営業2課の石崎君が中心となり、特販課の雑賀さんがサポートをして、1年間取り組んできた大口プロジェクトが競合他社に敗戦したようです。

石崎君は男泣きをしています。

石崎君の周囲には諸先輩が集まっていますが、誰も声をかけられない状態のようです。

よく見ると、特販課のデスクでも雑賀さんが突っ伏しています。

「神坂さん、雑賀は俺がなんとかしますから、石崎を慰めてやってくださいよ」

「大累、さすがに俺もなんて言えばいいのかわからないよ。あいつの気持ちを思うと、俺も泣けてくる」

「一緒に泣いてどうするんですか。自分の部下じゃないですか!」

そのとき、佐藤部長が部屋から出てきました。

「みんな、ちょっといいかな?」

佐藤部長を営業部のメンバーが取り囲みました。

石崎君と雑賀さんも目を腫らしながら輪に加わります。

「皆さんもすでに承知していると思うが、当社としては初めての院内システム構築のプロジェクトへの参戦は残念ながら敗戦という形になった」

全員が神妙な面持ちです。

「もう結果は出てしまった。今から取り返すことはできない。しかし、このプロジェクトを2年目の石崎君がしっかりととりまとめ、雑賀君は先輩でありながらよくサポートしてくれた。また、みんなも臨機応変に役割を担ってくれたよね」

「たしかに、石崎と雑賀はよくやったと思う」
神坂課長もつけ加えました。

「だから、前を向こう。生きていると良いことばかりじゃない、辛いこともたくさん経験する。それでも心を奮い立たせ、反省すべき点は反省しつつ、自分に鞭を打ってでも前へ進むしかない。生きている間はずっとそんなことの繰り返しなのかもしれないよ」

「石崎」

神坂課長が石崎君の肩に手を掛けました。

そのとき、

「課長!」

石崎君は神坂課長に抱きついて号泣し始めました。

大累課長もそっと雑賀さんを抱きしめています。

「辛いなぁ、こんなに辛いことは滅多にないな。俺は自分が失敗したときより、今の方が何倍も辛い。でも、石崎、雑賀。一緒に乗り越えよう。この結果を受け入れて、何が足りなかったのかを一緒に考えようぜ」
神坂課長の目にも光るものがあります。

「よし、今日は急遽だが、営業部の慰労会第二弾をやろう。参加できる人は、このまま一緒に『季節の料理 ちさと』へ行こうじゃないか?」


ひとりごと

小生は、自分は自分の応援団長であり、どんな時でも応援し続けようと思っています。

生きていくのは楽なことではありません。

しかし、常に自分を奮い立たせ、警め、反省し、そして鼓舞していくしかありません。

皆さんは、ちゃんと自分を応援できていますか?


【原文】
時時に提撕(ていぜい)し、時時に警覚し、時時に反省し、時時に鞭策(べんさく)す。〔『言志後録』第142章〕

【意訳】
常に精神を奮い起こし、常に 情慾に流れないように引き締め、常に 反省し自分に矢印を向け、常に 勉励する

【ビジネス的解釈】
常に鼓舞と反省を繰り返しながら、前を向いて進む以外に道はない。


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