神坂課長のデスクに入社2年目の梅田君が駆け込んできました。

「課長、大変です!」

「なんだ、なんだ、やぶからスティックに!」

「・・・」

「ルー大柴のギャグだよ、知らないのか?」

「そんなくだらないことを言っている場合じゃないですよ!」

「失礼だな、お前。で、何があったんだよ!」

「会社のすぐ近くの道路で石崎さんがヤクザに絡まれているんです」

「なんだと!」

「石崎さん、よりによってヤクザ屋さんのベンツのオカマを掘りまして・・・」

「あの馬鹿! よし、どこだ。すぐに行こう!」

2人は程なく現場に到着しました。
すでに黒山の人だかりです。

「参ったな、これは。どんなヤクザ屋さんとトラブったんだ、石崎は・・・。あれ? 太田か? おい、太田じゃないか?」

「おー、神坂か? お前も野次馬か?」

「違うよ。その少年は俺の部下だ」

「なんだ、お前。神坂のとこの若い衆か?」

「太田、俺は堅気だぞ。やめてくれ、その言い方は」

「ははは、たしかにそうだ。仕方ねぇな、神坂の若い衆なら勘弁してやるぜ。神坂、ちゃんと車の修理代はいただくぞ」

「ベンツだろ? こっちの方が損傷は大きいんじゃないか?」

「そりゃそうだが、まあ無傷ってことはないからな」

結局、その場は穏便に収まり、神坂課長と石崎君と梅田君は帰社しました。

「神坂課長、あのヤクザとどんな関係があるのですか?」

「ああ、太田は俺の高校時代のクラスメートだよ。その頃から滅茶苦茶ワルだったからな。ヤクザになったとは聞いてたけど、結構な迫力があったな」

「もう俺の人生は終わったと思いました」

「だけどさ、石崎。今回は相手が俺の知り合いだったからいいけどよ。ヤクザに突っ込むのだけはやめておけよ」

「別に突っ込みたくて突っ込んだわけではないですよ・・・」

「王道のマネジメントというのは、日々が平凡に過ぎ去るものだと一斎先生は言ってるんだ。俺の周りは、こういう出来事が後を絶たないよなぁ。それもこれも俺の不徳の致すところか?」

「ヤクザに知り合いがいるって、神坂君、大丈夫?」
佐藤部長が部屋から出てきて心配顔です。

「部長、人聞きの悪いことを言わないでくださいよ。高校時代のクラスメートなだけで、べつにヤクザと関係があるわけじゃないですよ!」

「たしかに今回は、課長がヤクザと友達で助かりました」

「石崎! 別に友達じゃないっつうの!!」

「はぁ、良かったんだか、悪かったんだか・・・」
佐藤部長は頭を抱えています。


ひとりごと

王道政治は理想であり、覇道は現実であるとも言えるでしょうか?

しかし、トップに立つ人は、徳を高め、徳で治める政治やマネジメントを理想としたいところです。

『キングダム』というアニメが大ヒットしているようです。

たしか主人公は秦の始皇帝ですよね?

小生はマンガを読まないので詳しくないのですが、そのマンガのヒットによって覇道が理想になるようなことはないのか心配です。


【原文】
王政は只だ是れ平穏のみ。平天下の平の字味わう可し。〔『言志後録』第171章〕

【意訳】
徳をもって治める王道政治はただ平穏であることに努めるのみである。天下を平らかにするという「平」という字をよく味わうべきである

【ビジネス的解釈】
マネジメントは、リーダーの徳を主体として治め、平穏であることが好ましい。頻繁に大きな出来事が起こるような企業や組織は安泰とはいえない。


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