今日の神坂課長は、元営業1課課長で昨年定年退職した西郷さんと食事をしているようです。

「サイさん、中国の歴史をみていると、多くのケースで暴君が生れて、それを止める人材がいないときに国が亡んでいますよね」

「そうだね。夏王朝の桀王、殷王朝の紂王は特に有名だよね。酒池肉林なんて言葉があるようにね」

「酒で池をつくり、肉を上から吊るして林のようにした。滅茶苦茶ですよね」

「しかし、そんな歴史から学ぶことは多いよ。企業経営も同じようなところはあるでしょう」

「はい。平社長は川井さん、佐藤さん、西村さんという素晴らしいブレインがいるから、ウチは安泰ですよ」

「今はそうだね。しかし、ジュニアがそのうちに会社を継ぐことになれば、そのときは神坂君たちがブレインを務めないといけないんじゃないか?」

「そうなんです。最近そういう話がありましてね。私なんかに務まるのか心配になります」

「『論語』の3徳は知・仁・勇だという話は前にもしたよね。ちょうど今の御社は、平社長の下に、仁者の佐藤さん、智者の川井さん、勇者の西村さんと人材が揃っているよね。そして、その下の課長にも、仁者の新美君、智者の鈴木君、勇者の神坂君と大累君がしっかり揃っているから、私はそんなに心配していないけどね」

「そうなると、大累と私は勇者の座を争うことになるのか?」

「別に争うことはないでしょう。勇者は一人でなければいけないということはないんだから」

「ああ、そうですね。でも多数決のときには危険じゃないですか?」

「そうだね。私はそもそも重要な案件を多数決で決めることは良いことだとは思わない。本当に重要な案件は全会一致だよ」

「そういえば、国連の決議なんかは全会一致が基本ですね」

「うん。御社が長く繁栄していくためには、更に次の人材を育成する必要もあるんじゃないかな?」

「我々の下の世代か。たしかにそうですね」

「とにかく企業の最大の財産は人だよ。『企業は人なり』というからね」

「本当にそうだよなぁ。サイさん、やはり歴史や古典を勉強することは、企業人にとってもとても大事だと思います。これからもご指導よろしくお願いします」

「はい。少しでも愛する古巣のお役に立てるなら光栄ですから!」


ひとりごと

『企業は人なり』とは、松下幸之助さんの有名な言葉です。

言葉では「人財」などと言いながら、その実は歯車のように考えている企業トップもいるようです。

優秀な人材を他所から買うことはできます。

世界的なIT企業などでは、それが一般的なようです。

しかし、真に会社を担う人材となると、育成するしかないのではないでしょうか?

もう一度、松下幸之助さんの言葉を心に刻まねばなりません。


【原文】
唐代の三患は、外寇と為し、藩鎮と為し、宦官と為す。人主も知らざるに非ざれども、然も終に此を以て斃る。宰輔(さいほ)の其の人に非ざりしを以てなり。鑑む可きの至なり。〔『言志後録』第167章〕

【意訳】
中国の唐王朝の三つの患いは、外国の侵攻、節度使、宦官である。君主もこれを知らなかったわけではないが、結局はこれらが原因となって滅亡してしまった。宰相に人物を得ることができなかったことがその要因といえよう。悪しきお手本としてよく照らし観るべきである

【ビジネス的解釈】
国が亡ぶときの主要因は、ブレインとなるべき人材を得ることができないことにある。企業においても同様に、有能なリーダーを得ることができるかどうかが企業存続の鍵となる。

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