さんが頑張って頂いたお陰で、前期は計画を達成し、対前年増収増益を達成できました。あらためて感謝を申し上げます。皆さん、ありがとう」

全員が拍手で健闘を称えあっています。

「最後の最後で私が倒れてしまったことは、本当に申し訳ないと反省しています。これからは体調管理にもっと気を遣っていきます」

「それについては、他人事ではないです。わたしも気をつけます」
神坂課長がフォローを入れています。

「さて、今年度の計画ですが、経営側から10%アップが提示されました。医療機器に関する市況が厳しくなる中で、相当に高いハードルです」

「マジかよ、10%はムリだろう」
大累課長がつぶやきます。

「大累、最初から諦めるな」

「じゃあ、神坂さんは10%をやり切れると思っているんですか?」

「今の時点ではそんなことは思っていないよ。でも、先月のみんなの頑張りをこの目で見たからには、我々マネジャーが強い想いをもって達成に向けてマネジメントをすれば不可能ではないと信じたい」

「神坂君の言うとおりだ。もちろん大変厳しい数字だが、我々が生き残り、社員さんを幸せにするためには、この数字をやり切るしかないんだ」

「そして、こういうときこそ、お客様の課題、特にお客様が気づいていない課題を解決するという意識が大切ですね?」

「さすがは新美だ。俺たちのお客様は医療機関だ。しかし、その先にいる患者さんの健康を考えることを忘れてはいけないよな」

「そうですね。特に心配なのは病気の質が変わったことですよね?」

「大累、どういうこと?」

「以前のように、ウィルスや感染による病気で亡くなる人は減る一方です。そのかわり生活習慣病に基因する疾患で命を落とす人は急増しています」

「なるほど。生活習慣病は対症療法で治療するより、予防もしくは未病の考え方が重要になってくる。そうなると治療をするための医療機器というのは出番が減ってくるリスクがあるよな」

「そこは我々の将来を考える上で、大変重要な観点であり、課題だね。しかし、その考え方を
今期の数字をクリアする上でも活用して欲しい」

「部長、どういうことですか?」
大累課長が質問したようです。

「つまり、売上未達という課題に対して、訪問数を増やすことやアポイントの数を増やすということは大事なことだが、それは対症療法だよね。なぜお客様が医療機器を買わないのかについて、もっと本質の部分を見つけ出す必要がある。真の課題を見つけて、そこに手を打たないとこの数字をクリアすることは極めて難しいだろう

「なるほど。課題に対する対症療法ではなく、本質を見抜いて対策を講じるべきだということか?

「その点を意識したマネジメントよろしくお願いしたい」

「はい、わかりました!」


ひとりごと

ビジネスにおいて、課題にぶつかったときに、その課題の本質を見極めることなく、今までどおりの仕事の仕方で対処しようとしてしまいがちです。

しかし、売上未達成という課題の本質は、時代とともに変化しています。

常識に囚われすぎることなく、非常識の中にこそ本質があることを忘れてはいけません。


【原文】
小薬は是れ草根木皮、大薬は是れ飲食衣服、薬原は是れ心を治め身を修むるなり。〔『言志後録』第141章〕

【意訳】
草の根や木の皮などから作られる薬は低次元の薬である。飲食や衣服といった日常の摂生こそが本当の薬である。薬の根本は、己の心を治め、身を修めることなのだ

【ビジネス的解釈】
病気になってから薬で治すのは対症療法であり、本質的な解決策ではない。飲食や体調管理に務め、予防に努めることが真の問題解決なのだ。


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